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ファビオ・バルバッリーニシェフ

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今日はヴァッレ・ダオスタのリストランテ、ラ・カッソーレのシェフの話。
ヴァッレ・ダオスタの高級ホテル・モンブラン・ヴィラージュ内のレストランで、2011年にミシュラン1つ星になりました。
店名は、La Cassoletteと書きます。
発音違っていたらごめんなさい。
ヴァッレ・ダオスタはフランス語も公用語だそうで、前回のお題のサルデーニャのカッソーラがスペイン系だということを考えると、まったく、イタリアはふところ広いですねー。
ところで、「総合解説」2012年6月号では、ファビオ・バルバッリーニ氏をこのレストランのシェフとして紹介しています。

彼の料理はとても独創的で、高級食材を使うツボを心得ている、という印象を受けました。
山小屋風レストランにはもったいないほどの洗練されたシェフだなと思ったら、実は彼は、アンティカ・オステリーア・デル・ポンテのエツィオ・サンティン氏の秘蔵っ子だったんですねー。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』にこの記事が出た2か月後には、アンテイカ・オステリーアの新シェフとしてサンティン氏の元へ移ってしまいました。

新旧のお二人。
新人は1974年生まれ。




アンティカ・オステリーア・デル・ポンテのシェフとして料理を紹介するバルバッリーニシェフ。
料理はファッソーネ牛のカルパッチョのラスパドゥーラがけ。
 ↓



「総合解説」に載せたリチェタは、ホワイトアスパラガスに椎茸とキヌアを組み合わせたり、そのキヌアもコライユで煮たり、かぶのカンディートをカンパリソーダで煮るなど、料理の色彩もなかなか面白いです。
発想が自由自在な人のようです。

今後の活躍が楽しみですね。

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リストランテ・ラ・カッソーレのファビオ・バルバッリーニシェフのリチェタは、「総合解説」2012年6月号に載っています。

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サン・ダニエーレの生ハム

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今日は生ハムの話。

メイド・イン・イタリーの食材の代表各の生ハムですが、有名なのはパルマの生ハムとサン・ダニエーレの生ハム。

とは言っても、サン・ダニエーレの生ハムは、知名度の割には日本でお目にかかる機会はそう多くはないですよね。
そもそも、パルマとサン・ダニエーレの生ハムはどこが違うのでしょうか。

上がパルマ、下がサン・ダニエーレ。
 ↓





足がついていれば、まだ、サン・ダニエーレだと分る。
 ↓


でもこうなるともう分らない。
これはパルマの生ハム。
 ↓




なにしろ、パルマとサン・ダニエーレでは、原料となる豚は、どちらもイタリア中~北部の10の州で飼育された月齢9か月以上で重さ160㎏の豚。
どちらも、海風と山風が出会い、湿気をもたらす川がある場所。

はっきり言ってそっくり。
ところが、そんな両者が、決定的に違う点が一つあるんです。
さー、なんでしょう?

熟成期間?
確かに違うけど、法律で定められているのは最低熟成期間で、違いは1、2か月の範囲です。

答えは、ずばり生産量。

パルマの生ハムの生産量はサン・ダニエーレの生ハムの3倍以上です。
そもそも、サン・ダニエーレの生ハムは、サン・ダニエーレ・ディ・フリウリというコムーネだけで造られています。
造り手は約30軒で、年間生産量は270万本。
一方、パルマの生ハムの管理組合に属する造り手は、パルマ県全域に約160軒。
年間生産量は900万本。

イタリアの食材の場合、日本で普及するかどうかは生産量がたっぷりあるかどうかにかなり左右されると思うので、この少なさじゃあ、日本まではなかなか入ってきませんねえ。

なので、サン・ダニエーレの生ハムは、機会があったら、必ず味見しといたほうがいい食材ですねー。

サン・ダニエーレの見分け方を教える動画。
 ↓


サン・ダニエーレはフリウリのウーディネ県の町。
生ハムの生産者が中心となった生ハム祭り。
 ↓

 

サン・ダニエーレはこんな町




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参考にした記事、“パルマの生ハム、ベスト10/ガンベロ・ロッソ”の日本語訳は「総合解説」2012年6月号に載っています。

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ベドーニ・エジディオのパルマの生ハム

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今日はパルマの生ハムの話。

恒例、ガンベロ・ロッソの食材ベスト10のコーナーで、パルマの生ハムナンバー1に選ばれたのは、
ベドーニ・エジディオという地元ではよく知られたメーカー。
webページはこちら

チブス・ヴィジットパルマの同社のブース。
 
壁には「ガンベロ・ロッソでナンバー1」のポスターが、どーんと貼られています。
記事が出たのは2年前ですが、いまだに威力を発揮しているようです。
 ↓


ナンバー1に選ばれたのは、彼らの24か月熟成の生ハムでした。
ちなみに、パルマの生ハムは、9kg以上のものは最低12か月熟成させる、と定められていますが、上限はないのでたいていがもっと長く熟成させます。

熟成させると、タンパク質分解の過程でチロシンというアミノ酸ができます。
パルミジャーノのような長期熟成チーズにもあることか知られていますが、なかなか優れもののアミノ酸のようです。
長期熟成させると旨みは増しますが、その分、新鮮さやしっとり感が失われます。
ところが、このメーカーの生ハムは、コクと柔らかさと艶を合わせ持って、フレッシュさと複雑なアロマが同居しているのだそうです。
こういう味を出せるのは、特殊な機械ではなく、代々受け継がれてきた職人技。
生ハム作りは、独自の気候条件や職人の経験と腕に左右されるんですね。
熟成期間が長くなるほど、職人技の要素も大きくなるでしょう。

1963年のパルマの生ハムのPV。
50年前でも今と何も変わらず、パルマの空気と職人の腕が生ハム作りの秘密だと語っています。
 ↓



生ハムは豚肉、塩、時間が作る職人技の結晶なんですね。



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"パルマの生ハム、ベスト10"の記事の日本語解説は、「総合解説」2012年6月号に載っています。

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ラッテ・ディ・スオチェーラ

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今発売中の「総合解説」の中で、私的に一番衝撃的だったリチェッタは、
「latte di suocera」です。
日本語に訳すと「姑のミルク」です。
ぶ、不気味すぎる。
手作りキュールのリチェッタの一つなんですが、こんな衝撃的な名前の飲み物なのに、記事には何の解説もなし。
ということは、イタリア人がよく知っている飲み物なんですね。

こちらのwiki先生によると、19世紀半ばにボルトロ・ザニンといういう人がヴィチェンツァ県のズリアーノというところで造った蒸留酒で、特徴は75度というアルコール度の高さ。
ぶどうの搾り滓と高山の野草をアルコールに浸して仕上げにオークの樽で寝かせています。
なぜか不気味におどろおどろしいラベルは、1895年の販売当初からのデザイン。
ディスティッレリーア・ザニンのwebページはこちら

飲み込んだ時の喉や胃袋の焼けるような感じが、姑さんのいやみそっくりだったからこう名付けたんだって。
ボルトロ・ザニンさん、どんな嫁姑問題抱えてたの?
 ↓



ラッテという名前でも、こはく色でカラメル風味、ドライフルーツやカカオの香りが感じられるお酒なんだそうです。
でも、こんなのストレートで飲むもんじゃない。

それにしても、こんな世界的に見ても異常にアルコール度の高いお酒の造り方を家庭料理の雑誌で紹介するって、どんだけ職人気質なんだイタリア人。
しかも、親切に家庭で作りやすいようにというアレンジまで加えてるから、度数の高いアルコールさえあれば、ほんとに簡単にできちゃうんですよ、これが。

しかも、紹介しているリチェッタは、なんと牛乳で作るリモンチェッロ風という、斜め上をいくアレンジ。

この記事では、さらに、バジリコで作るバジリチェッロなるお酒まで造り方を紹介してます。



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ラッテ・ディ・スオチェーラのリチェッタを含む“自家製スピリッツ”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年7月号に載っています。

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キャロブ

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今日はイタリア便りです。
では、segnalibroさん、お願いしまーす。


町内の八百屋さんの軒先も、すっかり秋の装いになりました。
 
carrube


栗にかぼちゃに・・・えっ、この豆みたいなの、なに?
初めて見ました!

carrube


八百屋のおじさんに尋ねたところ、昔はシチリアでよく食べられていたけれど、今はもう馬や牛しか食べないかも・・・。
Frutta dimenticata忘れられた果実の一つで、Carrubaというのだと教えてくれました。
これ、鞘を乾燥させたもので、鞘ごとかじるのだそうです。
味見用に数本いただいちゃいました。
種は固くて食べれないから出すように、とのこと。

carruba


ほんのり甘味があって、なんというか、敢えて言うと、干しイモを食べているみたい。
テレビを見ながら食べると、女子にはクセになりそうな味です。フフフ。
帰宅後、早速調べてみました。
カッルーバ。日本語ではイナゴ豆。
キャロブとも呼ばれていて、wiki先生によると種は均一性が高く、昔は重さの単位として使われていたそうで、宝石の質量を表す単位カラットの語源はこれなんだとか。
その話、聞いたことあるかもー!!
夏にシチリアに行った時、車窓に見える特徴的な植物は3種類あると聞きました。
うちわサボテンと、100年に1度しか花が咲かないと言われるリュウゼツ蘭(しかし、ボコボコ咲いていた)、そしてカラットの語源になったキャロブの木だと教えてもらったのですが、キャロブだけ分からなかったんです。
あー、これがキャロブなのね。
豆みたいだけれど、木なのかな?
キャロブは地中海沿岸原産の植物で、イタリアではトスカーナが分布の北限らしいのこと。 私の住む地域にはないので、ネットからお借りしたお写真がこちら。

carrubo


うーん、こんな大木の木陰で、本を読みながらお昼寝したら気持ちいいだろうなぁ。
キャロブは高さ7~10mの常緑樹。
ゆっくりと成長する木で、樹齢500年になるものもあるそうです。
丈夫なので、家具や工具類の持ち手、煙草のパイプなどに使われるのだとか。
キャロブのテーブルセットとか、

legno di carrubo

クルミとキャロブのライティングデスク。19Cのアンティーク。

noce e carrubo

Amazon.itでは、キャロブの木で作ったお箸と箸置きのセットが販売されていました。
シチリアのラグーザでは、現在でもキャロブの実を収穫しているそうですが、ラグザーノ cosacavaddu という伝統のチーズを作る際には、大桶と押し型は栗の木、撹拌する棒はオレンジの木、そしてキャロブの薪で温めたお湯を使うというのが古くからの方法なのだそうです。
こんなチーズです。おいしそう。

cosacavaddu

さて、この話を日本でヨガの先生をしている幼馴染に話したところ、ベジタリアンはチョコレートの代わりにキャロブのお菓子を食べてるよ、と教えてくれました。
キャロブの実のパウダーを使うと、動物性食品を含まないチョコレート風味のお菓子が作れるのだそうです。
なるほどー。
イタリアでのキャロブのレシピを調べてみると、パウダーをパスタやニョッキに練り込んだり、タルトやビスコッティに混ぜたりするものが多いようです。
また、実を粗く砕いて数日間水につけたものを漉して煮詰め、シロップにする、というものもありました。
お好みで、レモンやオレンジの皮を加えてもいいそうですが、昔は咳やのどの痛みに効くとのことで、このシロップを飲んだそうです。
さらには王道、アルコールに漬けるというのもありました。これは、サルデーニャ産。

liquore di carrube

サルデーニャのリキュールといえばミルトですが、これも同じく食後酒。
デザートと一緒に飲んでもよいし、ジェラートに添えてもよいとのこと。
チョコレート風味になるのかしら。
町内の八百屋さんのキャロブはプーリア産でした。
オリーブの木は法律で保護されて、勝手に伐採してはいけないことはよく知られていますが、プーリア州では、キャロブの木も保護の対象なのだそうです。
ちなみにキャロブの生産量は、スペインとイタリアで全体の50%を占めており、続いてモロッコ、ポルトガル、トルコ、ギリシャ・・・あれ、なんだかオリーブの生産国と重なりますね。
後日、改めてキャロブを買いに行くと、私の前に並んだ上品なシニョーラがごっそり買い占めていました。
なんだ、やっぱりイタリア人も食べるのだわー、と思ったら、レバノン出身のご婦人でした。
故郷を思い出す懐かしの食べ物で、レバノンでも鞘ごとかじるのだそうです。
キャロブはまさに地中海世界の味なんですね!!
私も気に入っちゃいました。


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テオ・ムッソのバラデン

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前々回のブログで紹介した手作りスピリットの記事では、テオ・ムッソという人物も紹介しています。

この人、イタリアのビッラ・アルティジャナーレ(クラフトビール)の一番有名な造り手なんだそうです。
テオ・ムッソ氏の別名は、パパ・デッラ・ビッラ・アルティジャナーレ。

一人の天才の出現によってイタリアの美食業界に革命が起こったかのような、手放しの褒め称えようです。
ビールはワインにできないことができる、ということを、彼のビールによってイタリア人は発見したようです。

彼のビール工房の名前はbaladinバラデン。
webページはこちら

ビール以外にも、ソフトドリンクからパネットーネまで、手広くやっています。
ワインとビールの融合も彼の取り組んでいるテーマの一つ。

下の写真はファッロとオルゾから造ってワイン用の樽で寝かせたバーレーワインという分類のビール、『ルーネ・リゼルヴァ・テオ・ムッソ2010』。
アンテイノーリ、リヴィオ・フェッルーガなど、イタリアの大手ワイナリーとの共同生産。
写真はノルウェーのオスロでの発表会の模様。
 ↓



自作のビールについて語るテオ・ムッソ氏




ルバーブやアマルフィのレモンなどから造ったソフトドリンク、“スプーマ・ネロ”、カラブリアとガルダ湖のチェードロから造ったチェドラータなど、とにかく自由奔放で繊細な発想が次から次へと湧き出ている人のようです。
バラディンのソフトドリンクのCM?
  ↓



最新作は、国産ホップを使ったイタリア初の100%イタリア産のビール、その名もナツィオナーレ。
このビールのテイスティング動画はこちら。 

何をやっても成功してしまうまさに時代の寵児。
でも、ビッラ・アルティジャナーレの造り手は彼だけではないようで、というかむしろ、彼の成功に触発されて、続々面白い造り手が表れているようです。
目が離せないですねー。



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“自家製スピリッツ”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年7月号に載っています。
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リグーリア料理

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今日はリグーリアの話。
下の2枚の写真は、リグーリアの世界遺産にも登録されている町、ポルトヴェーネレです。
リグーリアのリヴィエラと呼ばれる沿岸部は、現実のものとは思えないような美しい風景が続きます。






次の写真はジェノヴァを海から見た風景。
都市の背後に山が迫っています。




海と山にはさまれた細い土地がリグーリアです。
海には立派な港ができて、リグーリアは、海を向いて外の世界とつながってきました。
沿岸と内陸は、距離的には近いのに、コミュニケーション的には遠く隔たっています。

ジェノヴァの町と内陸を結ぶ鉄道、ジェノヴァ-カゼッラ鉄道
内陸にちょっと入っただけで都市部とはまったく違う顔。
 ↓



沿岸の大都市と内陸を結ぶ小さな鉄道です。




リグーリアの沿岸部を観光で訪れると、きれいだなあ、で終わってしまいますが、今月の「総合解説」には、

「リグーリア料理は、一般的なイタリアの地方料理とは違って、歴史ではなく、地形が作った料理だ」
という深~い一文があります。

リグーリアの地形は、平地が少ない。
畑も山の急斜面に作らなくてはならないのでこんな状態。
 ↓



こんな段々畑では、リグーリア中の需要をまかなうだけの収穫は、とうてい望めません。
そのため、リグーリア人は、あるものなら何でも工夫して使う、という技を発達させました。
天性の節約家で、ゼロから奇跡的なまでに美味しい料理を作り出すのがリグーリア人気質なんだそうですが、これは時には、ケチと呼ばれます。

さらにもう1つ、耕すだけでも大変そうな畑ですが、地中海の恵みを受けた温暖な気候のおかげか、オリーブをはじめとする作物は、上質なものができます。
なので、沿岸と内陸が出会った時、素晴らしい化学反応が起きるのです。
ついでに言えば、西がフランス、北がピエモンテで、洗練された食文化の影響もたっぷり受けました。

そんなドケチで多面性を持つリグーリア人が作った傑作料理の一つが、フィオーリ・ディ・ズッカのリピエーニです。




これが、こうなります。


フィオーリ・ディ・ズッカ料理は色々ありますが、花を、一般的な食材を使ってボリュームのある一品料理に変えてしまうという観点で見ると、なるほど、よく工夫されています。

きれいなところだけ見ていても、本質は分らない。

チンクエテッレ。
きれいだけど、暮らすのは大変かも。




リヴィエラ・ポネンテ(西海岸)の内陸部を紹介する動画→こちら

そういえば、リグーリア料理の話をするとき、エントロテッラ(内陸部)というワードは欠かせません。


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“フィオーリ・ディ・ズッカ、リグーリア風”のリチェッタと記事の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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マテーラ

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今月の「総合解説」のグルメガイドで紹介している街は2つ。
その一つが、バジリカータ州のマテーラ。



その洞窟住居は世界遺産だし、現実離れした幻想的な光景を、ぜひ一度見てみたいと思って訪れる人も多いはず。
かくいう私も、その一人でした。
町の中を歩き回って不思議な世界だなあ、などと感じ、コジャレたレストランに入ってオシャレな町だなあ、なんて思って、今度はこの中のホテルに泊まりたいなあ、なんて無邪気に思っていました。

でも、グルメガイドのマテーラの話は、ショッキングな話から始まりました。

「マテーラのサッシ地区は、国の恥として解体する法律も認可され、数百人の住民はみじめな極貧の生活を送っていた。
家畜と一緒の家に住み、子供の死亡率は第三世界なみだった・・・。」

国の恥と言われてたなんて。
現在の観光地化した町しか知らないと、とても信じられません。

とても楽しげなミニマテーラの動画。





1963年のマテーラ



さらに昔のマテーラは、こんなに活気あふれる町でした。
動画


詳しい町の歴史はwikiでもどうぞ。
こちら


バジリカータは、イタリアの中でも何故か一歩引かれているような州です。
バジリカータのことを語る時は、外国のように他人事な雰囲気。
というか、そもそも滅多に語りません。
地方料理に関しても、圧倒的に情報不足です。

多分、一番有名なマテーラ名物、パーネ・ディ・マテーラ。
動画

こんなに美味しいものができるんだから、素晴らしい食文化があるはず。

このパンの歴史にも、マテーラの浮き沈みは影響していました。
町が栄えていた頃は、このパンは各家庭で生地を作って町の共同かまどで焼いていまいした。
ところが、サッシが消えるにつれてこの習慣も消滅します。
ただ、素晴らしいのは町と同じで、このパンも復活するのです。
数件のパン屋さんによって伝統が守られて、完全に消滅することはなかったんですね。

2019年の欧州文化都市(wiki)に選ばれているマテーラ。
町の発展にも一層弾みがつくことでしょう。


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“マテーラ”のグルメガイド記事の日本語訳は「総合解説」2012年7月号に載っています。

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イエージ

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今日はイエージの話。
イエージと言えば、ヴェルディッキオ。
ヴェルディッキオ・なんちゃら・なんちゃら・イエージ、のイエージです。

ヴェルディッキオはイタリアの代表的な白ワイン、またはぶどう品種。

メイド・イン・イタリーのぶどうシリーズの切手。
マルケ代表。
 ↓



なんとこのワイン、「イタリアワイン界のみにくいあひるのこ」と呼ばれていたんだそうです。

つまり、あひるのこは、品質を追求した一部の有名生産者の力によって、白鳥になって世界に飛び立っていったんですねー。

ちなみにフルネームは、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージDOC。

ヴェルディッキオのことは知っていても、カステッリ・ディ・イエージのことは全然知らない、のでは?

イエージはもちろん町の名前。
イエージの城(複数形)というからには城がたくさんある地方なのか。
なんでも、強力な王がいたのではなく、大領主の城を中心に開けた集落が集まった共同体なんだそうです。
つまり城下町の集まりですねー。
城下町というのは防御のために町を壁で囲む形に発展していくそうですが、イエージの城々も壁で囲まれています。
城の数は12とも14とも16だったとも言われて、ちょっとあいまい。
でも、共通点は、そのレンガの色。
マルケのこの地方のレンガはパンの皮の色と呼ばれているそうです。

パンの皮の色のイエージの壁。
 ↓



壁の上には通路があって屋根つき柱廊のようになっています。
その上は3~4階建ての住居部分。

カスカテッリ地区の大きな集落の一つが、クプラモンターナ。
こんな町→動画
小さな集落の一つ、モッロ・ダルバはこんな町→動画

マルケのは丘陵地帯で、海風を受けるため、オリーブやぶどうがよく育つと言われています。
ヴェルディッキオには、カステッリ・ディ・イエージと、マテリカという、2つの有名なDOCがあります。
この2つは、個性が全く違うワインなんだそうですが、その違いを生む最大の要因も海風。
カステッリ地区は海風を受ける比較的海に近い場所にあって、マテリカはもっと内陸にあります。

イエージが海に近いというイメージはなかったけど、イエージの壁は、トルコの海賊の襲撃から守るという目的もあったそう。
町の前を流れている川をさかのぼって来たのかなあ。

とにかく、海風によって、同じヴェルディッキオでも一段とフレッシュで、フルーティーでフローラルで繊細な風味が生まれるんだそうです。
一方、海の影響が少ない内陸のマテリカのヴェルディッキオは、頑丈なボディーを持った、長期熟成に耐える、なめらかなコクを持ったワインになるそうです。

マルケ名物、オリーブのアスコラーナでもつまみながらヴェルディッキオ飲めたら幸せだな~。






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グルメガイド“イエージ”の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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ナポリのフリット、ピッツェッレ

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今日はナポリのフリットの話。

ナポリ料理には様々な名物フリットがありますが、なぜか北イタリア、ましてや外国にはあまり広まっていないようです。

“ナポリのフリット”のシンボルの一つが、“ピッツェッレ”ですが、これもちょっとマイナー。
別名、ピッツァ・フリッタとも呼ばれます。

ナポリでも貧しい地区のストリートフードとして誕生した一品です。
ヴィットリオ・デシーカ監督の1954年の映画『ナポリの黄金/L'oro di Napoli』には、ナポリの道端で揚げピッツァを売る男が登場します。
奥さんは若きソフィア・ローレン。
こんな色っぽいおかみさんが揚げ物売ってる裏路地、ちょっと絵になりすぎ。




この夫婦は、生地を伸ばすのが奥さんで、揚げるのがご主人の仕事。
一般的にはピッツァイオーロのご主人が生地を伸ばすのですが、この映画の場合は、この設定が伏線になってます。

ちなみに、なじみ客の支払いはつけが普通。
一説には、8日たったピッツァと同じ値段、つまり格安で売ったので、今食べて8日後に払う、という意味の別名で呼ばれていたとか。

ナポリのピッツァには、よく知ってる焼いたピッツァとは別の顔があったようです。
食べると美味しいけどね。

現代版ピッツェッレ。
 ↓




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ピッツェッレを含むナポリのフリツトのリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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ナポリのフリット

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ナポリのフリットの話、続けます。

今月の「総合解説」の“ナポリのフリット”の記事では、ピツッェッレのほかに、アランチーニやクロッケ、パンツァロッテイなどのリチェッタも紹介しています。
そこで、これらを食べることができるナポリの有名なフリッジトリーアを1軒ご紹介。
フリッジトリーア・ヴォーメロです。
 ↓



揚げ物をコーン形に巻いたシートに入れて売るのは、欧米ではよく見かける光景。
イタリア語では、このシートのことをcuppetielloクッペティエッロといいます。
下の写真はちょっとお上品な一品。




揚げポレンタことscagliozziスカッリオッツィも、冬のフリッジトリーアの名物。
 ↓



パスタの揚げ物は、frittatine di pastaフリッタティーネ・ディ・パスタ(またはマッケローニ)。
残り物のパスタを使えば本格的。




なんだか、スプマンテ飲みたくなってきたなあ。

最後に、ナポリのフリットのおすすめ本は、その名もフリット・ミスト
http://creapasso.com/maccheroni.html


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ナポリのフリツトのリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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ペペロナータ&Co.

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今日はペペロナータの話。
いや~、ペペロナータpeperonataによく似た料理って、イタリア各地にあるんですねー。

ペペロナータとミートボール。
 ↓


リチェッタの動画はこちら
パプリカ、玉ねぎ、トマト、にんにく、オリーブオイル、塩の6つが基本の材料。
ペペロナータのリチェッタに地中海の野菜やハーブを加えれば、アレンジは自由自在。
「グランデ・エンチクロペディア」によると、
ラツィオには、パフリカの皮をあぶってむいてから煮るバージョンがあるそうです。
ペペロナータは煮る時間が長いのが難点ですが(しかも翌日のほうが美味しい)、こうすると調理時間が短縮できます。

てっきり南イタリアの料理かと思っていたら、「グランデ・エンチクロペディア」にも、「リチェッタ・ディ・オステリーア・ディ・イタリア」にも、元々はエミリア地方の料理、と書いてあります。
とすると、このピアチェンツァのルスティサーナrustisanaは、ルーツ候補ナンバー1。
 ↓


同じくパプリカが主役ですが、ペペロナータより色んな野菜が入ります。

さらに、“リチッタ・ディ・オステリーア・ディ・イタリア”シリーズの「リチッタ・レジョナーレ」では、ペペロナータのリチェッタを提供しているのは、アスティ(ピエモンテ)のアグリトゥーリズモ。
それというのも、アスティは、クアドラータ・ダスティquadrata d'Asti という品種のピーマンの産地として有名なんです。
肉厚のクアドラータ・ダスティ
 ↓



なすが主役だとパレルモのカポナータcaponata。
 ↓


カポナータのリチェッタの動画はこちら

地中海野菜のごった煮は、ナポリだとチャンフォッタcianfotta。
リチェッタの動画はこちら




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“ペペロナータとその仲間”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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モンテジョーコ

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今日はビールの話。
なんでも、イタリアのビール業界は活況を呈しているようで、あらゆるタイプの消費者をターゲットにしたビールが次々と造り出されています。
そんなわけで、クチーナ・イタリアーナ誌は、ビールの消費者を4つのタイプに分類して、それぞれにお勧めのビールを紹介しています。

1.ビール通→一般的なビールにはあまり興味がない。
2.ビール通でない人→サッカーを観ながら喉の渇きを癒すためにビールを飲む
3.女性→アルコール度が低くワインより気軽に飲めるのでビールを飲む
4.セリアック病の人→グルテン過敏症などでビールが飲めない

あなたはどのタイプですか?

1の人は、傾向として、珍しい、小さな造り手、古い醸造方法、複雑な香り、特別なモストのスパイシーなビールを求めています。
 
ベルギーや北欧産が人気ですが、イタリア産なら、モンテジョーコのラ・ムンミアLa Mummiaがお勧め。
 ↓


ラベルに描かれている通り、ムンミアとはミイラのこと。
長期間寝かせていることの隠喩です。

ランビックスタイルのサワーエール。

バルベーラに使った数種類のバリックで3年寝かせてから瓶内で再発酵。
スプマンテのような泡、ワイン香、野の花の香り、デリケートな柑橘フルーツ風味、エレガントな酸味、最後にくる塩気。

テイスティング動画

モンテジョーコのhp

ピエモンテの造り手で、2005年創業。
地元のワイン用のバリックを使っているのが特徴。
イタリア産のサワーエールではナンバー1と言われていて、もうアメリカには輸出しています。

下の写真は同じくモンテジョーコのビール、デーモンハンター。
 ↓



アルコール度8.5%。
濃い琥珀色、イギリス産ホップを使ったアングロサクソン系ビール。
ドライいちじく、カラメル、ベリーの香り、強い味。

ベースとなるビールはルーナruna。
ベルギースタイルのペールエール。
こんなビール→写真

クラフトビールは色んな種類があって楽しいですねー。
今晩は地ビール飲むかなあ。



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“ビールと消費者”の記事の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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トマトソースのスパゲッティに合うワインとビール

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今日はワインの話。
唐突ですが、トマトソースのスパゲッティに合うワインって、どんなのでしょう。

基本中の基本のような気もするけどあんまり考えたことなかったなあ。
そこで、ローマのホテル・ローマ・カヴァリエーリ(ちなみにシェフはハインツ・ベツク)のソムリエ、マルコ・レイタノ氏を含む、ガンベロ・ロッソの専門家たちの意見を聞いてみましょう。

1位に選ばれたのは、ポッジョ・レ・ヴォルピのフラスカーティ・スーペリオーレ・エポス2010。


カンティーナのhpはこちら

カンティーナのPV

ワインのページはこちら

フラスカーティで栽培された地元品種のぶどう、(マルヴァジーア・ディ・カンディア、マルヴァジーア・プンティーナ、トレッビアーノ)を使用した地ワイン。
ガンベロ・ロッソでは何度もトレ・ビッキエーリに選ばれていて、ガンベロ・ロッソお気に入りのフラスカーティのようです。
日本でも手に入りやすいワインのようなので、ぜひ、トマトソースのスパゲッティと組み合わせてみてください。

順位外ですが、相性のよいビールというのも選ばれています。
それは、ドゥカートのヴィア・エミーリア。



ちなみに、このビール、前回のブログで紹介した消費者のタイプ別お勧めビールで、ビール通でない人向きのビール(ウンチクは気にしないサッカーのお供用)に選ばれています。

ドゥカートのhpはこちら

ビールのページはこちら

最近のイタリアのソムリエは、ワイン以外の泡を勧めるようになってきたそうで、ヴィア・エミーリアは万人向けのイタリア産クラフトビールの代表格のようです。
下面発酵、ドイツのテットナンガー産ホップを使用した無濾過のケラーピルス。
2010、2012、2014年のワールド・ビア・カップ、ケラービア部門銀メダル。
イタリアで最高のピルスの一つという評価を獲得しています。
産地繋がりでパルマの生ハムにも合うそうですよ。

ヴィア・エミーリアのテイスティング動画


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“トマトソースのスパゲッティに合うワイン”と“ビールと消費者”の記事の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号にのっています。

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ナポリ人気質

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まず、なすのパルミジャーナ。
スライスして揚げたナス、トマトソース、チーズを重ねたオーブン焼き。
それでは質問です。
これはどこの地方の料理でしょう。




多分、シチリアと答える人が多いのでは、と思うのですが、ナポリでこの料理を習った人は、ナポリ料理と信じて疑わないはず。

この料理は、シチリアとナポリで本家争いが繰り広げられている料理なのですが、『サーレ・エ・ペペ』では、この料理の説明の一番最初に、まず、ナポリ人気質というものをこんなふうに説明しています。

「陽気で人がいいけれど、極端に排他的。
ナポリ料理は、ナポリ人にとってただ一つの本物の料理だ。
彼らはナポリが生み出した美食文化に誇りを持ち、自分たちが元祖であることを全力で主張する。
もしパルミジャーナがシチリア生まれだ主張すれば、
古いリチェッタや料理界の権威がナポリ料理を讃える文献を持ち出して、徹底抗戦を始めるだろう」

これを書いたのは、ナポリ人ですが、ナポリをイタリアに置き換えれば、外国人がイメージするイタリア人気質そのものだなあ。

しかも、この料理の名前、シチリアではmelanzane alla pramigianaですが、ナポリでは、parmigiana di melanzane なんだそうです。

どっちでもいい気もしますが、『サーレ・エ・ペペ』では敢えてナポリ風のパルミジャーナのリチェッタを紹介しています。

カゼルタのリストランテ・ラ・コロンネのシェフのparmigiana di melanzane
 ↓


今月の「総合解説」では、もう1つ、ナポリがらみのネーミングの食材を紹介しています。
パーネ・カフォーネですpane cafone。

サワードウの田舎風パン。
 ↓
 


以前ブログで紹介した時(こちら)とは別の説です。

もしイタリア語の辞書をお持ちでしたら、cafoneカフォーネという言葉の意味を調べてみてください。
私の辞書には、「(ナポリで多くいる)田舎物、粗野なやつ」
と書いてあります。

ナポリ限定ですよ。
なんだか、すごく失礼で差別的な言葉なんですね。
これをそのまま訳す気にはなれなかったのですが、イタリア語の原文では、
「発祥地であるナポリの下町の活気を言い表した名前」と、とてもスマートな解釈がされていました。

ナポリ名物洗濯物。




パーネ・カフォーネ



カフォーネはアメリカにも伝わって、スラングとしても使われている言葉のようです。

とにかく、ナポリはイタリアのいじられキャラ。

ナポリで行われたヌテッラ誕生50周年のイベントで、ヌテッラを食べた時のリアクションを教えたくださいというインタビュー。
(こちら)
ナポリ人、みんなノリノリですねー。
愛されキャラだなあ。

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関連記事、“なすのパルミジャーノ”と“伝統的なパンのとサンドイッチ”の日本語リチェッタは、「総合解説」2012年8月号に載っています。

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ピアディーナの仲間

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今日はピアディーナの仲間の話。
piadina はピアーダpiadaの縮小形。




小麦粉、塩、水、ラードがベースの発酵させない平らなパン。
ルーツは、酵母入りパンが発明される前から、つまり文明誕生前から作られていたパンですが、
時代と共に徐々に複雑になっていき、公式的には、中世にロマーニャ地方で広まったパン。
それが、20世紀になって、ロマーニャに海水浴に来たバカンス客によって再発見されて広く普及しました。

このタイプの平たいパンは、ヨーロッパ、アジア、北アフリカを結ぶルートで広まったそうですが、アジアはインドをさっとかすめた程度。
チャパティ
 ↓




チャパティの動画はこちら

レバノンのマヌーシュ(動画)も、かなり似てます。
 ↓


ピアディーナの動画はこちら

意外とあるもんですね。


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ヴァルテッリーナ

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今日はイタリア便りです。
それでは、ロンバルディアのSegnalibroさん、お願いします。


以前通りかかった時に気になっていた、ロンバルディア州の北に位置するヴァルテッリーナ地方。
山や氷河の景観を楽しむ列車として知られるベルニナ急行に乗るため、ミラノからティラーノに向かうときにはここを通ります。
山の南斜面に沿って20km以上も葡萄畑が続き、谷間には牛がのんびりと草をはむ光景が広がっていて、一度足を止めてゆっくりしてみたいと思っていたんです。





近所のスーパーで買っているお気に入りのヨーグルトがヴァルテッリーナ地方のキウロ産だと知った時、これはやっぱり行かねばならぬと思い、片道100kmの道のりをランチしに行ってきました。
半年前に行ったペーイオ温泉で山のお食事は重いと学習したので、朝は一杯のコーヒーのみで出発したのですが、この作戦が裏目にでることに・・・。
お目当てのレストランまであとわずか5kmのところで、運転手こと相方がエネルギー切れを起こし、国道沿いの適当なレストランに入ってしまったのです・・・あぁ、はるばる2時間もかけてやってきたのに。

ヴァルテッリーナ地方では、蕎麦粉を使った郷土料理が有名です。
イタリア語で蕎麦粉は grano saraceno、サラセンの小麦って言うんです。
そういえば、おフランスには蕎麦粉を使ったおいしいガレットがありますが、フランス語でも蕎麦粉はblè sarrasin サラセンの小麦と言うそうで・・・サラセンってイスラム教徒のことですよね?
いろいろな説がありますが、蕎麦がイタリアで栽培されるようになったのは15世紀のこと。
トルコからヴェネチアへの貿易によってもたらされ、ベルガモやブレーシャで栽培されたのが始まりだそうです。
トルコ、つまりイスラム教徒からもたらされたから、サラセンの小麦と言うのかしら。
現在では生産量は多くないものの、ピエモンテやアルトアディジェ、ウンブリア、そして、ロンバルディアのヴァルテッリーナ地方で蕎麦が栽培されています。
地元でおいしいと評判のレストランで蕎麦粉のパスタ、ピッツオケリが食べたかったのに、がっかり。
落胆のあまり、お料理の写真は1枚も撮らなかったのですが、一応、ヴァルテッリーナの郷土料理を注文。
気を取り直してカメリエラ兼オーナーらしきお姉さんに、周辺の見所やお料理のレシピ等いろいろ質問してみました。
だって、お客さんは私たちだけだったのですもの。
ここで気に入ったのが、前菜で出てきたsciattシャット。 そば粉と小麦粉を衣にして揚げた、お山のチーズの天ぷらです。お借りした写真がこちら。



お姉さんいわく、粉の配合は1:1で、冷たい炭酸水と少々のグラッパを加えるのがポイントなのだとか。
シャットというのは、ここの方言でヒキガエルという意味だそうですが、確かにビヨーンと衣が伸びると足みたいに見え、カエルの唐揚げに似てるかもー。
シャットには、サラダを添えて出すのがオーソドックスなのだそうです。
なんだかんだ言いながらデザートまでしっかり平らげた後、お姉さんが持ってきた1枚の紙切れはお会計・・・ではなくて、ギッシリ手書きで埋まったメモ用紙、ヴァルテッリーナ料理のレシピでした。



プライスレスなプレゼントに思わずウルウル。
メモを手渡しながら、ちょっと照れていたお姉さんが可愛かった。
彼女のおかげで、相方と喧嘩したまま帰らずにすみました。
感謝! お食事の後は、お目当てのヨーグルトのお店をお姉さんに教えてもらい、プチ大人買い。



これこれ、Latteria Sociale di Chiuroのヨーグルト。
1957年に小規模の酪農家が集まって生まれた、ヴァルテッリーナ地方の乳製品組合が作っているものです。
牛乳やチーズも販売しているのですが、どれもこれもパッケージのデザインがかわいい。
ここのヨーグルトはおいしさのあまり、蓋の裏まで舐めてしまうんですが、舐めてびっくり、蓋の裏にまでデザインが入っているこだわりよう。
そんなこだわりは、もちろん味にも表れていて、どれもこれもおいしく、牛乳、バター、お山のチーズも購入。
さらには直売所でワインやりんごなど地元でとれたものを購入し、大満足で家路につきました。
お山の住人は頑固で閉鎖的だと聞いていましたが、ここの人たちはみんな親切で温かかったです。
さて数日後、家の近くでヴァルテッリーナ郷土料理を食べられるところはないかと探していたところ、ミラノのオサレ~な界隈、コルソコモの近くに、Sciatt à Porter というお店があるのを知りました。
http://www.sciattapoeter.it/
田舎のヴァルテッリーナ料理がオシャレに味わえそうなお店です。
お店の名前の通り、ヒキガエルこと、シャットもあります。
これ、アペリティーボのおつまみにしたら、パクパクいけちゃいますよ。
ちなみに、ここのシャットは、ガンベロロッソの2015 Street FOODというガイドブックで、ロンバルディア州のストリートフードNO.1に選ばれたのだとか。
ほほー、王冠マークがついてます。



他の州のNO.1ストリートフードも気になるところです。 ガンベロロッソ2015 Street FOODは、ただいまクレアパッソにて、好評発売中でーす♪
(詳しくはこちらのページ)



おまけの動画です。
ヴァルテッリーナ風シャットの作り方。



Sciatt à PorterのPV

そば粉の衣にチーズを詰めて揚げると、そばもイタリアンに変身ですね。

Slow Food の“ricette di osterie d'italia”シリーズの『クチーナ・レジョナーレ』から、オステリア・デル・ソーレOsteria  del Sole (Ponte in Valtellina)のリチェッタをどうぞ。

シャットSciartt
材料/4人分
 小麦粉・・200g
 そば粉・・200g
 グラッパ・・大さじ2
 チコーリア・セルヴァティカ
 カゼーラ・ジョーヴァネ(冬の間造られるビットの一種のDOPチーズ)・・2握り
 揚げ油 
 EVオリーブオイル
 水・・大さじ1
 ビネガー・・大さじ1 
 塩
・小麦粉とそば粉を混ぜ、塩、グラッパ、冷水を加えて柔らかいポレンタ状の生地にする。最低3時間休ませる。
・チーズを角切りにして生地に入れる。スプーンですくって180度に熱した揚げ油に落として揚げる。
・約4分揚げてこんがり色が付いたら取り出し、チコリーノ(塩、ビネガー、オリーブオイルで調味する)を添えてすぐにサーブする。



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カフェラテ

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今日はコーヒーの話。

早朝のトリノのカフェ。





最近、「カフェオレとカフェラッテはどう違うのか」というクイズをTVで見て以来、ちょっとひっかかってます。
なんでも正解は、「カフェオレはドリップコーヒーで作って、カフェラテはエスプレッソで作る」んだそうです。

その時は、なるほどねえ、と思ったぐらいだったのですが、ふとした時に、
ん~?
なんかひっかかるなあ。
と違和感を感じるようになりました。

イタリアのホテルでは、いつも朝食にカフェラッテを頼むのですが、その時出てくるのは、「コーヒーポットに入ったドリップコーヒー+ミルク」です。

イタリアのバールで「カフェラッテ」を注文すると、出てくるのはグラスに入った「ミルク+コーヒー」。




「エスプレッソ+ミルク」を飲みたかったら「カプチーノ」を注文しますよー。

ブリオッシュとカップッチーノのイタリアンブレックファースト。




もう1つ、私は日本では「カフェモカ」が好きなんですが、イタリアで「カフェモカ」と注文しても、注文したことないけど、多分、チョコレートシロップ入りのコーヒーは出てこない。
イタリアでモカと言えば、モカでいれたエスプレッソのことだし。

モカ
 ↓



バールでイタリア式朝食




コーヒーと言えば、今月の「総合解説」に、ちょっとショッキングなコーヒードリンクのリチェッタが2つ。
その一つは35ページに載っています。
 コーヒーソーダだって。
炭酸はガス入りミネラルウオーターで。
ありえないですよねー。




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“コーヒーの冷たいドルチェ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年8月号に載っています。
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アッラ・ペスカトーラ

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今日は、アッラ・ペスカトーラの話。
今月の「総合解説」では、地方料理として“リゾット・アッラ・ペスカトーラ”を紹介しています。





一応ヴェネチアの地方料理としてリチェッタを取り上げていますが、このペスカトーラ、確かにイタリア料理ではあるのですが、どこの地方の料理かというと、イタリアの海辺の町だったらどこにでもある料理なので、地方を特定するのは難しそうです。

ちなみに、『ガストロノミア大辞典』によると、
     ↓
http://creapasso.com/books.html
 
「 alla pescatoraとは、一般的にパスタ(リングイーネ、パヴェッテ)や米料理のソースを意味する名前。シーフード(軟体動物、小型の甲殻類)をトマトソースで煮たもので、にんにくとバジリコを加えることが多い。」
と書かれています。
 
ペスカトーラは。スパゲッティのソースというよりは、リゾットやリングイーネとの組み合わせのほうが一般的なようです。
 
リゾット・アッラ・ペスカトーラ。
 ↓  



別名、アッラ・マリナーラalla marinaraとか、アッラ・スコリエーラallascogliera、アッロ・スコッリオallo scogliaとも呼ばれます。
これが正しいリチェッタというものはなく、入れる食材も地元で手に入りやすい食材を使うので、バリエーションは豊富。

どうやらイタリアでは、アッラ・ペスカトーラと言えばリゾットが定番のようですが、見た目のゴージャスさから判断すると、パスタの方がインパクトがあるなあ。





ちなみに英語で言うと、シーフード・パスタという身も蓋もないネーミング。
漁師風パスタ、またはアッラ・ペスカトーラというと、一段上の料理のような印象。


リッチョーネのリストランテ・イル・ポルティコのオマール入りの豪華版スパゲッティ・アッロ・スコッリオ。

 




赤いエビと黒いムール貝は、無敵の組み合わせですねえ。


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“リゾット・アッラ・ペスカトーラ”のリチェッタは、「総合解説」2012年8月号に載っています。

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グラニャーノ

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乾燥パスタの産地といえば、まず一番有名なのは、ナポリ県のラッタリ山地の中にある町、グラニャーノ。





パスタを効率よく乾燥させることを優先させて街並みを作った町。
ちなみに、改築したのはローマ通りとトリヴィオーネ広場、サン・マルコ広場など。
乾燥だけでなく、町の中心も駅の近くに移し、通りを結んで製品を運びやすくするなどの改良が加えられました。

乾麺のパスタ、つまり大量生産するパスタ産業の歴史を考える時、たいてい、その始まりとされるのがグラニャーノ。
乾燥パスタのふるさとと呼ばれるのにふさわしい町。

そもそもは、海に近いところから、湿り気を帯びた空気のおかげで、麺がゆっくり乾燥しました。
そのために、美味しいパスタができたんだそうです。

その海には、大量生産した乾麺を、遠く外国まで運ぶ重要な港がありました。
町を変えるだけでなく、グラニャーノとナポリを結ぶ鉄道の駅もできて、輸出網も完備されました。

さらに、グラニャーノは澄んだ水が豊富な地域で、小麦を挽く水車をたくさん作ることができました。
硬質小麦も上質のものが手に入りました。

今も水車渓谷と呼ばれるグラニャーノの小川。



ある意味、この渓谷がグラニャーノのパスタの本当の発祥地。

16世紀末頃から、グラニャーノにもぼちぼち大手のパスタメーカーが登場してきますが、元々は織物産業が盛んな町でした。
18世末に蚕が病気にやられて絹の生産ができなくなり、徐々にパスタ作りにシフトしていきます。

そういえば、アマルフィのレモンも、絹産業が不振で蚕用の桑の木をレモンに植え替えたことが、普及のきっかけでした。
イタリアのパスタやレモンが一世を風靡した裏には、日本の織物産業の発展があったんですね。

ちなみに、グラニャーノの代名詞ともいえるパスタメーカー、ガロファロは17世紀末の創業。



そして18世紀にグラニャーノのパスタは全盛期を迎えます。
代表的なパスタ、マッケローニの名前は乾麺のパスタの代名詞として世界中に広まります。
パスタの町として栄えたグラニャーノですが、戦争で爆撃を受けて破壊され、戦後は北部のライバル企業に押されて、急速に衰退していきます。

一時はグラニャーノ最大と言われたガロファロも、2014年にスペインの企業が買収しました。

最近は、IGP製品に認定されるなど、企業と料理人両方の強いバックアップのおかげで、復活をとげつつあります。

グラニャーノの歴史がかいま見れるスライドショー。





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“乾燥パスタのふるさと”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年8月号に載っています。
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