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Channel: イタリア料理ほんやく三昧
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イタリアの塩田

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今日はイタリアの海塩の塩田の話です。
過去に何度か取り上げていますが、イタリアでは、約20軒の塩田が現在もあるのだそうですが、大量生産をしているのは4つ。

つい最近取り上げたのは、一番北にあるチェルヴィアの塩田。
にがり成分が少ない“甘い”塩で有名な、ドルチェにも使われる塩です。
パルミジャーノ・レッジャーノにも使われています。

チェルヴィアの塩田
 ↓



特に、手作業で収穫して昔ながらの製法で少量だけ造られるリゼルヴァ・カミッローネとサルフィオーレの塩は品質の高さで有名。

サルフィオーレの解説
 ↓



プーリアのマルゲリータ・ディ・サヴォイア塩田はヨーロッパ最大の塩田。
 ↓



この地区の塩は塩化ナトリウムの割合が最大で、味も比較的中庸。


トラーパニの塩はIGP製品の認定を受けています。
スローフードの保護食材にもなっています。
この塩は他の塩と比べてカリウムとマグネシウムの含有量が多いので苦みが強く、塩化ナトリウムの割合が少ないのが特徴です。
高い安全性から、長期保存用の食品の塩漬けに使うのに最適と考えられています。

トラーパニとパチェーコの塩田と、近くのマルサラ(エットーレとインフェルサ)の塩田のある地域は、風車が名物のシチリアを代表する塩田。
 ↓



マルサラの塩田  ↓
UFO at Sunset [Explored]


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“イタリアの塩田”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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イタリアのビール

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今日はビールの話。

スローフードのイタリアビールのガイド本、『ビッレ・ディ・イタリア2015』の発売に寄せた、『クチーナ・エ・ヴィーニ』誌の記事を訳して「総合解説」にのせました。

それによると、今やイタリアのビールは世界的知名度を得て、新しい伝統となりつつあるそうです。
イタリアのビールの特徴は、個性豊かな土壌から生まれる、オリジナリティーや発想力に溢れた醸造。

イタリアのビールブームは熱狂的に沸き上がって、情熱に支えられて成長し、現在は醸造、流通の分野でも重要な産業になっているのだそうです。
外国からの需要の増大が生産増にも結び付きました。

特に、ここ数年の注目は南のビール。

ちょうどいい機会なので、2015年版で、カタツムリマークを与えられた、高評価の作り手を紹介しがてら、本の見方を説明します。

まず、
カタツムリマークは、地域や環境に配慮しながらイタリアのビールの品質向上に貢献するような上質ビールを造っているメーカーに与えられます。

例えば、有名なところでは、ピエモンテのバラディン。
評価は、ビッライオ(醸造者)、ビッリフィーチョ(醸造所)、ビールの総評、個別のビール評価
に分かれています。

「(ビッライオの)テオ・ムッソはイタリアの(あるいは世界の)ビールの歴史を造った」
と高評価。

「バラディンのビールのスタイルは、エレガントでバランスが取れ、料理と組み合わせやすい。
ホップの流行を過度に追うことはせず、上品だが、デリケートすぎることもない。
注目を集めにくい“普通の”ビールでも、バラディンのビールは、いわばビールのマイルストーンになっている」

バラディンのビールは12種類。
特に、スロウ(生産地や生産者の歴史を感じさせる)、クオティディアーナ(シンプルで飲みやすい)、グランデ(ぜひ飲んでほしい素晴らしい風味)の特徴があるビールには、各称号が付いています。
バラディンの場合は、ノラというビールがグランデ評価。
ビール名の横にある●は、ビールの色を表しています。
ノラは濃い琥珀色。
さらにその隣はアルコール度。
その隣のAのマークは上面(alta)発酵の意味。
さらに隣のRは再発酵という意味。

ノラを語るティオ・ムッソ氏。
 ↓


ガイドの評価は、

エキゾチック、熱く、魅力的。
エジプトの精油ミルラやしょうがの風味がモルトと完璧に調和。
モルトには貴重なカムット小麦を使用。
独特の風味が長く残る。

このガイドを片手にイタリアビールを飲むと、うんちくを語れそう。

プーリアのグランデ・ビールの作り手の一つ、B94。
 ↓



同じくプーリアの注目の醸造所、ビッラノーヴァ。
 ↓




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“ビッレ・ディ・イタリア”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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「総合解説」最新号

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今月はちょっと遅くなりましたが、9月号の「総合解説」、発売になりました。

今月は、なぜかパスタ関連の記事が多かったです。
料理も、バカンス地を連想させる料理から、秋の食材の料理へと、変化しています。
イタリアの9月は、バカンスの最後の名残、というイメージなんですね。
楽しい夏の思い出を、もう少し引っ張りたい、というような気分にぴったりの料理は、リグーリア料理。
もうさっさと秋に浸りたいなら、ロンバルディア料理。
という具合で、料理も大急ぎで北上中です。

おまけでこの時期の話題。
ハロウィーン文化とは関係なさそうなイタリアですが、
アロウィーンは年々定着しているみたいですね。





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プッタネスカの考案者

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今日から「総合解説」9月号のビジュアル解説です。
最初の記事は、イタリアの国民的パスタソースの1つ、プッタネスカの話。
この料理、とても美味しいけど手軽に作れて、人気ありますよね。
なのに、なんでこんな名前。

という訳で、この料理の由来です。
諸説あるのですが、どれも決定的証拠がないので、どれを信用するかは、あなた次第、という状態。
『サーレ・エ・ぺぺ』の記事も、これだ、という決定打はないので、諸説をいくつか紹介というスタンスです。

まず最初の説は、
ナポリ料理のバイブルと言われる料理書、
ジャンヌ・カローラ・フランチェスコーニ著『La Cucina Napoletana』の中に、
この本のルーツについての記述があるそうです。

ジャンヌ(1903-1995)はナポリ生まれの作家で、ナポリ料理の権威と見なされていた人です。
信頼できるナポリ料理の本を、イタリアで2番目に書いた人。
1番目の本は、イタリア料理史に残る歴史的な本とされているので、2番目でも十分すごいこと。
ゆたかなナポリの食文化を研究して本にまとめるという偉業は、高く評価されています。

この人の本に書いてあったことは、イタリア人にとってはかなり信用できる情報と言えそうです。

彼女によると、このソースを考え出したのは、画家でジャンヌの親密な友人だった、エドアルド・マリア・コルッチ(1900-1975)、という人物だそうです。
コルッチはイスキア島生まれでした。
こんな絵を描く人です。
このソースは彼のスペチャリタだったそうです。

でも、数年前にイスキアの日刊誌、『イル・ゴルフォ』(webページはこちら)が発表した説によると、プッタネスカの考案者は、コルッチの甥の建築家で、イスキアでレストランとナイトクラブを経営していたサンドロ・ペッティなんだそうです。
このレストラン、リストランテ・アルベルトのwebページに、現経営者(創業者の孫)が、プッタネスカ誕生の経緯をサンドロから聞いたという話が載っています。→こちらのページ

それによると、1949年の夏の終わり、夜遅くに、彼の経営するナイトクラブRangio Felloneに、1組のカップルが食事に訪れました。
ところがあいにく、その晩は食材を使い切っていて、残っているのはトマト4個とオリーブとケッパーが数粒。
puttanataみたいなのしかできないけど、と断って、その材料でパスタを作ったのだそうです。
puttanataは、お上品に言えば、ろくでもないもの、お下品に言えば、くそみたいなもの。
でも、それじゃあメニューに載せられないので、ちょっとお上品にputtanescaと言い換えて、メニューに載せたのだそうです。
サンドロは、このソースのリチェッタをレストランのシェフに伝授しました。
すると、シェフはすっかり気に入って、すぐに店のメニューに取り入れたのだそうです。

聞いてみると他愛もない話ですが、誰でも考え付きそうなシンプルなこのソースがここまで広まったのは、娼婦風という名前のインパクトにあったのでは、とも思えます。

そうそう、アメリカ人のアーサー・シュヴァルツの、ナポリのスペイン地区の売春宿のオーナーが、手早くできるこの料理を客にふるまったという説も、それなりに説得力ありますねえ。

でも、puttanataのダジャレでputtanescaにした、っていう説は、カンパーニアの人ならいかにも考えそうな話じゃないですか。

現在のリストランテ・アルベルト
 ↓



こちらはブッタネスカ誕生の地とされるナイトクラブで開かれた映画祭のパーティー。
ちなみに設計したのはサンドロ。
 ↓





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“パスタ・アッラ・プッタネスカ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年9月号に載っています。
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イスキアとヴットリア・コロンナ

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週末に郵便局に行ったら、荷物を出す人より、飴をもらいに来たハロウィンウォークラリーの子供たちのほうが多かった。
男の子も女の子も、カボチャ色のちっちゃなバケツを下げて小さな町を巡って、夢中で飴を集めて回ってました。
見てるこっちまで楽しくなりましたよ~。
こういうイベントは、地元の商店街が、どれだけ本気を出すかにかかってるんだなあ。


とろこで、前回は、プッタネスカの話題でしたが、その発祥地とされているのはイスキア(諸説あり)という話でした。
偶然ですが、今月の「総合解説」のグルメガイドに取り上げた場所はイスキア。

イタリア人しか知らないイスキアの魅力って、なんでしょう。
行った気になるヴィジュアルツアーの始まりです。

イタリアの歴史の話をすると、ギリシャ人、アラブ人、ノルマン人、スペイン人、フランス人など、様々な民族に支配された、という話が必ず出てきます。
イスキアも数々の民族に支配されたようなのですが、『サーレ・エ・ペペ』では、そのへんのところはまるっと省略して、最終的に島を支配したのはバカンス客だったと、スマートに落としています。

この島は、イタリア人に人気のバカンス地。
その理由は、温泉。
記事でこの島のキーワードとなっているのは、温泉、貴族、農民。

イスキアには温泉の水源が100か所以上あるそうです。
しかも、古くから薬効があることが知られていて、みんな体の悪いところを治すために温泉に浸ったのだそうです。




次は、貴族。
記事では、「イスキアの歴史が詰まった要塞化した小島」と紹介されている、アラゴン城のある“スコーリオ”。
城は今では廃墟となっていて、軍艦島みたいです。



城の現在の所有者は一部をホテルとして改装中。
動画はこちら


記事によると、この島の主役は、ルネッサンス最大の女性詩人のヴィットリア・コロンナ侯爵夫人(1492-1547)。
あのミケランジェロと芸術的な親交があった人です。
初めて聞く名前かもですが、wikiに詳しいことが紹介されています。
こちらのページ
彼女のお陰で島は芸術家や知識人のサロンのようになったのだそうです。

ミケランジェロとの親交を紹介する動画もたくさんあります。
例えば、こちらのページ


イタリアでかなり人気のある人のようです。
下の動画は、ヴィットリアの墓を探すドキュメントの予告編。
なんと、ミケランジェロが作った墓がイスキアのアラゴン城にあるのでは、という、ダヴィンチコードもビックリの壮大なミステリー。




イスキアって、なかなか素敵な島ですねー。





最後のキーワード、農民とイスキア料理の話は次回です。


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グルメガイド“イスキア”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年9月号に載っています。
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イスキア風カラマラータ

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今日はイスキア島の料理の話。

よく言われることですが、イスキア島で農民文化や料理が生まれる島の魂があるのは、海ではなく、島の内陸部。
バカンスの島になる前は、農業が主な産業でした。
 ↓



島で最初に人が住んだ地区、ラッコ・アメーノ。
動画はこちら
最初の住民は、ギリシャ人でした。

島で一番大きな住宅地区、フォリオ。
動画はこちら

島の喧騒から離れたイスキアの最も知られていない地区の入り口、サンタンジェロ。
動画はこちら



イスキア料理。
 ↓


島の料理に、バカンス客が好むカンパーニアの名物料理がミックスされて、都会的で派手な見た目の料理が次々と考え出されているようです。

そんな料理の一つとも言えるのが、グラニャーノのイカリング型パスタとイカの料理、カラマラータ。

イスキアやナポリでは、ヤリイカの旬、つまりちょうど今頃の秋から冬の料理。

偶然、今月の「総合解説」で取り上げたパッケリの記事を訳していて知ったのですが、パッケリやカラマラータのような直径が大きくて内側と外側があるパスタは、乾燥させる時に特殊な技術や経験が必要なので、作るのが難しいんですね。
なので、今はグラニャーノの代名詞のようになっています。

つまり、カラマラータは、おいしいパスタを作る伝統とイカをよく食べる地方ならではの料理なんです。

イスキア風カラマラータ。
 ↓


カラマラータはパッケリより幅が細いので、むしろ扱いやすいかも。

そしてもちろん、はるばるイスキア島まで行って、これを食べなかったら後悔する、という料理が、島一番の名物料理、うさぎ肉のイスキア風。



2500年前にシチリアからイスキアに移り住んだ人たちが、当時島にたくさんいたうさぎを使って作ったと言われる料理。
ポイントは、この料理の主役、島の野草。


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グルメガイド“イスキア”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年9月号に載っています。
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パッケリ

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前回、カラマラータの話が出た流れで、今日のお題は、ガンベロ・ロッソのベスト10の話題。
今月の「総合解説」では、乾麺のパッケリとスパゲットーニを取り上げています。

まず、どちらにも言えることは、これらのパスタは、パスタメーカーの技術の高さを知ることができるパスタで、当然、アルティジャナーレの製品で、どのメーカーにとっても、最高級ラインの製品となっていること。
「総合解説」には上位のパスタの写真を載せたのでちょっと見てください。
どのメーカーも、最高級パスタにふさわしい、美しくて高級感のあるパッケージです。
今回はパッケリの話。

まずは、乾麺のパスタの品質を判断する重要な基準、ダイスの材質と乾燥温度。
パッケリも、スパゲッティ同様、高級品はブロンズのダイスを通して、低温でゆっくり乾燥させています。
そうすると、表面が多孔質でざらざらしたパスタで、小麦の風味や栄養価が残った麦わら色で味の強い麺になります。
こういった麺はコクのあるソースがよく合います。
低温で乾燥させるのは、大型や厚みのある形や複雑な形のものほど、均質に乾燥させるのが難しくなります。
パッケリは直径が大きく、中が大きな空洞になっているため、内側と外側の品質にむらができないようにする必要があります。
ガンベロ・ロッソの試食は、ゆで上がり後に形をきれいに保っているか、麺の各場所での腰などもチェックしています。

ちなみに、一般的なステンレスのダイスを通して高温で短時間で乾燥せると、つつるつるした麺になります。
このタイプの麺には軽いソースが合います。

グラニャーノのヴェッキオ・パスティフィーチョのパッケリ。
 ↓


ガンベロ・ロッソのテイスティングでは13位でした。
記事によると、小麦はアルタムーラの製粉所で粉にした国産硬質小麦、乾燥温度は46℃以下。
中~大型で長めの形。見た目も触感も多孔質。
ゆでた後も弾力や腰を保ち、均質。

国産の硬質小麦をプーリアやバジリカータで粉にして、グラニャーノで乾麺にする、というケースが多いようです。
特にパッケリは上位はほとんどがグラニャーノのメーカー。

そんなグラニャーノの優れたアルティジャナーレのメーカーたちの中で、1位に輝いたパッケリは
同点1位が2製品。
ジェンティーレとカンピの製品でした。

ジェンティーレ
 ↓



カンピ
 ↓


どちらもグラニャーノのメーカーで、ジェンティーレは1876年創業。
硬質小麦はバジリカータ産のセナトーレ・カッペリ。
大型で内側も外側もざらざらした完璧なパスタ。
高級感あふれる濃い青い色のパッケージが目印。

一方カンピは代々製麺業の家系の兄弟が2007年に創業した若い会社。

同点3位はアフェルトラとファエッラ。
コストパフォーマンスも同点1位。
値段はカンピのパッケリのほぼ半額。

アフェルトラ
 ↓


ファエッラ
 ↓


アフェルトラは2005年にイータリーのチェーンに入ったグラニャーノのメーカー。
パッケリは小型で、イタリア産とカナダ産の小麦をミックスして使用。

ファエッラはカナダ産小麦を使用。

パッケリも個性的な製品が色々あるもんですね。


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“パッケリ”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年9月号に載っています。
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スパゲットーニ

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ガンベロ・ロッソのデグスタツィオーネの記事の紹介、今日は、スパゲットーニです。

一般的なスパゲッティは直径1.8~2.2㎜、スパゲットーニは直径2.3㎜以上。
上質のパスタは低温でゆっくり乾燥させることが必須条件ですが、太いということは、これがなかなか難しいということ。
なので実はこのパスタも、パスタメーカーの本気度が分かる製品なんです。
この製法のパスタはアルデンテを保ちにくいので、扱う料理人にも、経験とテクニックが要求されます。
日頃数多くのリチェッタを訳している印象からすると、グランシェフに愛されているパスタというイメージがあります。
チェックポイントは、ゆでた後の香りと味、歯ごたえの均一さ、“外皮”のテクスチャー、腰の強さ、ソースのからみ具合など。
ちなみにアルティジャナーレのスパゲットーニに合うソースは、ラグー、カーチョ・エ・ぺぺ、シンプルなフレッシュトマトのソースなど。
イタリアの国民的パスタソースばかりですね。

ナンバー1のスパゲットーニに選ばれたのは、なんと同点1位が6製品という異例の事態。
どれも最優秀クラスで甲乙つけがたかったそうです。
パッケリの場合は上位はグラニャーノのメーカーにほぼ独占されていましたが、スパゲットーニは、各地のメーカーの製品が選ばれています。
その中の一つが、キアンティDOCG 地区のパスタメーカー、ファッブリのスパゲットーニ・トスカーニ。

ファッブリ
 ↓


キアンティ地区は、ぶどう畑が広がる前は小麦畑だったんですね。
ガンベロ・ロッソによると、乾燥期間は38℃以下で6日間。
奇跡の乾燥テクニックだそうです。
硬質小麦の強い香り、甘みのある味・・・。

パッケリでナンバー1に選ばれたジェンティーレのスパゲットーニも、1位に選ばれています。

1社を除くすべてのメーカーがブロンズのダイスを使っていますが、例外の1社は、なんと金のダイスだそうです。

それはヴェッりーニ。
 ↓


金のダイスは世界で唯一。
ワインの作り手として有名なヴァレンティーニが栽培した硬質小麦を使用しています。

1位の中で、コストパフォーマンスのナンバー1は、マシャレッリ。
 ↓



ファッブリ製品と比べると、半額近い安さですが、スパゲットーニは2日間かけて乾燥させています。
ただ、ファッブリの製品が断トツ高額で、他のメーカーとの価格差はそれほどありません。

スパゲットーニのカルボナーラ。



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“スパゲットーニ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年9月号に載っています。
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ハチミツ メラータ

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ここ数日、初歩的なトラブルでPCの接続ができなくなって、人知れず、焦っていました。
バックアップって大切ですね。
今は復活したので、思いがけずの臨時休業も終わりです。
再開、再開。
ブログは、イタリア便りです。
北イタリアに住むsegnalibroさんぱどんな暮らしを教えてくれるんでしょうか。
それではお願いします。



山に移り住んで数週間たったころ、家の近くにこんな箱があるのに気が付きました。

apicoltura

養蜂?ミツバチのお家が色とりどりで、なんだか可愛い。
近所の水汲み場には、ミツバチ達がよく水を飲みに来ていました。ミツバチだけでなく、ここには野生の鹿も水を飲みに来るそうです。

api

このミツバチ達、誰がお世話をしているのかと思っていたら、ここに来て一番最初に声を掛けてくれた、お向いの家のパパでした。
半分趣味で、ミツバチ4家族を飼っているとのこと。朝、お仕事に行く前と夕方帰宅してからの1日2回、約20年お世話を続けているのだそうです。
箱がカラフルなのは、ミツバチ達が帰るお家を間違えないようにする為。1家族につき1年で約40kgのハチミツが採れるのだと教えてくれました。

日本にいた頃は、ハチミツなんてホットケーキに使うくらいしか思いつかず、頂いてもいつの間にか冷蔵庫の奥で固くなってしまっていたものですが、こちらに来て、特に冬はハチミツの必要性を感じるようになりました。
日本にあるようなステキなのど飴がここにはないので、風邪をひきかけた時には、ハチミツが活躍するのです。
必要だったら分けてくれるとのことで、早速少しいただきました。

melata

去年のハチミツはもっと明るい色をしていて、主にタンポポのハチミツだったけれど、今年は余り気温が上がらず、お花が少なかったので、このハチミツはMELATA(メラータ)なんだよ、って言うのですが、メラータって何?
分からない私に、ネットで検索したこんな画像を見せてくれました。(WIKI先生より、閲覧注意デス)

melata wiki

げげっ、花の蜜じゃない。けれど、ハチミツの濃い色からは想像できない、とても優しい味がします。
メラータ、日本語で甘露密、英語ではハニーデュー。植物の樹液を吸った虫が出す蜜から採れたハチミツです。
花から採れるハチミツに比べると、糖分控えめ。ミネラル分を多く含んでおり、別名、森のハチミツとも呼ばれているそうです。
先月、県内でハチミツ品評会が開かれたのですが、そこで彼のハチミツがメラータ部門で第2位になり、地元の新聞にも載ったとかで、とても喜んでいました。
ちなみに、1位は養蜂を本業として営んでいる隣村の方。そういえば今年の村祭りには、この養蜂家さんがキュートな標識が目立つお店を出していました。

bancarella



さて、先日ハチミツを頂きにいったら、台所の脇に砂糖の袋が積みあがっていました。
人間様用にハチミツを頂いちゃったので、冬の間ミツバチ達が困らないよう、砂糖をお水で溶いてあげるのだそうです。冬の間もお世話は必要なんですね。知りませんでした。
ここは、先週からスキー場がオープンして寒い日が続いていますが、今年はメラータのハチミツで冬を乗り切ります。


grazie segnalibroさん。 近所で蜂が蜂蜜作ってる暮らし、素敵ですね。 -------------------------------------------------------
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ペッペ・グイダシェフとパスティフィーチョ・デイ・カンピ

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今月は、ネットの初歩的なトラブルでブログの更新が遅れましたが、現在、13/14年9月号の「総合解説」のビジュアル解説中です。
12月になっちゃったけど、10月号の「総合解説」は現在バリバリ制作中です。
もう少しお待ちください。

それで、現在ブログではグラニャーノのスパゲットーニとパッケリの話をしていたのですが、このパスタ、グランシェフたちは大好きです。
今月の「総合解説」で取り上げた二人のシェフ、ペッペ・グイダとマルコ・マルティーニシェフも、まさにその一人、というかその二人。

ペッペ・グイダは、20年前にヴィーコ・エクエンセで一番美味しいロスティッチェリーアと評判の店をオープンさせて、カンバーニアの食通の間で大人気のグルメスポットに育て上げた人。
ペッペ・グイダのカンピ社のパスタ料理。
 ↓



彼の店のパスタは、グラニャーノのカンピ社のもの。

カンピはガンベロ・ロッソのパッケリベスト10で、ジェンティーレと共に同点1位になったパスタメーカー。

カンピ社の今年の小麦の収穫
 ↓


店のレストランの名前には尊敬するお母さんの名前を付けたんだって。
カンパーニアの人だなあ。
ちなみに店名はアンティカ・オステリーア・ノンナ・ローザ。
 ↓



次回はもう一人のシェフを紹介します。


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“ペッペ・グイダの夏の終わりのパスタ”のリチェッタの日本語訳は、
総合解説」13/14年9月号に載っています。
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マルコ・マルティーニシェフとアーリオ・オーリオ・ディ・マーレ

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今月の「総合解説」で取り上げたシェフ、二人目は、ローマの注目の若手シェフ。
この形容詞、今まで何回ぐらい訳したかなあ。
とにかくローマはトレンドを作り出す天才若手シェフの激戦区で、ほとんど毎月天才新人シェフが見出されています。

今回のシェフは、マルコ・マルティーニ氏。
リストランテ、スタツィオーネ・ディ・ポスタの元シェフです。

リストランテの激戦区だけあって、マルコシェフは、今ではもう新しい店、ローマのザ・コーナーに移っています。
彼の料理の特徴である、若者向けの、メニューも料金もクラシックな店、という個性はそのままです。

彼の肩書は、イタリアで最も若くして(24歳)ミシュランの星を獲得したシェフ、というもの。
翌年には2つ目の星を獲得しています。

間違いなく、レストラン激戦区ローマで、したたかに生き残って成功を収めつつあるシェフです。

トレンディーな香りがプンプンするブティックホテルのレストラン、ザ・コーナー。
 ↓



鶏肉のディアヴォロ風を披露するマルコシェフ。
 ↓


彼の経歴はとても興味深いですねー。
まず、ホテル学校には通わずに、大学で建築や内装を勉強しています。
一番身近だった料理人は母親。
これはすべてのイタリア人の共通項。

手本としてきたのはグランシェフたち。
貪欲なまでに様々な条件でのスタージュを経験し、さらに、グランシェフたちから熱い信頼を得て、経営にもかかわってきました。

今月の「総合解説」では、彼を有名にした料理、“アーリオ・オーリオ・ディ・マーレ”と“鶏肉とじゃがいものブロードの蒸しラビオリ”のリチェッタも訳しています。

特にアーリオ・オーリオ・ディ・マーレは、現在のイタリアのアルタ・クチーナのトレンドの最前線の料理かもしれません。
普通のアーリオ・オーリオではなく、パスタを粉にした貝で調味して、リゾッタータのテクニックで貝の汁を吸わせながら煮ています。




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“マルコ・マルティーニ”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」13/14年9月号に載っています。
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アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノとワイン

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パスタの話題が多い今月の「総合解説」。
ワインの記事も、『ガンベロ・ロッソ』の恒例、料理に合わせるワインのテイスティングで、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノに合わせるワインでした。




この記事、訳していて、とても楽しかったです。
というのも、この料理のことをイタリア人は本音でどう思っているのかが、よーくわかる記事だったんです。

詳しくは解説をお読みいただきたいのですが、まず、記事のタイトルの下に大きな文字で書かれた文章は、
「一番簡単なイタリア料理の一つ」
まあ、確かにその通り。
イタリア人が一番簡単なイタリア料理と言うのなら、きっとそうなんでしょう。
この言葉がすべてを物語っているかも。

続く記事の冒頭では
「イタリアの国民的人気のスパゲッティ」と持ち上げて置いて、
その理由が、
「夜中の2時の、貧乏でいつも冷蔵庫は空っぽのおなかを空かせた学生にとって一番確かなもの」
と、上げてんのか下げてんのかよくわからないスタンス。

その後も、
「あらゆる時間帯に、あらゆる世代から愛されているパスタ」
「イタリア人なら目を閉じていても作れる料理」

と、絶賛する横から、上から目線のちょっとからかい半分。
イタリア人ともあろうものが、この初心者向きパスタを真剣に語るなんて笑っちゃう、と、どうやらてれ隠しもちょっとある、と見ました。

イタリア人なら目を閉じていても作れる、ですよー。

しかも、今回のテイスティングは、夜食用として定番のリチェッタのアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノに組み合わせるという、なんとも凝った縛りつき。

イタリア人のイタリア人たるところは、こんな超簡単なパスタに、わざわざ縛りを作って、その条件に最適な食材を超真剣に考えて、さらにパスタは硬質小麦粉のもの、オイルはガルダ湖産のコミンチョーリ社の種抜きレッチ―ノのエクストラヴェルジネ、唐辛子は種を取った生唐辛子、にんにくはみじん切りと、どこの3つ星シェフの一品かと思うくらい、食材を厳選。

だから、最適の飲み物を選ぶなんてなったら、もう真剣も真剣。
素人にはちょっとついていけないレベルでした。

映えある1位に選ばれたのは、カンティーナ・プロドゥットーリ・コルモンズのコッリオ・ソーヴィニヨン。

面白いのは3位にビールが選ばれていること。
ビッラ・ペルージャ。
 ↓



2位に選ばれたのはプラネータのシャルドネ。
シチリアの有名カンティーナ、プラネータ。
 ↓



最近入荷したプラネータの本はシチリア料理の本としてもなかなか興味高い内容でした。

もう紹介したと思ったらまだでした。
では次回に早速。

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“アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノとワイン”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年9月号に載せています。
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メスチュア

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もう12月になっちゃいましたが、「総合解説」13/14年10月号、発売しました。
最初の記事は地方料理。

“メスチュア”です。

ご存知ですか ?




イタリアの地方料理によくある、質素で素朴で、ボリューム満点の「豆のズッパ」です。

レストランの1品としては、見た目があまりにも地味ですが、豆のズッパというのは、一度はまると、その奥深さに魅了されます。

労働者の貧しい食事の代名詞のような豆のズッパですが、誕生したいきさつを知ると、より愛着が増します。

メスチュアは、トスカーナとリグーリアの州境の地方の料理で、トスカーナ料理とみなすか、リグーリア料理とみなすか、意見が分かれるところのようです。

今回の記事は『ア・ターヴォラ』誌の記事ですが、それによると、19世紀後半にラ・スペツィアで兵器工場が造られていた時に生まれた料理がルーツだというので、上の動画も、ラ・スペツィア版メスチュアのものを選びました。

記事によると、この工場建設の際に、一番きつい仕事を行っていた囚人たちのために作られた料理そうです。

それが、豆や小麦を栽培する農家の主婦の工夫が詰まった料理として生まれ変わったのが、この
メスチュア。

材料の豆は、チンクエテッレから運ばれてきた穀物を港の倉庫に運んだ時にこぼれ落ちた豆。

でも当時、港の労働者が落ちた穀物を拾うことは禁じられていたので、農家のおかみさんたちが、拾い集めていたそうです。

どんだけ生きるのが苦しい時代だったんでしょうねえ。

ヴィットリオ・デ・シーカが映画にしたら、ネオレアリズモの傑作が生まれて、カンヌでグランプリ獲るんじゃないかと期待しそうなシチュエーションですよ。

ネオレアリズモと言ったら、デ・シーカ監督の『自転車泥棒』。
 ↓


19世紀という時代背景は、メスチュアと一緒。
農家のおかみさんたちが落ちた豆を拾うのは許していたイタリア人の心意気も、似てるなあ。

熱くて濃厚なズッパの季節の始まりにふさわしい1品でした。


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“メスチュア”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年10月号に載っています。
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プラネタの料理本、『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネータ』

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今日は最近入荷の本の中から、『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネータ』のご紹介です。

タイトルが語る通り、これはシチリア料理の本です。
そして副題にカーザ・プラネータの料理、とある通り、シチリアを代表するワイナリーの一つ、プラネタ(プラネータ)の経営者一族の料理です。
スペイン出身の家系で、ワイン造りは18代に渡る家業です。
カンティーナは1995年の創業以来、シチリアの新世代のワインの造り手として、めきめき頭角を現し、現在はシチリア各地の6か所の拠点でワインを造っています。



プラネタ一族は貴族の家系なので、家庭料理と言っても、洗練された貴族の料理です。
でも、ストリートフードで有名なシチリアだけあって、貴族の料理も庶民の料理も根っこは同じ。
女性たちの手によって受け継がれてきた母親の味。




世界的に認められた味を作り出すワイナリーを経営する一族の、洗練された味覚や感性を生み出したのは、一族の女性たち。
 ↓


さらに、フォレステリアというホテルレストランも経営して、世界中の食通にその料理を提供しています。
 ↓


外国人に大人気の料理教室もやっています。
 ↓



どうやら外国のお客には、アランチーニやブジアーティが大人気のよう。
この本の一番最初の料理もアランチーニです。

ここでちょっとお知らせ。
「総合解説」では、イタリアの料理雑誌の記事を20年以上に渡って訳してきましたが、さすがにこれだけ続くとちょっとマンネリ化するので、来年(2015年1月号から)は、お勧めの料理書のレシピも少しずつ訳してみることにしました。
この『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネータ』のリチェッタも訳す予定です。
ただし、写真は載せません。
ちなみにプラネタの料理の写真はどれも見ごたえがありますよー。
お勧めです。


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『クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ』

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最近入荷した本の紹介、第2弾。
今日は 『クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ』です。

代表的なイタリア料理を1冊の本に集めて、リチェッタや食材の解説もしながら、豊富な写真で紹介する本、というのが、なぜかイタリアにはあまりありません。

この本は、イギリス人でイタリア料理の人気本を何冊も出版している人が著者で、まさに、外国人が知りたいイタリア料理の姿が、よーくわかる1冊です。

基本のイタリア料理の情報を知りたい時、何かと便利で、写真の見ごたえもあります。

この本は、イギリス人の本にもかかわらず、2010年にイタリアで出版されて以来、イタリアで、イタリア人にもよく売れているロンクセラー本です。

それもそのはず、この本は、イギリスで過去に出版された代表的なイタリア料理の本のいいところを多数参照していて、かつ、適度に本格的。

イタリア人向けのイタリア料理本は、時として、マニアックすぎて外国人にはついていけない、ということがあります。
さらに、イタリアの出版業界の不安定さからか、なかなか重版されないので、人気の本はすぐに売り切れて、次に手に入るのはいつだかまったく不明というのが普通なのです。

ところがこの本は、イギリスとイタリアのいいとこどりした本です。

イギリス人は、地中海の食文化に昔から強い憧れを抱いていて、積極的に研究して取り入れてきました。
例えばマルサラというワインはイギリス人が見出して、シチリアで作って大量にイギリスに輸入してきました。
マルサラを有名にしたのはイギリス人というのは有名な話。

イギリス人のイタリア好き、で私が思い出すのが、映画『眺めのいい部屋』(1986)。

E.M.フォスターの小説の映画化です。
1987年アカデミー賞3部門受賞、英国アカデミー賞5部門受賞。
 ↓




この映画は20世紀初めのフィレンツェが舞台でも、マギー・スミスが出ているので、ドラマ『ダウントン・アビー』の一場面と言っても納得しそう。

17~18世紀には、裕福なイギリス人は、イタリアやフランスに長期間卒業旅行に行くのが流行ったそうですが、イタリアという国は、イギリス人に取ってはとてもロマンチックな場所だったのかもしれません。
イタリアに旅行に行く現代の日本人にだって、なんだか理解できそうじゃないですか。

イギリス人のイタリア料理本、決してバカにできないですよ。
お勧めです。


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フィコディンディア(ウチワサボテン)

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今日は現在販売中の「総合解説」から、“フィコディンディア”のビジュアル解説です。

Fico d'india


シチリアの東側、エトナ山のある側を初めて訪れるという人は、おそらく、道端やスーパー、はてはホテルやレストランの朝食やランチなどで、とげとげで赤やオレンジ色をした、いちじくに形のよく似たこの物体と初対面をすることになります。

スーパーで、山盛りになって売られているのを見れば、これが食べ物である、ということは何となく想像できます。

なにやら果実のような姿だし、ちょうど手のひらに収まって、形も可愛いなあ、などと撫でまわした後に、なんだか手がチクチクする、ということに気が付きます。

Il frutto principe di Sicilia (The fruit prince of Sicily)

これが私と食用サボテンの初めての出会いでした。
サボテンを食べるという習慣は、日本ではまったく想像もできないので、初対面のエピソードは、皆さん、きっと相当面白いはず。

イタリア料理との付き合いが浅い人ほど、インパクトの大きな体験ができますよー。
確かにぶつぶつと棘がたくさんあるのは分かりますが、この実は目に見えないように細かい棘でびっっしり覆われているのです。
第一印象ほど可愛いもんじゃないんですね。

この実の正体は、ウチワサボテンの実です。
サボテンは、シチリアを代表する特産物。
れっきとしたシチリア料理の食材。
ちなみにシチリア以外でも、南イタリアなら各地でウチワサボテンが育ちます。

という訳で、本当は何の予備知識もなしに出会うことをお勧めするのですが、ちょっとでも熟したのを選ぼうと素手でなでまわすと、その後半日ぐらい、手がチクチクしますよ、てことぐらいは警告しとくか。
さらに、赤、オレンジ、白などの色がありますが、赤が甘いという訳ではなく、白の方が甘い場合もあります。



ちなみに私は、目に見えない棘が掌中に刺るという体験をした後、地元の人たちにサボテンの棘やたくさんある種とどう付き合ってるか聞いたことがあります。
すると、子供のころからサボテンを食べてきたご老人たちは、気にならないから適当に、種は飲み込んじゃうという意見がほとんど。

上の動画は、サボテンの実の食べ方ですが、サボテンは、paleと呼ばれるうちわの部分も食べます。
今月の「総合解説」はpaleのリチェッタまで載せています。
さらに、フィコディンディアのリゾットやクロスタータのリチェッタもあります。
なかなか美味しそうです。

フィコディンディアの収穫。
 ↓


古代メキシコからウチワサボテンが伝わった地と言われるサン・コーノの収穫の最盛期は10月半ば。

北イタリアのシェフが教えるコンポスタのリチェッタ。
 ↓




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“サン・コーノのフィコディンディア”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年10月号に載っています。
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ティラミスの元祖問題

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年内最後の今日は、イタリア料理の大きな謎の話。
詳しくは今月の「総合解説」に載せましたが・・・。

ティラミスは誰が考え出して誰が名付けたのか、問題。

Tiramisù


日本でブームになったのは1990年代だそうで、今どきの人たちは、生まれた時からティラミスが身近にあったんだなあ。

バブルの頃、ティラミスが初めて日本に伝わった時は、ファミレスを中心に大したブームだったんですよ。

でも、ブームになったのは日本だけじゃないんです。
世界的な現象でした。
アメリカでは日本より約10年前にブームが起きています。

だとしても、ティラミスが世界的にブームになったのは100年や200年前ではなく、ほんの30~40年前のこと。
なのに、このドルチェと個性的な名前の名付け親は誰か、いまだに謎なんです。

私も、何度かこのブログで取り上げたことがあります。
こちら

私はトレヴィーゾのレストラン・レ・ベッケリエ説を比較的信じていたのですが、その後、余りにも多くの人や店が、自分が元祖だと訴え出ているのを見聞きして、うんざりしました。
1人以外はすべて嘘つきだなんて、もう、どうでもいいよ、という気分です。

でも、そんな気分に追い打ちをかけるように、元祖論争に新手が加わったという記事があったので、訳してみました。

ティラミスのリチェッタはネットで検索すると、400万もヒットするのだそうですよ。
マク〇ナルドもリチェッタを発表しているんだそうで。
この記事によると、ヴェネト州知事も元祖争いに参加したみたいで、もう泥沼ですね。

みなさんも、シンプルで簡単で美味しいドルチェを考えだしたら、特許出願や商標登録は早めにしといたほうがいいですよ。

自分たちが元祖だと主張するレ・ベッケリエの関係者。
 ↓


確かにネットには、これがオリジナルのレシピです、という情報が溢れているので、逆に堂々とオリジナルで勝負してくるティラミスの方が目を引きます。




あなたは今年は何回ティラミスを食べましたか?
それでは、よいお年を。


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“ティラミス”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年10月号に載っています。
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バローロを旅する

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2017年も無事に始まりました。
今年もよろしくお願いします。
今年はレンズ豆食べてないので、小金が貯まりますようにという祈願をしていないのが、ちょっと残念。

今年は何の話題から始めようかなあ。
久しぶりにワインなんてどうでしょう。

現在販売中の「総合解説」で取り上げているイタリアグルメ旅の目的地はバローロ。
イタリアで最も名門と言われるワインですので、新年の話題にふさわしそう。

Barolo

イタリアワインに興味がある人が旅行先に選ぶなら、トスカーナのキアンティかピエモンテのバローロあたりが人気ありそう。
上の写真のバローロ城に行ったことのある人も大勢いるのでは。

それでは記事のヴィジュアル解説を始めます。

記事には、バローロを造ってバローロの文化を確立させたのは、ファッレッティ女侯爵、ジュリア・コルベルト・ファッレッティとあります。
こんな人。
 ↓


ファッレッティ家はアルバ出身の有力な金融業者でした。
なるほど、お金持ってたんですねえ。
ジュリアの肖像画もたくさん残っています。

ファッレッティ家が遺産を処分して土地を手に入れ、ぶどうの栽培とワイン造りを始めたのが、バローロワインの始まり。
あの城をバローロ城と名付けたのがバローロの侯爵になったファッレッティ家。

女侯爵は、後のイタリア王家サヴォイア家ともお付き合いがあって、カルロ・アルベルト王とバローロのエピソードなど、「王のワイン」と呼ばれる根拠となる話にも事欠きません。

この王様がバローロが好きだったというエピソードは解説をお読みください。

ただ、カルロ・アルベルト王はサヴォイア家の分家の家系。
イタリア王国の前身、サルデーニャ王国の王様でイタリアの王様ではなかったんですねえ。
道理で、あまり聞いたことないなあ、何やった人だっけ・・・、という印象。
実際、その治世はあまりぱっとせず、結局晩年はポルトガルに亡命しているんですねえ。

カルロ・アルベルト
 ↓


なんてこと言ったら、トリノの人に怒られそうです。
1848年に憲法を発布して議会制を導入するなどした自由主義思想を持った王様。
でも、時代は1848年革命の真っ只中。
この年はヨーロッパ中で革命がおこりました。
イタリアも例外ではなく、むしろイタリア統一運動へとつながる激熱の革命の日々へと突入していきました。
そんな革命の気運の中で起きた第一次イタリア独立戦争でイタリアを背負って戦っていたのが(主な敵はオーストリア)、カルロ・アルベルト王だったんですね。
結局は負けるんですが、とにかく、この王様がバローロを気に入ったという逸話から、王様のワインというキャッチコピーが生まれたようです。

イタリア統一運動の重要人物だったんですねー。
大変失礼いたしました。

最後に「総合解説」でバローロのお勧めホテル・レストランとして紹介している店の動画。

ロカンダ・ネル・ボルゴ・アンティコ




リストランテ・ボヴィオ







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ストトラーダ・デル・ヴィーノの旅“バローロ”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年10月号に載っています。
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コウイカのジミーノ

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今日はリグーリア料理の話。
総合解説」10月号、2つ目の地方料理の話。

コウイカのジミーノです。

ほとんど知られていない料理ですよね。
だいたい、日本ではコウイカの料理が一般的って話、聞かないし。

イタリア料理をかじった人なら、コウイカはイタリア語ではセッピアで、セピア色(黒褐色)の語源でもあり、イカ墨のパスタなどに使われるイカ墨はコウイカの墨のこと、ということぐらいは知ってますよね。

そこにさらに、リグーリアではコウイカはサバやイワシと同じ大衆魚の一つ、という情報を加えてください。

Cuttle Fish, Sydney Aquarium


そもそも家庭料理がルーツのイタリア料理には、ゴージャスで高価な食材を使うものはほとんどなく、むしろ、節約上手な主婦がやりくりして作る料理が中心。

この料理はトスカーナ料理としても知られていますが、今回は珍しくマイナーなリグーリア目線のリチェッタです。

まず、リグーリア料理の特徴は、
「質素だがとても独創的」
「海と山に挟まれた狭いやせた土地を有効利用する才能が発揮された料理」
「作物は野菜が主体で、穀物と香草も少々あり、肉はほとんどなく、あったとしても家禽肉」
「しかし、海からは魚が大量に獲れた。
特にサバ、イワシ、カタクチイワシ、イイダコ、コウイカといった大衆魚が中心だった」

どうですか、リグーリア料理のイメージ、湧いてきましたか?
このたくさん捕れるコウイカとビエトラを組み合わせた料理という訳です。
「ジミーノはアラビア語のsaminが語源で、魚がベースの料理にかける野菜のソースのことを意味した」
「コウイカ、バッカラなどの魚にビエトラやほうれん草を加えて煮る料理」
コウイカはビエトラと相性が良いようです。

たくさんあるバリエーションの一つとして、今回は乾燥ポルチーニ入り。

まず、香味野菜のみじん切りをソッフリットにし、戻したポルチーニ、イカ、ワイン、トマト、香草を加えて煮ます。
さらに硬い茎を取り除いたビエトラの葉を加えて煮ます。
これをガーリックトーストの上にかけてサーブします。

リグーリアのコウイカの旬は春、ポルチーニは秋には生を使う、ビエトラの代用野菜はカタローニャやチーメ・ディ・ラパ(ブロッコリーレイブ)、イタリアで食べる時はこのくらいの予備知識があったらばっちりです。
仕上げに、リグーリア料理のエンブレム的食材、松の実を加えれば、トスカーナ料理との区別がより明確になりそう。

最後にコウイカではなくヤリイカのイン・ジミーノの動画をどうぞ。








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“コウイカのジミーノ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年10月号に載っています。
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ラグー

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寒いですねー。
総合解説」13/14年11月号発売しました。
最初に取り上げるのは、ラグーです。

イタリア料理のラグーは ragù。
フランス料理のラグーは ragout。

ragoutは小さく刻んだ材料の煮込み料理。
それがragùになると、肉、香味野菜、ワイン、トマトがベースの煮込んだソース。
イメージ的には、前者がシチューで後者がミートソース。

アメリカ系イタリア料理の影響で、ミートソースのイメージのラグーは、ラグー・ボロニェーゼのこと。
「総合解説」には5種類の地方のラグーを載せましたが、挽肉を使っているのは2種類でした。

「総合解説」によると、ragùは、歴史がまだ200年しかない若い料理。
その歴史をちょっと遡ってみると、その前身は、ragout、つまり煮込み料理(stufato)です。

煮込み料理と言うのは、硬い肉を食べやすくするために考え出された調理方法。
かなり昔からあります。
そこにトマトが加わって、ラグーと呼ばれるようになりました。

イタリアのラグーには2つの大きなグループがあります。
一つはボロニェーゼ、またはエミリアーノ。
もう一つはナポレターノ、または南伊風。
前者は挽肉を使い、後者は塊肉を使います。後者の肉はセコンドとして食べます。

ラグーをかけるパスタは、中部イタリアでは手打ちのタリアテッレ、ラザーニャ、グラミーニャ、ガルガネッリ、トルテッリーニなど。
一方面白いことに、ナポリでは細くて長い麺にラグーをかけるのは冒涜とみなされます。
ラグーには、マッケローニ、ペンネ、折ったジーティなどの硬質小麦の太くて短い麺。

こうしてみると、スパゲッティにミートソースをかける習慣は、イタリアにはない、ということがよくわかります。

そして、ナポリ人がどれほどラグーにこだわっているかがよくわかるものとしていつも引き合いに出させるのが、エドゥアルド・デ・フィリッポ監督でソフィア・ローレン主演の、親子3世代の愛情物語、1959年のコメディー映画『土曜、日曜、月曜』のラグーの喧嘩のシーン。
 ↓



言ってることがなんとなくわかる不思議なシーン。
ソフィァ・ローレンておばちゃん同士の喧嘩しててもキレイ。


ジーティのラグー・ナポレターナ
 ↓



最後に、世界的に評価されているモデナのラ・フランチェスカーナのシェフ、マッシモ・ボットゥーラ氏の名言を。

ラグーの正しいリチェッタなど存在しない。
正しい食材と地域性があるだけだ。
クラシックな伝統料理なので、オリジナルな創作は成功したためしがない。
美味しいラグーを作る秘訣は、最高の肉を使う。
トマトは少し、マンテカーレする時のパルミジャーノはたっぷり、それだけだ。




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“ラグー”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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