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カッチュッコ・リヴォルネーゼ

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今日はトスカーナを代表する魚のスープ、カッチュッコの話。
『ア・ターヴォラ』誌の記事です。

Charleston Muse Cacciucco 4955

詳しくは、日本語に訳した「総合解説」をご覧いただきたいのですが、イタリア人にとっても、カッチュッコcacciuccoというのは、少々発音しにくい名前なんですね。
よく言われていることですが、Cが5つもあるからです。

5つもあると、1個ぐらい省略してもいいかも、と思いがちで、『サーレ・エ・ペペ』誌によると、実際、トスカーナではcaciuccoカチュッコと呼ぶそうです。
ところが、リヴォルノでは、そう行きません。
Cはきっちり5個です。

それにしても、この料理の語源がトルコ語で小さいという意味のküçük/クチュクだというのは、興味深いですね。

なんで小さいかというと、この料理に使う魚が、売れ残りの小魚の雑魚ばかりだということをからかって、こう呼んだのです。
なぜトルコ語かというと、この料理が誕生した16世紀初めのリヴォルノは、メディチ家の元で栄える活気ある港で、地中海各地から漁船が集まってきていて、なかでも トルコの漁船は数が多かったそうです。

さらに、最初は船の上で作られていた漁師料理が、漁師のおかみさんたちの手によって家庭料理になった後も、漁師ならではの豪快さは失われなかった、という説も、目の付け所が面白いですね。
確かに、魚を赤ワインとトマトで煮る、という発想は、海の男らしい。

さらに、リヴォルノ風カッチュッコは、リヴォルノ人気質とそっくりだそうで、まじめで率直で頑固なんだそうですよ。




リヴォルノ人て、昭和のお父さんみたいなのかなあ。


2000年のリヴォルノの港はこんなに素敵になってます。





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“カッチュッコ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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バーカリツアー

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今日は新入荷の本、『ラ・クチーナ・ヴェネタ・ディ・マーレ』の話です。


この本は、ニュートンコンプトンという出版社の昔から人気の地方料理シリーズですが、表紙のデザインを一新してモダンになったら、全然別のシリーズのように見えて、みんな気が付いていない、という残念なシリーズなんです。

表紙だけでなく、写真も加わりました。

地方料理をより深く知りたい、という人にはぴったりのシリーズです。

今回入荷したのはヴェネトの魚料理編。

ヴェネトと言えば、まずは、州都ヴェネチア。
世界中の人が憧れる観光地で、ヴェネチア共和国の首都としてアドリア海の女王と呼ばれた水の都。

アドリア海の女王とか、アドリア海の真珠と呼ばれて、ゴンドラが行きかう街で、田舎風の山の幸を食べたいとはあまり思いませんよね。
洗練された、海鮮料理を食べたいなあ。
それに、ヴェネチアにはグラスワイン、オンブラを飲みながらチケーティというつまみを食べるというスタイルのオステリーア、バーカロをはしごする、という、酒飲みで健啖家で、人見知りしない社交的な人にはたまらないシステムがあります。




代表的なチッケッティ、バッカラ・マンテカート。




私のヴェネチア料理のイメージなんて、せいぜいその程度でしたが、この本の料理は、私のそんな期待を裏切らなかったですよ。

まず、前菜は、Antipasti(cichéti)という表記。
ホタテ貝だけで9品あります。
さらに、ホタテ貝のヴェネチア風や、ビーゴリのヴェネチア風など、~のヴェネチア風と言う料理もたくさん収められています。

個人的は、バーカリツアーは大好きなんですが、地元の人で満員の店内で、ワインと料理を注文してカウンターに陣取るというのが、精神的に大変なんですねー。
お客が少ないレストランでのんびりシャコのマリネでも食べてるほうが落ち着けます。

でも、客引きが溢れるヴェネチアのレストランで、空いているからという理由で飛び込んだら、ろくな結果にならないのは目に見えています。
なので、事前の情報収集は必須です。
「総合解説」でも、お勧めバーカロの情報は、あったらなるべく翻訳するようにしています。
最近では、13/14年3月号に載せています。


おまけの動画。
バーカリツアーのショートフィルム。




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シャッカ

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先月の「総合解説」のグルメ紀行の1つは、マルサラからシャッカへの旅でした。

カステルヴェラーノのパーネ・ネロ”をこのブログで紹介した時、グラニータとイワシのコラトゥーラが名物の町、シャッカの話をもちらっとしました。

先月号の記事は、マルサラから出発してセリヌンテの神殿を見て、プラネタで昼食を取ってワインを飲んで、カステルヴェトラーノのパンを食べて、シャッカでグラニータを食べる、というかなり完璧なグルメ旅のプランでしたが、今月の「総合解説」には、最後の町、シャッカの有名レストランテのリチェッタを載せています。
そこで、改めてシャッカの紹介です。

シャッカはシチリアの東側にあるアグリジェント県の町。
漁業と観光の町です。
シチリアで一番歴史があるカーニバルと陶器も名物です。



なんてド派手で楽しそうなカーニバル。

シャッカの魚市場。




シャッカの陶器。



乾燥させて一度焼いてから模様を描いてもう一度焼きます。
鮮やかな手書きのデザインが特徴。
こんなデザインの壺に大粒のオリーブ入れたら美味しそう。

肝心のレストランですが、総合解説に載せた店のwebページのアドレスに行ってみてください。
イメージに反する、海の目の前のゴージャスなリストランテで、料理もめちゃくちゃ美味しそうですよ。
ホテルレストランなんですね。

ガンベロ・ロッソのマリネは圧巻だなあ。
リチェッタによると、4人分でエビは800g。
ワインはプラネタ押しのようですね。

下の動画はラ・ヴェッキア・コンツァというシャッカの市場の魚を使った料理を出す店。




シャッカ行きたいなあ。


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シャッカのレストランを紹介した“ペスカート・デル・ジョルノ”の記事は、「総合解説」13/14年7月号に載っています。
グルメガイド、“マルサラからシャッカへの旅”の記事は「総合解説」13/14年6月号に載っています。
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イタリアのピッツァイオーロの現状

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今日は2013年にガンベロ・ロッソがピッツェリアのガイド本『ピッツェリエ・ディ・イタリア』を初めて発売したことを受けての『ガンベロ・ロッソ』誌の特集記事から。

ピッツァのガイドブックを出した裏には、どんな思いがあったのかが分かる記事でした。

詳細は「総合解説」をご覧いただくとして、ざっとまとめると、こんな内容です。

Pizzaiolo in azione

「ピッツァはとても人気がある食べ物で、イタリア料理を象徴する食べ物でもある。
古くて庶民的な食べ物で、失業者が増えた不況の時代でも売り上げを伸ばしてきた。

最近の料理人は、マスメディアによってロックスターやアーティストのようなシェフ像に作り上げられている。
いわゆるセレブリティーシェフだ。

最近の調査によると、イタリアではピッツァイオーロは6000人不足しているが、イタリアの若者はかまどの前で働きたがらない。
代わりに働いているのは優秀で熱心なエジプト人だ。

現在、イタリアの飲食業界においてピッツァイオーロには何の権威づけも存在しない。
ホテル学校でも、ピッツァイオーロのための授業はない。
ピッツァはイタリアのシンボルのような料理だというのに。
最近になって、ナポリ・ピッツァイオーリ協会は政府にこの分野の功労者の名簿作りに取り組むように働きかけている。

ピッツァは職人の世界で、歴史と経験によって作られてきた。
ナポリのピッツァという一大派閥は誰もが認めるピッツァの母だ。
そしてもう一つ、優れた職人たちが生み出すピッツァがある。
彼らは小麦粉を選別し、気候と生地の関係を研究し、最適なフィオル・ディ・ラッテを選ぶ目を持ち、基本には忠実でありながら、ピッツァをアルタ・クチーナにまで高めることができる。

トッピングをアルタ・クチーナに高めたのは最近のピッツァの革命だった。
そのパイオニアは、フランコ・ペペとガブリエレ・ボンチという二人の巨匠だ。

前者はナポリ・ピッツァ、後者は切り売りピッツァと、その活躍する舞台は違ったが、小麦畑からテーブルにという姿勢と目覚ましい成果は2つの世界を結びつけた。

ガブリエレ・ボンチ氏はこのブログでも何度か紹介しているので、今回はフランコ・ぺぺさんに注目。
一日中粉や酵母のことを研究して、カゼルタ大学の農学部と共同で地元品種の小麦を再生して、すべて地元産の食材でピッツァを作ったという、いわゆるピッツァオタク。

フランコ・ペペのマルゲリータ
 ↓


長い伝統と偉大な先人たちがいる業界で、革新的なことをするというのは、すごいことですね。

カゼルタのカイアッツォにある彼の店、ペペ・イン・グラニは大変なことに。




世界でナンバーワンのピッツァに選ばれることも。




優秀な職人のピッツァイオーロはまだまだいます。
この話、次回に続きます。


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“ピッツァ”と“ピッツァィオーロ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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天才ピッツァイオーロたち

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『ガンベロ・ロッソ』誌のピッツァイオーリ特集の続きです。
イタリアのピッツァ業界は、絶好調のように見えて、その裏で、若手の人材不足と言う悩みも抱えていたんですね。

今のイタリアのピッツァには、ビッツァの母、ナポリ・ピッツァという一大派閥と、食材と五感を徹底的に追及する天才職人によるアルタ・クチーナという2つの大きな流れがあるそうです。

後者の代表は、フランコ・ペペ、ガブリエレ・ボンチという巨匠たち。

さらに、ガンベロ・ロッソが選んだのは、
でんぷんの加水分解のシステムから水と挽割小麦の生地を発酵させることに成功したベニアミーノ・ビラーリ。




水牛のモッツァレッラのホエイを生地に使ったピエトロ・パリージ。




もう、何の話なんだか、全然ついていけないですねー。

そして、ガンベロ・ロッソ誌の表紙を飾っているのは、ナポリピッツァの伝統と未来を結ぶ若手の旗手、チーロ・サルヴォ。




上の二人の天才たちは、どこまでも遠くに行ってしまっているようですが、ナポリの天才は、もっと身近な人のようで、親しみが持てるなあ。




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“ピッツァ”と“ピッツァィオーロ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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ピッツァ・ネラ

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イタリアの大きな地震のニュースは、数年おきに伝わってきますが、毎回、瓦礫と化した石の古い建物を見ると、心が痛みます。

今回の地震で被害が大きかった町の一つ、アマトリーチェは、イタリア料理に携わる人なら、イタリアの家庭で一番愛されるパスタソースの発祥の地として、誰もが思い浮かべるはず。
今月の総合解説も、スパゲッティ・アッラ・アマトリチャーナの話題から始めたので、記事で紹介したお勧めレストランは無事か、気になるところです。

さて、今日の話題は、このところ続いたビッツァの話の締めくくり。
黒いピッツァです。




モリーニ・スピガドーロ社はウンブリアの製粉会社。
プロ用や家庭用のカラフルな粉が最近の新製品。
モットーは昔の味の新しい色。



モリーニ・スピガトーロ社のwebページはこちら
ちなみに、パスタのペトリーニ・スピガトーロ社のwebページはこちら

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黒いピッツァのリチェッタを含む“ルーカ・アントヌッチ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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アマトリーチェの地震

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今日は久しぶりのイタリア便りです。
segnalibroさんは引っ越し直後で慌ただしい中、状況を知りたいという無理なリクエストに応えて、今回の地震のことを伝えてくれました。
それではお願いします。


こんにちは。ミラノ近郊からヴェネト州の山奥にお引越しを敢行したsegnalibroです。

日本でも大きく報道されているように、8月24日未明に起きたイタリア中部地震。
アマトリーチェの町では、週末に町の名物であるスパゲッティ アマトリチャーナ祭りが控えていたこともあり、通常より多くの人が滞在していたそうです。
そのため、290人以上の方が亡くなり、町は壊滅的なダメージを受けました。
私がいるところは震源から600kmほど離れているので、全く揺れはありませんでしたが、TV等では現地の様子が絶え間なく放送されており、心が痛みます。

アマトリチャーナを食べてアマトリーチェに義援金を送ろうという運動が、日本のイタリア料理店でも広がっていると聞きました。
①②

既にご存知の方も多いと思いますが、イタリア赤十字社では海外からの義援金も受付けており、ペイパルでの決済が可能です。

イタリアの携帯電話からは、災害時に大活躍する政府組織Protezione Civile(災害防災救助隊)を通じて、SMSで€2の募金が可能です。

③

山に越して来て最初にしなければならなかったことは、家族全員の電話番号を市役所に登録することでした。
これは、ここに住む者に義務付けられているそうで、雪崩や土砂崩れなどの前兆があった場合には、州のProtezione CivileからSMSが一斉送信されます。
実際、ほぼ毎週のようにSMSを受信していますが、備えあれば憂いなし。
幹線道路が土砂崩れで毎月のように封鎖されても、関係機関の活躍のおかげで、いつも数時間で元通り。とっても頼りになります。

アマトリーチェの市役所も、義援金の受付口座を開設しています。

④
⑤

お借りした上記2枚の写真は、アマトリーチェの小学校です。
2009年、ここから50km程しか離れていないラクイラで大きな地震が起きました。
この小学校はその3年後、ラッツィオ州が50万ユーロ、市が10万ユーロを負担して2012年9月に完成したものですが、今回の地震で壊滅的に崩れてしまい、耐震建築はどうなっているのかと論争の的になっています。

過去に大きな地震を経験したイタリアの町が、現在どうなっているのかというTVの特集番組を見ましたが、1980年11月マグニチュード6.9の地震に見舞われたカンパニア州イルピニア地方の人々が、35年以上経っても町の復興は終わっていない、と政治家に訴えていたりして、さすがイタリア、を実感します。

天災の事例ではありませんが、第二次世界大戦でアメリカ軍の空爆により町を徹底的に破壊されたフランクフルトの人々が、真っ先に復興を志したのが、彼らの心のよりどころであるゲーテハウスだった、というお話を聞いたことがあります。 使える瓦礫は出来るだけ使い、出来るだけ元あった姿になるよう、再建したそうです。 名物パスタ、アマトリチャーナで広く名を知られたアマトリーチェの町が、イタリアにおける地震からの復興モデルになることを心から祈って、私もわずかながら募金をしようと思います。


segnalibroさん、ありがとう。
ピッツァ・アマトリチャーナは盲点でしたよー。
ピッツァ業界も協力できますね。
イタリアの防災システムも、意外としっかりしているんですね。

アマトリチャーナは、アマトリーチェの農家のおかみさんが、町まで行商に出ながら広めたという歴史があります。

震災直後は、もう終わりだというセンチメンタルな感情ばかりが伝わってきましたが、持ち前の行動力と粘り強さ、そして世界中の人に愛されるアマトリチャーナのパスタやピッツァがあるんだから、あきらめないでほしいなあ。

日本のレストランでも、それぞれができる方法で、何らかの支援ができたら素晴らしいですね。


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キッチン付きボッテガ

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今日は「総合解説」の記事、“食品セレクトショップの料理”で紹介した、キッチン付きボッテガのビジュアル解説です。

キッチン付きボッテガとは、イートイン用のテーブルを併設したり、店内にビストロをオープンさせた食料品店。
地元の特別な食材を買いながら店の料理で味や調理方法、他の食材との組み合わせを知ることができて、料理が気に入ったら食材を店で買って、家で作ることもできる。
高級食材をカジュアルに提供し、買い物がてら夕食に出かけるという現代のライフスタイルにもマッチした店。

まず1軒目は、ヴィチェンツァのアルツィニャーノで4代続く肉屋さんに併設されたレストラン。
肉屋さんだけあって、自慢の食材は独自のルートで買い付けるリムーザン牛。




次は、ヴェネトで100年前からアルティジャナーレのチーズを作っている店。
チーズバーとレストラン併設。

ガイド付きのチーズのデグスタツィオーネというコースがあります。



ジェラートマシンの大手、カルピジャーニ社との共同開発の新製品、チーズマスター。
ミルクからフレッシュチーズができちゃう機械。




この他に、ナポリの家族経営の魚屋をミラノに開いてカンパーニアの食材と組み合わせた魚料理を出す店や、フェラーラで、エミリア地方のスペチャリタを販売しながら自家製パスタやサラミなどを出す店。シチリアの星付きシェフが開いた、レストランのソースやパスティッチェリーアなどテイクアウト料理を売る店など、どんな業種でも、アイデア次第でキッチン付きポッテーガができるもんですね。




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“食品セレクトショップの料理”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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アナカプリとラビオリ・カプレージ

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今日は「総合解説」のグルメガイドから、アナカプリの話です。

カプリ島の主な居住地区は、カプリ地区とアナカプリ地区、というのは、この国際的な高級リゾート地の基本情報。
他に、マリーナ・グランデやマリーナ・ピッコラ地区などがあります。



スノッブなブランド天国のカプリと、対照的な、大自然と静寂のアナカプリ。
訪れた人はおそらく誰もが、この島に別荘があったら夢のようだなあ、と思うはず。
この島の観光の目玉、青の洞窟も、アナカプリにあります。
でも、青の洞窟は行ったことがある人も多いと思うので、ここではアナカプリのもう一つの、マイナーな名所、ヴィッラ・サン・ミケーレの動画をどうぞ。
ここは、この島にすっかり魅せられて、ここに別荘があったらなあ、と思った数多くの外国人の一人で、その夢を実現させた数少ない一人の家です。
スウェーデン人の医師で作家で、アナカプリの重要人物だった人の夢の家。




さて、料理ですが、カプリ料理と言えば、インサラータ・カプレーゼとトルタ・カプレーゼですよね。
あと、リモンチェッロあたりも名物。
パスタは、「総合解説」にリチェッタを載せましたが、カプリの家庭で一番ポピュラーなのが、ラビオリ・カプレージなんだそうですよ。
詰め物はフレッシュチーズのカチョッタ・カンパーナ、卵、マジョラム。
記事は丸く抜くのが一般的なよう。

カプリ料理
 ↓


ラビオリ・カプレージはナポリ風詰め物のラビオリによく似てます。
 ↓



ナポリでラビオリを食べるという発想はなかったのですが、フレッシュチーズの具の丸いラビオリはこの地方の典型的な料理なんですね。

さらに「総合解説」では、ラビオリ・カプレーゼにかけるカプリの生トマトソース、キウメンザーナも紹介しています。
基本的なトマトソースですが、島の食材で作ると、典型的な地中海の味になるのでしょう。
島の漁師の間に広まったトマトソースだと言われているようです。
次回カプリに行くことがあったら、サルサ・キウメンザーナをかけたラビオリ・カプレージを食べるべし、とメモ、メモ。


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アナカプリの記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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クロマグロのヴィテッロ・トンナート

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今日からは、新しい「総合解説」13/14年8月号のビジュアル解説です。
まず最初の定番地方料理は、ヴィテッロ・トンナート。

ピエモンテの、というかイタリアの代表的な夏の料理ですが、この料理の背景には、意外と深いイタリアの食生活の真の姿がありました。

まずこの料理、なかなか特殊なものでした。

vitello tonnato


子牛とマグロというその名の通り、肉と魚の組み合わせ。
しかも北イタリアの海のないピエモンテで、マグロ料理とは。
マグロはピエモンテ人にとって、どう考えても珍味です。

この料理は、近代イタリア料理の父、ペッレグリーノ・アルトゥージが19世紀末に出版した本、『La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene』のリチェッタがイタリアに広まりました。

極東で魚を食べている国民からすると、ヨーロッパ人は、普段は肉ばかり食べていそうなイメージですが、『クチーナ・イタリアーナ』の記事によると、19世紀のイタリアの庶民にとって、肉はまだ特別な機会に食べるもので、食べたとしても、内臓などの質素な部位が中心だったそうです。
ただ、16世紀以降、ピエモンテには牛肉がたっぷりあり、他の地方よりは食べる機会が多かったようです。

それにしても、問題はマグロです。
中世には現在よりマグロの数自体は多かったし、トスカーナあたりでもマグロが捕れました。
しかも、クロマグロ。
マッタンツァと呼ばれる、現在はマグロとともにほぼ消滅した原始的な漁で捕ったクロマグロの中トロを、塩漬けや干物にして、金持ちの北イタリアの領主様の食糧庫まで届けたのです。

料理にはバッカラのように戻して使いました。
まだ、ツナ缶はない時代です。

ヴィテッロ・トンナートは、子牛とマグロという高級珍味を使った、貴族のための料理だったんですね。
それが、19世紀になってマグロのオイル漬けが出回るようになり、アルトゥージの本によってリチェッタも広まって、庶民も食べることができる料理になっていった訳です。

貴族料理としてのヴィテッロ・トンナートを食べてみたかったら、クロマグロの中トロのオイル漬けあたりを使ってみるということですね。





サルデーニャ産クロマグロの中トロのオイル漬けは、300g1800円ぐらいで販売されています。

逆に一番現代的にしたかったらマヨネーズを加えます。
もちろん伝統的なヴィテッロ・トンナートにマヨネーズは入りません。




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“ヴィテッロ・トンナート”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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シチリアのアーモンドミルク

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今日は今月の「総合解説」を訳していて、一番印象に残った文章をご紹介。

それは、“シチリアとサルデーニャ料理のチェーナ”という、ちょっとご馳走な家庭の地方料理を提案した記事の、シチリア料理のコースを説明する文章の中に出てきました。

このコース、プリーモは編み棒で作る手打ちパスタにシチリア風ペストのソース。
セコンドは牛肉のブラチョーレとメッシーナ風カポナータ。
そしてドルチェはシチリアならではのアーモンドのビスコッティ。
素朴で文句なしのシチリアの味のコース料理です。

この写真は料理とは関係ありませんが、右側のトレーにのっているのがアーモンド(マジパン)のビスコッティ。

IMGP1758


その文章は、このドルチェのリチェッタの最後の部分に登場しました。
それは、こんな文章です。

「アーモンドのビスコッティには通常アーモンドミルクを添える。
アーモンドミルクは、ピッチャーに水1.5リットルを入れてマジパン250gを溶かす。
シチリアの家庭では、マジパンを冷蔵庫に常備していることが多い。
マジパンは皮むきアーモンド125gと粉糖125g、牛乳少々をミキサーにかける。
冷蔵庫で数日保存できる」


手作りマジパンやアーモンドミルクが冷蔵庫に常備されているって、いかにもシチリア的で、なんか素敵だなー。







アーモンドミルクの作り方は色々あるんですね。

アーモンドの様々な味わい方がシチリアで広まったのは、この島がアーモンドの産地だから。
アーモンドは紀元前にフェニキア人によってシチリアに伝わりました。
シチリアとアーモンドの深くて長い関係がよく分かる動画
 ↓



アーモンドの殻を食べてる羊や牛とか、アーモンドの枝の薪で焼くピッツァとか、超美味しそう。

アーモンドミルクが飲みたくなってきた。
アーモンドクッキーと一緒に飲んでみようかな。

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“シチリアとサルデーニャ料理のチェーナ”の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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ヒメジのリヴォルノ風

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前回の

「シチリアの家庭では、マジパンは冷蔵庫に常備していることが多い」

に続いて、もう一つ、今月の「総合解説」の中で強く印象に残る言葉がありました。

それは、“ヒメジのリヴォルノ風”の記事の中の一文です。
リヴォルノと言えば、先月は、リヴォルノ風カッチュッコの話を取り上げています。

トスカーナの街ですが、魚料理が美味しいところなんですね。

で、印象に残った言葉は、


「(南地中海で捕れた)ヒメジは1ケースで奴隷一人分、と言われるほど高価だった」


古代ローマ時代の話です。

Coppa di Triglie!

だけど、ヒメジ1ケースって、あまりピンと来ないので、奴隷の値段について、ちょっと調べてみました。
奴隷の価値は、時代や場所によって変わるので、はっきりいくらと言うことはできません。
あくまでも参考程度ですが、わかりやすかったのは、牛1頭より高くて馬1頭よりは安い、というたとえ。

いくらなんでもヒメジ1ケースで売られた奴隷は、不憫だなあ。
まあ、それほどの高級魚で、当時は皇帝の宴席に登場するような、特別な食材だったという訳です。

とにかくローマ時代から高級魚として人気があったヒメジですが、砂場のヒメジより岩場のヒメジのほうが美味しい、というのも、イタリアではよく言われていること。

ヒメジのリヴォルノ風は、16世紀後半にリヴォルノのユダヤ人コミュニティーの中で生まれた料理というのも興味深い話です。
記事にはさらりと書かれていましたが、かつてリヴォルノは、地中海各地で宗教的な迫害を受けていた人々を受け入れていたそうです。
魚とトマトの組み合わせは、ユダヤ料理の特徴でした。
リヴォルノにトマトを伝えたのはスペインやオスマン帝国から逃げてきたユダヤ人だとも言われています。
それが広まって、今では、トマトをたっぷり使う魚料理がリヴォルノ料理の特徴と言われるほどです。

カッチュッコの話の時は、地中海各地から漁師が集まる街、という話でしたが、それだけではない、多国籍な街だったのですね。

そもそもカッチュッコもユダヤ料理がルーツなんだとか。
イタリア料理の中には、イタリア人もユダヤ料理がルーツだとは知らないものがたくさんあるそうですよ。

ヒメジのリヴォルノ風
 ↓



続きはこちらこちら


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“ヒメジのリヴォルノ風”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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アーリオ・オーリオ

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最近めっきり涼しくなってきましたねー。

北イタリアに住む年金暮らしのご隠居が、友人夫婦が夏に日本に遊びに行こうとしたら、旅行社に、夏は季節が良くないからやめたほうがいい、春か秋にしなさいと言われた、と言ってました。
確かに、猛暑に台風にと、日本の夏は、高齢の旅行者には厳しそうだなあ。
それにしても、その旅行社、なかなかできる。

そんな厳しい夏も過ぎて、いよいよ食べ物が美味しい秋が到来ですねえ。
今年は、その名も『秋(アウトゥンノ)』というお勧め本も入荷しました。
あとは台風が行ってくれるのを待つだけ。

秋の日本もいいですよ。
お待ちしてまーす。

Kinkakuji-temple 鹿苑寺金閣


さて今日は、今月の「総合解説」で訳した料理の中で、一番印象に残った料理名をご紹介。
初めて訳した時はまったく気が付かなくて、二度目で、あっと気が付いたら、もう忘れられなくなりました。
後からじわっと来る料理名です。
それは、
「タリオリーニ・アーリオ・オーリオ・ボッタルガ」

気が付きましたか?
ちらっと見ただけでは、すんなり読めて、なにも気づかない。
でも、よーく読むと、
そう、これは、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノのアレンジ版です。
元々のリチェッタは、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノにボッタルガを加えたものだけど、ペペロンチーノをボッタルガに変えたって、いいんです。

そう考えると、いくらでも応用できそうですよね。
でも、ごろの良さを考えると、ボッタルガは、字数的にもぴったり。

しかも、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノを作って、仕上げにおろしたボッタルガとレモンの皮のすりおろしを散らすだけ、という超お手軽パスタ。

アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノにボッタルガを加える人は、たくさんいるみたいですが、その料理を、いさぎよくアーリオ・オーリオ・ボッタルガと呼ぶとは、センスあるなあ。

ボッタルガの他にも、何かあるかな、と思って大好きな、有名シェフのパスタの本、『パスタ』を見てみました。

そしたら、ありました。
まずは、イスキア島のリストランテ・イル・メログラーノの料理、
“イカのリングイーネのアーリオ・オーリオ・ポモドリーニ”。
これは、ヤリイカのパスタだったらアーリオ・オーリオ・カラマレッテ、とも応用できます。

大御所のドン・アルフォンソもありましたよ。
ここでは、さらにひねりを加えて
“スパゲッティ・アーリオ・オーリオ・アリーチ・エ・ノーチェ”。
4つ目の素材も加えて、さらにごろよく仕上げてきました。
まるでラップのようなテンポのよさ。

それにしても、アーリオ・オーリオのように超簡単なリチェッタは、料理書に載ることは滅多にないので、グランシェフのアーリオ・オーリオのこのリチェッタは、なかなか貴重かも。
本の解説によると、この料理は古い伝統料理でクリスマスイブの定番なんだって。

あれ、カンパーニアの伝統料理?

ついでなので、“アーリオ・オーリオ”のうんちくを少々。

スローフードの“リチェッテ・ディ・オステリア”シリーズの『パスタ』によると、唐辛子で辛さを利かせる前のアーヨ・オーヨ(ajo ojo)は、ラツィオの農村部で広まった料理ですが、発祥地となるとラツィオ、アブルツォ、カンパーニア、カラブリアの各地の間で論争があるそうです。

一説によると、あまり強くない味で、フライパンであおる必要のない、ゆでたスパゲッティにただかけるだけでいい熱いオイルのソースが欲しいと思って考え出されたのだそうです。
にんにくを半分に切ってボールの底にこすりつけ、この中にゆでたスパゲッティを入れて熱いオリーブオイルをかけ、仕上げにイタリアンパセリと唐辛子のみじん切りをちょちょいと散らすだけ。

究極のズボラパスタですねえ。
なんでこんな料理の誕生したいきさつがいやに詳しく伝えられているのか、かなりうさんくさい話ではありますが、オイルにトマトを加えるとロッソバージョンになります、なんてもっともらしい解説もあって、そこそこありそうで説得力もあるなあ。

まあ、どうやらアーリオ・オーリオは、いかに手を抜いて美味しく作るか、ということをつきつめていったらこうなった、みたいなもんなのでは。
ただし、本に載っているリチェッタは、ここまで手抜きではありません。
それにしても、カルボナーラといい、アマトリチャーナといい、カーチョ・エ・ペペといい、ローマの農村部からは、どうしてこんなに伝説的なパスタが次々生まれたのでしょうねえ。

シンプルな料理ほどアレンジはいくらでも。
究極のズボラ料理てもミシュラン3つ星のシェフが作ると、ここまでリッパにできます。




ちなみにこの店のajo ojoはスパゲッティ・アーヨ・オーヨ・セッピエ・エ・ピゼッリで、€60と
とびきり高級。



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“タリオリーニ・アーリオ・オーリオ・ボッタルガ”のリチェッタを含む“シチリアとサルデーニャ料理のチェーナ”の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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手打ちフジッリ

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今日は「総合解説」に新しく加わった記事、中級のテクニックを紹介する“スクオラ・ディ・クチーナ”から、手打ちフジッリの話。

手打ちフジッリって、確かに普段お目にかかることのない手打ちパスタです。
ダイスを通して押し出す乾麺のフジッリとは、基本的な作り方がまったく違います。

乾麺のフジッリ

Park Chow - Lunch

その断面

fusilli


ガルガネッリの型を使って筋をつける方法だと、これに近いフジッリになります。

Fusilli


で、今回訳したリチェッタのフジッリは、まるで今どき女子の憧れの縦ロールのような、見事なゆるふわ系ロール。
これだけきれいにくるくるだと、いったんからめとられたら、ムール貝のようなごろごろの具も、絶対に逃げ出せませんよー。

麺を平らに伸ばしてから棒に巻き付けるのできれいな長い縦ロールになります。

写真はこちらのページの上段中央にあります。

偶然ですが、今月の「総合解説」7ページには、同じく編み棒系のアッケローニ・アル・フェッレットのリチェッタと写真もありますので、ぜひ見比べてください。

このパスタもフジッリの一種で、編み棒でカールさせる代表的なパスタですが、麺を平らにしないで細長い棒状に伸ばしたところに上から棒をのせて押し込んで転がしながらカールさせるのが特徴です。
この方法だと、2種類のフジッリができます。





どちらも棒を使って生地をカールさせる、いう原理は同じなのですが、作り上げるパスタのイメージが違うと、こうも別のものができるんですね。

この独特な形のパスタにはどんなソースが合うのか、来月号の「総合解説」には、フジッリのリチェッタも載せましたので、ぜひご参考に。


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“スクオラ・デイ・クチーナ”と“シチリアのサルデーニャ料理のチェーナ”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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『アウトゥンノ』

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今日は入荷したての本、『アウトゥンノ』のご紹介です。














秋のイタリア料理ばかりを1600点も収録している本です。

839ページもある分厚い本で、写真はありませんが、リチェッタの読みやすさは驚くばかり。
すいすい読めます。
その最大の理由は、イタリア語の料理名が明快で、料理をイメージしやすいからだと思います。

恒例の序文をざっと訳してみました。

「秋の料理は強い香りと味に満ちている。
森の活気、夏の最後の太陽、最初の薄い霧、新ワインの鮮やかな赤い色、熟した果実の芳醇な香り。

Nebbia
tagliolini_tartufo_bianco
Funghi
Benvenuto Autunno


秋は大地を再発見する季節で、大地の産物が最高に美味しくなる季節だ。
ぶどうは収穫を迎え、森では栗やきのこが見つけられるのを待っている。
トリュフも高貴な香りを放っている。
カボチャも旬を迎える。
ニョッキやポレンタ、ミネストラ、ジビエの季節も到来だ。
最初の寒さが訪れると、強いコクのある味が欲しくなる。
秋はイタリア各地で、伝統料理がオリジナルの組み合わせと出会う季節だ、
この本は、前菜からドルチェまで1600点のイタリア料理の秋のスペチャリタを集めた」


そして最初のリチェッタは、白トリュフとパルミジャーノの重ね焼き。

スライスした白トリュフとパルミジャーノをフライパンに重ね、オリーブオイル、塩、こしょうで調味して数分火にかけ、レモン汁をかけてすぐにサーブする、という超簡単なのにスペシャルな一品。

パヴイアからピアチェンツァにかけてのパダナ平野の一帯で、テガミーノ・アッラ・ロディジャーナとして知られる一品。
オイルをかけてフライパンで焼く代わりにバターをのせてオーブンで焼いてもOK。

料理はアルファベット順です。
秋にぴったりのAから始まるパスタはなんでしょう。
答えはアニョロッティです。
アルバ風、ピエモンテ風など、バリエーションも豊富。
肉は、白肉(子羊、鶏、豚、子牛)、赤肉(牛、ジビエ)に分類。
さらに魚、ポレンタ、野菜、サラミ、パン、ピッツァ・・・と続き、最後はドルチェ。

一番最後のリチェッタは、ヴィーノ・コットです。
これはぶどうをジューサーにかけて、ぶどうの汁と皮をむいたいちじくをとろ火で3時間煮込んで裏漉ししたもの。
ビンやジャーに詰めて保存します。


秋というと、ピエモンテのイメージ。






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バリスタの巨匠の半生

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こかでスーパーマリオが話題になってましたが、今月の「総合解説」で紹介しているスーパーマリオは、バールで美味しいコーヒーをいれ続けている、髭にも白髪が混じるマリオです。

実際にマリオという名前が存在するイタリアでは、その人が尊敬に値する人だと、スーパーマリオなんて呼ばれちゃったりするんですね。

『ガンベロ・ロッソ』がスーパーマリオと呼ぶのは、カンパーニア州アヴェッリーノのサン・トンマーゾ地区にあるエッソのガソリンスタンドのバールのバリスタ、マリオ・マルティーノ氏のことです。

写真を見る限りガソリンスタンドに併設された、おしゃれでもシックでもない、あまりにもローカルな店ですが(こんな店)、『ガンベロ・ロッソ』の『バール・ディ・イタリア』では、最高のトレ・キッキを獲得してます。

ネットでサービスステーションの評価を見ると、サービスも人もいいしコーヒーも美味しい、と高評価。

それにしても、ガソリンいれたついでにトレ・キッキのコーヒーが飲めるなんて、贅沢な暮らしだなあ。

この記事は、マリオがスーパーマリオになるまでの話で、訳していてとても面白かったです。
イタリアのバリスタの方々への尊敬の念が、一段と高まりましたよ。

彼の半生は、南イタリアの一地方の町のバリスタには、こうやってなるんだろうなあと思い描いていた通り。

1955年、マリオはアヴェッリーノの隣町で生まれました。
初めてコーヒーをいれたのは、10歳にもなっていない時でした。
さすがはカンパーニアの小学生。
でも、プロの世界は、厳しいのです。
コーヒーマシンの前に立つなんて、百年早いよ、坊や。
という訳で、当時の彼に与えられた仕事は皿洗いと配達でした。
そこで、この小学生は、午前中は学校に行き、午後は町の主だったバールで、何年もかけてスチーム作りとカクテルを覚えたんだそうです。

なんだかバリバリの昭和の職人のようですねえ。
バリスタの学校に行った訳でもなく、ただひたすらに経験を積んだ文字通りのたたきあげ。

しかも、彼は兵役があった時代の人で、兵役を終えて仕事を探す時に、バールで働くのが好きだったので、エッソのバールで働くことにしたのだそうです。
そして32歳の時に、経営者のバラッタ家から店を引き継ぎました。
スーパーマリオは、50年のキャリアの中で500万杯のコーヒーをいれたそうです。


今どきのバリスタ。

barista


未来の巨匠かな。

Baby Barista


イタリアのバリスタチャンピオンがカップッチーノをいれる動画
 ↓




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“スーパーマリオのコーヒー”の記事は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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日伊国交150周年とジュビレオ

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今日はイタリア便りです。
それではsegnalibroさん、どうぞ~。


初めてイタリアの地を踏んだといわれる日本人の肖像画を、昨年、ミラノで見せていただく機会に恵まれました。

Ito Mancio

16C後半、キリスト教を学ぶため、九州から派遣された天正遣欧少年使節団の一員、伊東マンショの肖像画です。
2014年にその存在が発表されたときには、イタリアの新聞にも取り上げられました。

Gazzetta mantova

当時、日本の王のご子息御一行様がいらっしゃったとヴァチカンで大歓迎を受け、ヴェネチアでは巨匠ティントレットの息子、ドメニコ・ティントレットに肖像画を描いてもらったようです。
ティントレットの絵は暗いイメージがあるのですが、息子の絵も同じなんですね。
この絵は、ミラノの元貴族が所有していたのですが、財産分けの際、修復家に4カ月かけて綺麗にしてもらい鑑定をお願いしたところ、後ろにMANCIO ITO の文字が判明。
所有者も、まさかこれが日本人であるとは思っていなかったのだとか。
芸術に疎い私が見ても、日本人にもティーンエイジャーの若者にも見えないこの肖像画は、想像していたより大きくて、彼らがその後たどった運命を思うと、感慨深いものがありました。
今年は日伊国交樹立150周年だそうで、その記念行事の一環として、この絵が日本で特別公開されています。
東京国立博物館と長崎での展示を終え、現在は宮崎県立博物館にて10/16まで里帰り中です。
・・・こういうお知らせは、もっと早くするものですね、すみません。

イタリアで大歓迎を受けた天正遣欧少年使節団が、どんな食卓を囲んだのか気になるところです。
16Cのイタリアでは、手を洗うとか、フォークを使って中央の大皿から食べ物を取るということが習慣になりつつあったそうです。
スペインからリヴォルノに到着したのが3月。
リヴォルノ風バカラは食べたのかな、とか、ローマではカルチョフィを食べたかも、などと妄想するのは楽しいです。

さて、今年はカトリック教徒には大切な年、ジュビレオと言われる聖年でもあります。
先日、相方は地元教会の主催するジュビレオツアーに行って来ました。
ローマ4大バジリカを巡り、ヴァチカンでは水曜のミサに参加、アッシジに寄って帰ってくるという、1週間のツアーです。
教会付属の施設に宿泊。
最低限のものはそろっていて清潔だったそうですが、ローマではテレビがお部屋になかったと、不平を言っていました。
秋になり体重が増えてしまった相方、お食事も教会付属の施設内なので、きっと痩せて帰って来るだろうと思っていたら、見事に増量して帰宅しました。

Cena domus roma

プリモやセコンドはそれぞれ2種類から選ぶのだそうですが、家庭的なお食事がなかなか美味しかったようで、プリモの後にビス(bis)プリモ、セコンドの後にまたビス・セコンドと2回ずつ食べ、その後はドルチェも食べていたのだとか。
ジュビレオツアーで贖罪を受け、キレイな体で帰って来るのを期待していましたが、全くもって、煩悩からの解脱はできなかったようです。
食欲の秋、私も太らないように気をつけなくちゃ。



教会のツアーに参加するというのは一般的なことなんでしょうか。
信心深いんですねえ。
私は、学生時代にバックパック旅行した時(すんごい昔だけど)、イタリア各地の教会の宿泊施設を利用させていただきました。
大部屋だけど、格安だったなあ。
外国人旅行者だけでなく、家族が入院したので長期の付き添いできた、などのイタリア人もいました。
イタリアの教会のおもてなしは、じわーっとあったかいなあと思いましたよ。


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国民的パスタソースとパスタ・リゾッタータ

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先日、“アーリオ・オーリオ”について調べた時に読んだスローフードの“リチェッテ・ディ・オステリア”シリーズの『パスタ』の中にあった言葉、sughi nazionaliが、ずっと頭に引っかかっています。

正確には、スーギ・ディ・パスタ・ナツィオナーリ。

訳すと、国民的パスタソース、という意味です。

イタリアの国民的パスタソース。
当然、日本でもよく知られていて、いわゆるイタリア料理のイメージを代表するパスタソースです。
イタリア料理を語る上で、もっとも基本となるものです。

さて、あなただったら、何を挙げますか?

本に書かれていたのは、ラグー・アッラ・ボロニェーゼ、アマトリチャーナ、カルボナーラ、ペスト・ジェノヴェーゼ、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ、カーチョ・エ・ペペ、フレッシュトマトとバジリコ、アッラ・マリナーラ、ヴォンゴレ、プッタネスカ、ノルマといったラインナップ。

日本でも人気のものばかりですね。
北から南までありますが、主にラツィオとカンパーニアの伝統パスタソースです。

これらの伝統的なものの他に、もっと新しい、アッラ・コンタディーナ、アッラ・ボスカイオーラ、アッラ・アッラッビアータなどがあります。

さらに歴史的に見れば、イタリアのパスタソースには、トマト化という大きな転換期がありました。
1例を挙げれば、グリーチャにトマトが加わってアマトリチャーナになったようなことです。

イタリアのパスタソースには、野菜のソースという独特の分野もあります。
カルチョーフィ、ファーヴェ、ファジョーリ、ズッキーネ、フィオーリ・ディ・ズッカ、メランザーネ、ブロッコリ、チーメ・ディ・ラパ、チコリエッレといったイタリア野菜や、カポナティーナ、ケッパーとオリーブなどです。

国民的パスタソース、面白いテーマですね。
今後、「総合解説」で取り上げてみようかな。
販売している料理書の中から、国民的パスタソースのリチェッタを集めて訳す、というのはどうでょしょう。
少し先になると思いますが、急にやる気が出てきました。
需要があるといいのですが。


ソースの話をしたら、切っても切れないのがパスタの話です。

最近、リチェッタを訳していてとても目につくのが、パスタをリゾットと同じテクニックで作る料理です。
アーリオ・オーリオやカーチョ・エ・ぺぺのようなシンプルなソースの基本のテクニックですが、最近では、グランシェフの料理を中心にあらゆるパスタに広まっています。
パスタの一番新しいトレンドかも、と感じています。

パスタ・リゾッタータ
 ↓


リゾッタータには、イタリア人が求めるパスタの特徴が表れていると感じています。

この作り方だと、パスタからでんぷんが溶け出て、煮汁にとろみがつきます。

ただし、でんぷんがたくさん溶け出せばいい、という訳ではありません。
例えば、イタリア人がリゾットに使うのは、わざわざでんぷんの量を少なくしたアルボーリオやカルナローリといった品種の米です。

パスタをゆでる時にパスタからゆで汁に溶け出る成分は、ソースの味にも影響します。
さらにゆでる温度や長さなど、ゆで方によって溶け出る成分にも違いがあります。
何が溶け出るかは、麺を何度で何時間乾燥させるか、何製のダイスを使うかなど、パスタの製法や原材料によっても違います。

ゆでた時に麺がどれだけでんぷんに覆われているかなんて、考えたことなかったけど、パスタのゆで方の話になると、イタリアではでんぷんという言葉がキーワードになっているような気がします。


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カリアリ

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今日は「総合解説」のグルメガイドから、カリアリのビシュアル解説です。

独特の方言があるサルデーニャ。
そのサルデーニャの言葉で城という意味のカステッドゥと呼ばれるカリアリ。

サルデーニャ島の南の端にあるこの町のキーワードは、丘。
歴史地区の中心にあるのが、城壁に囲まれた城がそびえる丘。
城の周囲に町が広がっています。

カリアリの城
 ↓


城があるカステッロ地区の丘の上からは、ふもとの港や海まで見渡せます。
カリアリは海に囲まれた町です。
ふもとには、イタリア最大の屋内市場があるサン・ベネデット地区、長く続く砂浜など、まったく別の顔が。

海の街、カリアリ
 ↓



アサリのフレーゴラや、ズッパ・ディ・ペッシェのサ・カッソーラが名物なのはこの一角。

市場でお買い物。
 ↓


アサリのフレーゴラ
 ↓


さらに、海岸には、生ウニを売る店もでています。
地元の白ワイン、ヌラーグスDocを飲みながらどうぞ。


もうバカンスのシーズンは終わったのに、まだバカンスの気分を引きずっている人は、ウニのパスタにサルデーニャの白ワインを添えて食べたくなる。


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“カリアリ”のグルメガイドの日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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パレルモのスリートフード、スフィンチョーネ

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8月号の「総合解説」には、ストリートフードの記事が2つあります。
バカンスの季節の夏は、イタリアではストリートフードの季節なんですね。

でも、方言で食べる(by チッチョ・スルターノ)と表現される通り、通りすがりの観光客には、ちょっと敷居の高い食べ物です。


今回解説に載せた料理は、まずパレルモのスフィンチョーネ。
なんと、一番有名なシチリア料理だと言う人もいます。

パレルモのストリートフードにしては珍しく、内臓は入っていません。
パレルモ風フォカッチャ、またはパレルモ風ピッツァです。

クリスマスの定番の食べ物なんだそうです。
生み出したのは修道女と言われています。
なんのトッピングもない質素なパンを、お金をかけずにクリスマス用のゴージャスなパンに変身させた、ということでしょうか。
スフィンチョーネの語源はラテン語でスポンジという意味。
おそらく、パン生地の柔らかさを表しているのでしょう。

このスタイルで売るのが伝統的。








ピッツァ生地に玉ねぎ入りトマトソースを塗ってアンチョビとカチョカヴァッロを加えて焼きます。
シンプルで経済的なのに、美味しそう。

スフィンチョーネはパレルモ限定のストリートフードですが、パレルモ近郊のバゲリアという町にはバリエーションの一種が作られていて、スファンチョーネ・バゲレーゼとか、スフィンチョーネ・ビアンカと呼ばれています。
バゲリアでだけ造られている珍しいスフィンチョーネです。




パレルモ風とは全く違うと力説していますが、その違いは両方食べないとわからないなあ。

それにしても、シチリアの人はパン粉が好きですね。
パスタに散らすのはよく見ますが、パンをパン粉で覆うとは、すごいアイデア。

パレルモでスフィンチョーネを食べたくても、あのオート三輪に出会えるかどうかは不確かなので、スフィンチョーネを売っていて、ガンベロ・ロッソの『ストリート・フード』でも高く評価されている人気の店を1軒、ご紹介します。

店の名前は、Panificio Graziano /via del Granatiere 11。
ネットの評価は上々で、パレルモで一番美味しいカットピッツァの店、かつ一番美味しいスフィンチョーネの店として知られています。
中心地から離れていて観光客には知られていないのですが、店は地元の人で一杯なんだそうですよ。
スフィンチョーネの王様や~という投稿もありました。

それにしても、パン生地にトマトソース、アンチョビ、チーズをのせたフォカッチャとなると、どこでパレルモらしさを出すのでしょうか。
材料を見る限り、唯一、パレルモ特産と言えるのは、カチョカヴァッロですかね。
カチョカヴァッロには、カチョカヴァッロ・シチリアーノという分類があって、その中の一種が、カチョカヴァッロ・パレルミターノというチーズです。




カチョカヴァッロは、モッツァレッラと同じ、パスタ・フィラータのチーズですが、熟成させるので辛みなどが生まれます。

パレルモに行く機会があったら、パニフィーチョ・グラツィアーノまで出かけてパレルモで一番美味しいスフィンチョーネを食べて、ちょっと足を延ばして東隣のバゲリアに行って、スフィンチョ―ネを食べ比べる、というのはどうでしょう。
ちなみに上の動画では、下記の5軒の店を紹介しています。
i forni storici di Bagheria: Buttitta, Liga, Lo Presti, Ragusa, Varisco

どの店も高評価のようです。

とろこで、そもそもバゲリアってどんな街?

パレルモ県ではパレルモに次いで人口の多い街だそうです。
『ニューシネマパラダイス』で知られるジュゼッペ・トルナトーレ監督の故郷。
『シチリア!シチリア!』は監督が故郷を舞台に撮った映画。
さらに、パレルモのベッドタウンだったおかげて貴族の館がたくさん残っていることでも有名。






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“ストリートフード”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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