Quantcast
Channel: イタリア料理ほんやく三昧
Viewing all 2537 articles
Browse latest View live

エルバッツォーネ

$
0
0
今月の「総合解説」地方料理の2品目は、エミリア・ロマーニャのエルバッツォーネです。

旬の青菜を炒めてパルミジャーノで調味し、タルトの具にしたこの料理は、パルマとモデナの中間にある街、レッジョ・エミリアの農民料理がルーツで、この地方のソウルフードのようなもの。
地元の人からはこよなく愛されているようですが、地元から一歩外に出ると知名度はいまひとつ。
なので、エルバッツォーネを世界中の人に知ってもらいたいというのがレッジョ・エミリア人の悲願。


地元、レッジョ・エミリアの中学生が作ったお見事な動画。



センスいいですね。
なんだか、大阪の人が得意そうなイメージ。
使う青菜は、ビエトラ、ほうれん草、エルベッテが一般的。
名前からして、エルベッテを使う料理なんだろうなあ、と思ったら、なんと、地元ではこの料理
“scarpasòun”(スカルパソウン?)という、エルバッツォーネとは似ても似つかない名前です。

このスカルパというのは、なんとも悲しいことに、畑でとれたビエトラの柔らかい緑の部分ではなく、一番硬くて食べづらい白い部分のことなんだそうです。
だから、純粋に伝統的なスカルパッツォーネは、少々とっつきにくい食べ物なんですねー。
ピーマンを食べない子供になんとか食べさせようとお母さんが工夫するように、みんなが食べたがらないビエトラの硬い部分を、お母さんが工夫を重ねて美味しい料理に改良していったのが、現在のエルバッツォーネ、という訳です。
縁に近い部分と中央部分では歯ごたえが違うから、どこの部分が欲しいと指定できれば、通ですねえ。


ビエトラ(フダンソウ、スイスチャード)は、南ヨーロッパの地中海地方原産の優れた栄養価の野菜。



洗練されたアレンジ。
ビエトラとスカモルツァのキッシュ




最近ではスーパーでも見かけるようになったスイスチャード。
日本のお母さんは、どんな工夫をするんでしょうか。


-------------------------------------------------------

“エルバッツォーネ”のリチェッタは「総合解説」13&14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

ピエモンテ風フリット・ミスト

$
0
0
今日はピエモンテ風フリット・ミストの話。

日本料理のてんぷらは、西洋(ポルトガル)から伝わった揚げ物の、極東での進化系。
屋台があったりして、江戸時代には庶民の食べ物だったんですね。
一方、イタリアの揚げ物フリットは、フリット・ミストになって、宴席に登場する料理など、国民的なご馳走として定着しました。
そして、ピエモンテ、ナポリ、ローマなど、各地で名物料理として独特のリチェッタが誕生しました。

ピエモンテ風フリット・ミストは、北イタリアを代表するフリット・ミストです。




「総合解説」にもある通り、ピエモンテ風フリット・ミストは、もともとは質素な農民料理でした。
日持ちのしない部位の肉や、貴族の晩餐の残り物を有効利用した料理です。

現代人には、昔のリチェッタであればあるほど人気が高いようですが、昔のリチェッタとは、肺、睾丸、かえるのもも、豚足、脳みそなど、今では滅多に手に入らない内臓系の食材を使います。
個人的には鶏のとさかのフリットに興味あり。

ただし量は、肉体労働が減った現代人向けに、かなりミニサイズ。
ちなみに、昔は約30種類の食材を使ったそうです。

昔も今も共通なのは、アマレッティなどの甘い食材のフリットが入ること。


ナポリ風フリット・ミスト
モッツァレッラ・イン・カロッツァや揚げピッツァ、フランスから伝わったクロッケッテ入り。
ストリートフードの要素が強い。




ボローニャ風はとにかくリッチ。




数種類の肉や旬の野菜が入るの各地に共通。
さらに、地元ならではの食材が加われば、ご土地フリット・ミストの完成。
料理書にお手本はあるけれど、料理人のアレンジの余地が残されている料理です。
特に甘いフリットは、バナナやジャム入りパヴェジーニなど、アイデア出し放題。




-------------------------------------------------------

“ピエモンテ風フリット・ミスト”のリチェッタは、「総合解説」13&14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

ピッツァ・フリッタとナポリのストリート

$
0
0
今日はピッツァ・フリッタの話。
以前にこのブログでソフィア・ローレンがピッツァ・フリッタを作っている映画を紹介しましたっけ。
こちら

今回の「総合解説」では『ピッツァ・エ・コーレ』の記事を訳したわけですが、この記事でリチェタを提供している店「ピッツェリーア・ラ・フィーリア・デル・プレジデンテ」(HP)がピッツァ・フリッタの動画を上げていたのでどうぞ。





屋台で揚げる文字通りストリート・フードのピッツァ・フリッタ。



食べた~い。
今、食べた~い。

1970年代のナポリのストリート。




安全で小ぎれいな街になる前のナポリ。
すごいエネルギーが伝わってきます。
観光地巡りでは知ることのできないナポリの一面。

下は現在のナポリ(の観光名所)を紹介する動画。
BGMはナポリ生まれのシンガーソングライターでジャズ・ギタリスト、ピーノ・ダニエーレが1977年にリリースした『Napule E'』。
ナポリの厳しい現実を歌っていますが、大ヒットしてセリエAのナポリの公式賛歌として定着しました。






-------------------------------------------------------

“ピッツァ・フリッタ”のリチェッタは「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

モッツァレッラとブッラータ

$
0
0
今日はブッラータとモッツァレッラの話。
「総合解説」で、ブッラータとモッツァレッラは似ているようで意外と違う、という記事を紹介していますが、なるほど、記事を読んでみると確かに違いました。

上がモッツァレッラで下がブッラータ。

Mozzarella Di Bufala e Pomodorini

burrata

白くてフレッシュそうだけど、外見は微妙に違う。
さらに、産地が違う。
モッツァレッラはカンパーニアで、ブッラータはプーリア。
しかもモッツァレッラは水牛のミルクから作るけど、ブッラータは牛乳が原料。
もちろん味も違う。
決定的に違うのは、モッツァレッラは中世から作られていたけど、ブッラータは1920年代に誕生。
まだ100年しか歴史がなかった。

この二つのチーズの共通点は、パスタ・フィラータというタイプのチーズ、ということ。
パスタ・フィラータはモッツァレッラに代表される南イタリアのチーズ独特のテクニック。
フィラータとは糸を紡ぐという意味。
お湯や熱いホエーにカードを漬けて水分を出してから練ると、カゼインが糸のようになり、長く伸び~る弾力のある生地になります。

パスタ・フィラータ作り
 ↓



このパスタ・フィラータを水牛のミルクから作ったのがモッツァレッラ。
牛乳から作ったものはフィオル・ディ・ラッテと呼んで区別します。
そしてブッラータは、フィオル・ディ・ラッテから作ります。

ブッラータの製造過程。
 ↓


牛乳のカードを刻んでお湯に漬けて練るとフィオル・ディ・ラッテになりますが、そのフィオル・ディ・ラッテをさらに刻んで生クリームに入れるとストラッシャテッラというものになります。
これをフィオル・ディ・ラッテで作った袋に詰めたものがブッラータです。

なんでそんなに手間暇かけるのかとも思いますが、
そもそも、フィオル・ディ・ラッテを作った残りのパスタ・フィラータを有効利用するために考えだされたのがブッラータなんだそうです。

ブッラータの話、次回に続きます。


-------------------------------------------------------

“モッツァレッラとブッラータ”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

ブッラータとパーレビ国王

$
0
0
今日の話は知られざるブッラータの世界。
ブッラータのことを書いていたら、初めてプーリアのアンドリアでブッラータを買った時のことが蘇ってきましたよ~。
(その時の話は昔のブログに書きました。こちらです。)
あの時は、ブッラータを1、2回食べたことがある程度で、どんなチーズかよくわかっていなかった。
だから、お店でも、ブッラータを指さしてこれを1個くださ~い。
と言えば、それですべて済むと無邪気に思ってました。
というか、何も考えてませんでした。

ところが、店のショーケースを見渡しても、ブッラータが見当たらないのです。
とにかくブッラータ1個くださいと言ったら、いきなり大きさは?と聞かれました。
うっ、この質問は想定外。
いろんな大きさのブッラータがあるのかと思っちゃいますよねえ。
でも、正解は、ブッラータの作り方を見るとわかります。

パスタ・フィラータのチーズで袋を作り、その中に、注文に応じた量のストラッチャテッラを詰めます。




その時は、なすすべもなく呆然と立ち尽くしていたら、店員さんが機転を利かせて何人で食べるのか、と問い直してくれました。
3人、と答えたら、店の奥に引っ込んで、すぐにとても小さなブッラータを持ってきました。
作り置きしないで、注文が入ってから、上の動画の作業をするんですね。
そして、さらに、今日中に食べろ、冷蔵庫には入れるな、と店員や他のお客さんからもきつーく念を押されまました。
店員さんはニコリともしないので、こちらはお説教されてる気分です。
アンドリアではブッラータを冷蔵庫に入れたら罪に問われるに違いない、くらいの気持ちで、小さなブッラータを抱えて、その日一日、プーリアを歩き回ったのでした。

でも、ようやくホテルに戻って味わったブッラータは、バターみたいに濃厚で、草原の草のようにフレッシュで、チーズってこんなに美味しいもんなんだーと、味覚の新しい世界を体験することができるくらいの衝撃でした。

それから8年後。
ブッラータの記事を訳していたら、ブッラータにまつわる驚きのエピソードを知りました。
なんと、イランのパーレビ国王が、ブッラータ大好きだった。

パーレビ国王って、今どきの若いもんは知ってるかなあ。
ホメイニ氏によって国外追放されたイランの最後の皇帝で、当時は大きく報道されていたので、普段馴染みのないイスラム圏の人でも、かなり注目されていました。
でも、その王様がブッラータが大好きで、有名なイラン建国2500年の祭典で、世界中から集まったVIPにブッラータを振舞ったと聞くと、なんだか親しみが持てるなあ。

イランの国威発揚の場の公式晩餐会で、唯一のイラン以外の国の産物がブッラータだったというのだから、王様がどれだけでブッラータが好きだったのか想像できるというものです。
しかも招待客は約600人。
アンドリアのチーズ業界も盛り上がったんだろうなあ。

イラン建国2500年祭典
 ↓




冷蔵庫には入れない、というのは、ブッラータとモッツァレッラ共通の、南イタリアの鉄の掟。
もし入れちゃたら、食べる前に湯煎にかけるんだそうです。

モッツァレッラクイ~ズ。
冷蔵保存するときの適温は?というひっかけ問題に、冷蔵庫に入れてはだめと答えたおじさんを大賞賛。
 ↓



その他の問題。
モッツァレッラ1㎏作るにはミルクが何リットル必要?
答えは4リットル。
なぜかみんな知っています。
モッツァレッラ1㎏と水1リットルはどっちが重い?
答えは、同じ。
みんな意外と冷静。



-------------------------------------------------------


“モッツァレッラとブッラータ”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

ピッツァに最適のチーズは

$
0
0
さーて今日はモッツァレッラの話。

いまさらですが、ピッツァにのせるチーズと言えば、モッツァレッラですよねえ。
生まれた時から刷り込まれていたかのような常識ですが、では、なぜ?
と考えたことありますか?

Pizza Margherita

なぜ他のチーズではいけないのか。

このすごく根本的な疑問を科学的に解明しようという気になったのは、さすがにイタリア人ではなかったようです。
ニュージーランドのオークランド大学だって。
そう伝えているのは『フードサイエンスジャーナル』誌。
記事はこちら
web版タイムのこちらのページでもその記事を伝えています。

目の付け所が面白いですねー。
モッツァレッラ、チェダー、コルビー、エダム、エメンタール、グリュイエール、プロヴォローネ
を実際にピッツァにのせて焼いて、弾力、脂肪分、水分などを測ったのだそうです。
その結果の写真がこちら

焼き上がりの色が、まるで違うんですねえ。
ふつふつ沸騰してこんがり焼き色がついてカチカチにならずにとろーりと焼きあがるのはモッツァレッラだけ。
恐れ入りました~。

実験の結果を伝える動画。
 ↓



とても興味深いですねー。
それでは、本家はピッツァとモッツァレッラのことをどう考えているのか、vera pizza napoletanaの本
Farina acqua lievito sale passione』のモッツァレッラの章をちょっと読んでみました。

すると、ピッツァにモッツァレッラというのは、マルゲリータとマリナーラを区別する時に、“ピッツァ・コン・モッツァレッラ”、“ピッツァ・センツァ・モッツァレッラ”と呼んでいたことからも、ピッツァにはモッツァレッラというのが定着していたと説明しています。
ただし、水牛のモッツァレッラか牛乳のフィオル・ディ・ラッテのどちらがいいかについては、意見が分かれていたようです。
フィオル・ディ・ラッテのほうがドライでいい、という意見が多かったみたいですね。
ただ、少し前までピッツァイオーリはモッツァレッラとフィオル・ディ・ラッテを区別する習慣がなく、すべてのチーズをモッツァレッラと呼んでいたそうです。
ところが現在では、モッツァレッラ・ディ・ブファラ・カンパーナに匹敵するフィオル・ディ・ラッテはフィオル・ディ・ラッテ・アッペンニーノ・メリデイオナーレ(こんなチーズ)だという専門的な認識が出来上がっていました。

それというのも、食文化の情報を伝えるサイトのこちらのページによると、イタリア中南部で作られるフィオル・ディ・ラッテとそれ以外の場所で作られるフィオル・ディ・ラッテは別物なんだそうですよ。

さらにピッツァを薪で焼くときは、電気のオーブンより短時間で焼き上がるので、水分や脂肪分が少ないチーズのほうが仕上がりがきれいなんだそうです。

さらにさらに、焼いているうちに完全に溶けてしまわないように、フィオル・ディ・ラッテは厚さ2~3㎜に切り、モッツァレッラは5~6㎜に切るのだそうです。
そして切ってから少しおいて水気を切ります。

きっとピッツァイオーリさんたちには常識なんでしょうが、念のため。




-------------------------------------------------------

“なぜモッァレッラはピッツァに合うのか”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

イタリア産レモン

$
0
0
さて、今日はレモンの話です。

アマルフィの八百屋さん。
 ↓
Limones de Amalfi


イタリアのレモンと聞いて思い浮かぶのは、アマルフィ産、それともシチリア産?

世界的に知名度が高いコスタ・ダマルフィのレモンは、段々畑で栽培されています。




収穫は大変。





イタリア最大のレモンの産地はシチリア。

イタリアで、というかヨーロッパで、最初にレモンが栽培されたのはシチリアとスペインでした。
おそらくアラブ人が支配していた時代に伝わったのでしょう。
カンパーニアはかつてはシチリア王国の一部でした。
栽培の記録は11世紀、輸出の記録は14世紀から残っています。

アマルフィのレモンは船乗りたちの壊血病予防のために広まりました。
アマルフィは海洋共和国として栄え、そのレモンは北ヨーロッパを中心に交易品として世界中に運ばれました。
アマルフィのレモンの外見の特徴は、ぽってりとした下膨れのその形。
紡錘形という意味のスフザートというのが通称です。

シチリアのレモンの代表的産地はシラクーザ。
シラクーザで栽培されている品種はイタリアでもっとも一般的なレモンで、栽培面積はアマルフィの10倍以上。

シラクーザレモンの管理組合が作ったPV。




日本語版のPVもありました。



シラクーザレモンのソルベット。
盛り方が素敵。




広大な畑で栽培されているんですね。

それにしてもシラクーザレモンの管理組合は資金が豊富なのか、バンバンPVを作ってます。
アメリカとイギリスを中心に輸出量が増えて、今やヨーロッパ最大のレモンの産地となっているそうです。

-------------------------------------------------------

“アマルフィのレモン”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

シェフとレモン

$
0
0

アマルフィのレモンの話をしていたら、無性に読みたくなった本がありました。

アマルフィ海岸の町、ミノーリで親の経営するバールを世界的なパスティッチェリーアにしたパスティッチェーレ、サルヴァトーレ・デ・リーゾの自伝的リチェッタ集、『ドルチ・デル・ソーレ』です。








現在はビジネスを世界中に広げているようです。




若い頃のお母さんの水着姿から、店の全スタッフとの集合写真まで、彼が愛するもののすべてを凝縮したこの本の主役は、アマルフィのレモンなんです。
読んでいると、アマルフィで食べたレモンのデリツィアの、うっとりと甘くて、まぶしい白さが蘇ってくるようです。

この本にも、アマルフィのレモンについての解説があります。
それによると、実も汁も皮もすべて利用するアマルフィのレモンは、地元のドルチェに欠かせない食材であるだけでなく、地元の大切な収入源となり、さらに海に面した絶壁の上にあるその段々畑は、アマルフィ海岸の景観を作り上げて多くの観光客を惹きつけています。
地形的要因から機械化ができず、シチリアのレモンのように大量生産されてはいないので、値段は高いし生産量も少ないのですが、なぜかイタリアのレモンい言えば、カンパーニアのレモンというイメージがあります。

この本には、レモンクリームのプロフィトロール、レモンのデリツィア、レモンのティラミスと、レモン味の美しいパスティッチェリーアのドルチェが次々登場します。
中でも気になったのが、1999年に考案された“カロリーナのババ”というオリジナルのドルチェです。

ババはご存知の通りナポリの名物ドルチェ。
酔っぱらうほどたっぷりとリキュールをしみこませたサヴァランです。
そのリキュールにリモンチェッロを使い、レモンクリームのジェラートを添えた1品。
カロリーナとは、モナコのカロリーヌ公女のこと。
彼女にささげられたドルチェなんですね。

もちろんリモンチェッロのリチェッタもあります。
ハロウィーンのケーキなんてのもありますねえ。
子供たちのために作ったんだろうなあ。

ついでに、食材についての造詣が深いカルロ・クラッコシェフは、レモンのことをどう考えているのかと思って、彼の本でレモンについて書いていないか探してみました。
すると、地方料理の本『A QUALCUNO PIACE CRACCO』に、ありました。
カンパーニア州の料理の最初の一品が、意外なことに、ソレント産レモンのカンディートでした。
彼によると、
「カンパーニアでは、イタリアで一番有名なレモンから一番美味しいレモンまで、様々なレモンが栽培されている。
たとえば、アマルフィのスフザートやソレントのオヴァーレなどだ。
カンパーニアはグランデ・パスティチェリーアの地で、レモンは様々な方法で用いられている。
一般的にはレモンは汁を使うが、最高の部位は皮だ。
なるべく新鮮なものがよく、ほろ苦さと適度な酸味、精油とあらゆる香りを含んでいる。
それは典型的なリストランテの味を作り出す香りでもある。
レモンのカンディートは時間があるときに必要に応じて作っておく基本の一つで、ドルチェ、料理の詰め物や付け合わせ、ブラザートの調味などに使う。
真空で数か月間保存もできる。

ちなみに、彼のレモンのカンディートはレモンを丸ごとシロップ煮にするので、作るのは一日がかりです。
さらに追加で、レモンの皮の黄色い部分を切り取った後の白い部分を使って作るマヨネーズのリチッタまで紹介しています。

レモンのカンディートの次に取り上げたカンパーニア料理はババです。
ババは彼の大好きなドルチェで、他のイタリアのドルチェ同様、夏によく合うと言っています。

ソレントのレモン
 ↓



アマルフィとはほんの少ししか離れていませんが、ずいぶん特徴の違うレモンができるんですね。
果汁はアマルフィのものよりやや酸味が強く、皮に精油がたっぷり含まれるので香りが強いのが特徴。
なので、リモンチェッロに一番多く使われているレモンはこの品種。



-------------------------------------------------------

“アマルフィのレモン”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

トリノのジェラートと猫カフェ

$
0
0
トリノの老舗カフェの話の時、ちっょとだけ触れた店、カフェ・フィオリオ。
ここは、あるものの発祥の店として知られています。

行列ができているのはジェラート売場。

Caffè Fiorio


この店、噂によると、食べ歩きのためのコーン入りジェラートを発明した店、なんだそうです。
でも、どうやら、コーンの発明者は別の人のよう。
店のwebページ(こちら)によると、正確には、女性がコーンに盛られたジェラートを食べ歩くのははしたない、と思われていた1930年代に、そのタブーを破るきっかけになったのが、この店のジェラートだった、という話でした。

この歴史のある店は、昔から上流階級や文化人たちのたまり場で、文化を発信する土壌ができていたんですねー。

この店が作り出した流行がトリノ市民に受け入れられて、晴れてイタリアの女性はコーンのジェラートを自由に食べ歩きできるようになったわけです。

ちなみに、カフェ文化が成熟しているトリノは、2014年にイタリアで最初に猫カフェができた街です。
ほぼ同時にもう一軒オープンして、現在は2軒の猫カフェがあるそうです。




話をコーンに戻します。
コーンにジェラートを盛り付ける動画。
 ↓



おまけの動画。
コーンジェラートのキングだそうです。
 ↓


コーンのジェラートには職人の心に火をつける何かがあるらしい。

-------------------------------------------------------

トリノの有名老舗カフェを紹介した記事、“ビチェリンetc.”は、「総合解説」
13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

カンティネッタ

$
0
0
今日はカンティネッタの話。

カンティネッタとは、小さなカンティーナのこと。
カンティーナとはワインセラーのこと。
つまり、カンティネッタは小さなワインセラーのこと。

ワインラックタイプのほんとに小さなものから、

Cantinetta


ため息がでる冷蔵庫タイプの本格的なものまで、




そもそも、人はなぜカンティネッタが欲しくなるのか。 イタリアソムリエ協会長のジュゼッペ・ヴァッカリーニ氏は、カンティネッタとは、安売りで大量買いしたワインや特別な機会や客のために買い集めたワインを保存して、美味しく飲むためのもの、と回答しています。 なるほど、おっしゃる通り。

ちなみにカンティーナと言えるのはこんな感じ。
 ↓



もしレストランにこんなカンティーナがあったら見学したくもなります。

でも、気温を10~15℃に保って、車などの振動もなく、湿度も低い場所なんて、猛暑と大雨で苦しんでいる日本では無理。
2~3段の棚じゃ、下が白で一番上が熟成赤ワインなんてことも言ってられない。
取りあえず最低限の条件は、ワインを横向きに並べられてコルクが乾かない程度に首が下がる木製の棚。

DIYのワインラック



お手製でカッコいいワインラックを作ったら、目立つところに置いておきたくなるのは、ごもっとも。
でも、カンティネッタは、暗くて静かな場所に置かないとね。
納戸とか。

ところで、立派な棚や冷蔵庫があっても、問題は、そこに並んでいるワイン。
特に、コレンションするにはどんなワインがふさわしいか、イタリアソムリエ協会長さんが作ったリストが、あります。
これは来月の「総合解説」に載せますので、お楽しみに。


-------------------------------------------------------

“カンティネッタ”の記事の日本語訳は「総合解説」12/13年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

アイスカフェ

$
0
0
ようやく天候も落ち着いてきた今日この頃ですが、皆さまお変わりありませんでしょうか。
被災された皆さまには謹んでお見舞い申し上げます。

このところ音沙汰なかったイタリアからも、久しぶりに便りがどきました。
それでは、イタリア便りです。
どうぞ、Segnalibroさん!



今年の夏は、とても暑かったです。
ミラノ市内ではみんながエアコンを使い過ぎるため電力オーバーしてしまい、1日に何度も停電しました。
2003年以来の猛暑だったそうです。
ローマに至っては、なんと136年ぶりの暑さだったのだとか。
イタリアの朝食には欠かせないカフェですが、こんなに暑いと、朝から温かいカフェを飲もうなんて思えません。
日本だったら、関西だったら、レーコーの一言でおいしいアイスコーヒーが飲めるのに。
コーヒーを飲んで、頭をしゃきっとしたいけれど、温かいのはNo Grazie。
そこで、コーヒーゼリーを作ってみたところ、イタリア人には大不評。
見た目も触感も気持ち悪いと言われてしまい、がっかりでした。
イタリアでアイスカフェを飲みたい場合、どうしたらよいのでしょう。
イタリア人のお友達は、暑いうちに砂糖を入れたエスプレッソを作り置きして、それを常温で飲んでいました。

image


バールによっては、Caffè freddoカフェ フレッドと言う名前で、氷が入ったグラスに常温のエスプレッソを注いで出してくれるところもあります。
朝から注文する気分にはなりませんが、カフェ味のかき氷、Granita al Caffèグラニータ アル カフェも冷たいコーヒーと言えるでしょうか。
(以下、写真はお借りしています)

image


エスプレッソに泡立てた生クリームを加えたCaffè con Pannaカフェ コン パンナも涼しげな感じがして、この夏、何度かやってみました。が、カロリーが気になります。

image


それから、Caffè shakerato カフェ シェケラート。

image


シェーカーに熱いエスプレッソ、お好みで砂糖やミルク、またはリキュールを注ぎ、氷と共にシェイクしたもの。
シェイクすることによって味がまろやかになるのか、普段コーヒーをたしなまない人でも飲みやすそうです。
夏のイタリアでは、マクドナルドでもメニューに載っているくらい、メジャーなカフェです。
ただマクドナルドの場合、手でシェイクするのではなく、自動でシェイクする機械にかけられます。
機械でシェイクするお店の方がお安いお値段ですが、手でシェイクしてくれるお店の方がもちろんおいしいです。
スペインのバレンシア地方では、エスプレッソと共に、氷とレモンが入ったグラスがサーブされるカフェがあります。
エスプレッソを自分でグラスに注いで飲むのだそうで、見た目が涼しげな上に、なんだかオサレ~。

image


イタリアでも、もっと他にありそうだと思っていたら、プーリア州出身の人からcaffe alla Salentina サレント風カフェというものがあると聞きました。
長靴のかかとの部分に当たるサレント半島、一番大きな町はLecceレッチェです。
スペイン統治時代に飲まれていた、レモンと氷入りのカフェがサレント風に姿を変えたものだと言われていますが、スペインのようにレモンは入らず、かわりに南イタリアらしく、アーモンドミルクが注がれます。
レッチェの町の中心にある老舗パスティッチェリアAlvinoのサレント風カフェ。 

image


氷を入れたデミタスカップにアーモンドミルクを注ぎ、エスプレッソを加えると、アーモンドミルクの比重が重いので、写真のようにミルクが沈んだままで二層にわかれます。

 
この層を見るのも楽しみの一つなので、透明なグラスを使い、かき混ぜ過ぎず、スプーンで軽く混ぜて飲むのだそうです。
底抜けに暑い、南イタリアのギラギラした太陽のもとでは、甘さがグーっと効いておいしく飲めそう!
カフェのお伴には、カスタードやカカオクリームがぎっしり入ったレッチェの伝統的なお菓子が欠かせないそうです。

image


さて、このサレント風カフェ、家でも作ってみたいと思ったのですが、早速、壁にぶつかりました。
ネットで見たレシピによると、使うアーモンドミルクはペスト状、又はミルクかシロップ。
私の住む北イタリアでは、ミルクかシロップしか見たことがありませんが、どれを選んだらいいのでしょう?
何事も初めが肝心。失敗したら、二度と飲みたいとは思わなくなっちゃうかも。

image


サレント風カフェでレシピを検索すると、凍らせたアーモンドミルクにエスプレッソを注ぐというアレンジメニューがありました。
LAVAZZAのホームページに掲載されているこのカフェ、来年試してみようかな。

image


今年で120周年を迎えたLAVAZZAですが、最近、街中のお店でスペシャル版缶入りカフェが並んでいるのを見かけました。

image


お揃いで、カップもあるんだそうです。

image


と言う訳で、まだ試せていない、サレント風カフェ。 二層になったカフェを本場で飲んでみたいです。


Grazie Segnalibroさん。
冷たいコーヒー飲んで頭がスッキリした気分です。
残念ながら、カフェ・コン・パンナは飲んでも涼しくならないよー。



-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

ポレンタの道具

$
0
0
今月と来月の「総合解説」、イタリア料理の基礎シリーズはポレンタです。

肉のシチューに添えられた黄色いポレンタは、存在感ありますよねー。
料理が2段階ぐらい美味しそうに見えます。

Polenta and cinghiale


北イタリアの代表的おふくろの味、ポレンタ。
種類は家の数だけあると言われています。
でも個人的には、銅鍋でひたすらかき混ぜ続けながらじ~っくり煮る手間のかかる料理というイメージ。

伝統的なポレンタの作り方。
 ↓



もっと伝統的なスタイルでは、取っ手のついたバケツのような銅鍋を暖炉に吊るして、小1時間木べらでかき混ぜながら煮ます。

Polenta

なぜ銅鍋なのか、なぜ長時間かき混ぜ続けるのか。
ポレンタの自動かき混ぜ機もあるくらいなので、取りあえず、かき混ぜ続けるのはポレンタを煮る時の宿命らしい。

まずはポレンタを作る道具の話から始めましょうか。
基本中の基本はパイオロと呼ばれる銅鍋。
ポレンタは煮ている間、すぐに鍋肌にくっついて薄い膜になります。
パイオロには、テフロン加工の鍋のように、ポレンタがくっつきにくいという効果があります。

現代の発明品ポレンタミキサーは、鍋の中央をかき混ぜるのではなく、鍋肌に固まったポレンタをこすり落とします。
ただゆっくり回るだけの動画。癒されるな~。
 ↓



つねにかき混ぜ続けないと、ポレンタが鍋肌にどんどん固まってしまうんですね。そうすると、部分的に硬さの違うポレンタになってしまいます。

次に必要なのはポレンタをかき混ぜる木べら。
特に特徴はなさそうですが、熱いポレンタをかき混ぜ続けるには、ポレンタから適度に離れるような長さが必要。

さらには煮上がったポレンタを鍋からあけて出すまな板のようなカッティングボード。
何にでも張り付くポレンタがくっつかないように、あらかじめぬらしておきます。
さらに、鍋にも張り付くので、あけるまえにパレットで鍋肌から切り離しておきます。

それからなかなか珍しいのが、下のポレンタを切る動画。
カットする時は綿糸を使います。
さらに、ポレンタの下に糸を通して上に向かって持ち上げます。
その逆、つまり上から下だと、ポレンタの表面が乾燥して膜が張っているので失敗します。




ポレンタをカットするのって、気持ちよさそう。
さらに、下の動画も快感。
煮上がったポレンタを広げるだけの動画。
 



カットしたポレンタをグリルしてこんがり焼き色の筋をつけると、また格別に美味しそう。
英語ではこれをポレンタケーキと呼びます。

Polenta Cake


これにチーズやトマトのコンカッセをのせると、前菜やアペリティーヴォになります。




-------------------------------------------------------

“イタリア料理の基礎シリーズ:ポレンタ1”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

山のホームパーティーメニュー

$
0
0
ポレンタの話ですが、以前にもこちらのページやこちらのページで、ポレンタは北イタリアだけのものではないこと、8列とうもろこしの粉で作るポレンタが美味しいらしい、というような話を紹介してきました。
今回の「総合解説」では、全粒粉、粗挽き粉、コーンフラワーなどの粉の種類に合わせて、銅鍋、圧力鍋、普通の鍋でのポレンタの作り方を紹介しています。
来月号では、そば粉入りのポレンタ・タラーニャなど、ポレンタのバリエーションを紹介しています。
ポレンタの入門編としてはかなり詳細な説明。
イタリア文学に登場した最初のそば粉のポレンタの話などという超マニアックな話題まであります。

ポレンタつながりで、今月の「総合解説」の“冬山のディナー”という記事は、素朴な山の料理で構成するパーティーメニューです。
山の食材で作るディナーとは、どんなメニューだと思いますか。
なかなか面白い料理が並びます。

まず、食事の始まりを告げる1品となるのは、木のトレーに並べられたポレンタのクロスティー二。
オーブンでクリルしたポレンタジャッラに、リコッタ、キノコのマリネ、ブレザーオラをのせた一品。
料理の写真はこちらのページ

ブレザーオラはロンバルディアはヴァルテッリーナ名物の牛の干し肉。
これが黄色いポレンタの上にのっているだけで、アルプスにいる気分です。

きのこはカルドンチェッリ。
プーリア料理によく使われるエリンギの一種ですが、ポレンタとブレザーオラに挟まれると、アルプス固有のきのこに見えてくるから不思議。

そして次の料理は、フィラッシェッタ。
聞きなれない名前ですが、ロンバルディアの伝統的フォカッチャ。
写真はこちら
トッピングは赤玉ねぎとバターのソッフリットと、タレッジョやトーマなど、名前の由来にもなっている“とろける(フィーラ)”チーズ、さらに砂糖もかけて焼きます。
これもヴァルテッリーナ料理で、ブレザーオラを添えたりします。

プリーモ・ピアットはそば粉のシュペッツレの玉ねぎのクリームとコテキーノがけ。
シュペッツレはドイツ料理でおなじみですね。
ということは、イタリアでは南ティロル地方、トレンティーノ=アルト・アディジェ州北部の料理ということです。
実は「総合解説」のリチェッタが他のものになっていたので(大変失礼しました)、ここに載せておきます。
材料は問題ありません。

❶ボールに2種類の粉を混ぜて卵を1個割り入れ、塩2つまみを加えて溶く。粉を少しずつ混ぜ込みながら水100mlを加え、均質の生地になったら布巾で覆って30分休ませる。
❷たっぷりの湯を沸かして塩を加える。シュペッツレの型を通して生地を少量ずつ湯に落とす。または鍋の上でポテトマッシャーに通しながら短く切る。1分ゆでて浮かび上がったらすくい取り、すぐに油をまぶす。
❸玉ねぎをみじん切りにして油大さじ2~3とセイボリー、クローブ、塩、こしょうでソッフリットにし、透き通ったら生クリームを加える。シュペッツレを加えてなじませ、小さく切った熱いコテキーノを添える。

コテキーノは、イタリアではレンズ豆を添えて新年に食べる料理として有名ですが、このメニューではコテキーノとレンズ豆をバラバラにして、コテキーノはプリーモ、レンズ豆はサラダにして、セコンド・ピアットに添えました。

セコンドは豚肉のローストのクランベリーのコンポート添え。
肉のローストにベリーを添えるのは北ヨーロッパの手法。

そしてドルチェは、北の山間部で冬の間手に入る唯一のフルーツ、りんごのトルタ。
マロングラッセを加えて素朴さの中にもゴージャス感を。

それでは最後に、イタリアの代表的山岳地の一つ、ヴァッレ・ダオスタのアルタ・クチーナの本のPVを。




山のイタリア料理は、地中海料理としてのイタリア料理とはまったく別の顔で、独自の進化を遂げていますが、アルティジャナーレを尊重するという根本は同じですねー。




-------------------------------------------------------

“冬山のディナー”のに日本語リチェッタは、「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]
2014年1月号の雑誌は一部在庫あります。詳しくはこちらで。

=====================================

レンズ豆

$
0
0
前回ちらっと登場したコテキーノ。
今回は、その相棒、レンズ豆の話。
レンズ豆は12月31日の夜に食べると富と幸福をもたらすと言われています。
イタリア人がどれくらいこのジンクスを信じているかというと、その消費量から計算すると、10人中9人、つまりほぼ全国民が年末年始にレンズ豆を食べているそうですよ。
みんな小金を貯めて幸せになりたいんだなあ。

Untitled

イタリアのレンズ豆は、ウンブリアのカステッルッチョ・ディ・ノルチャ産が有名ですが、これはイタリア産レンズ豆の中で唯一のIGP製品。
他にも色々あります。

ちょっと変わったところでは、シチリアのレオンフォルテのレンズ豆。
レオンフォルテはシチリア中部の町。
生の時は真っ黒ですが、ゆでると茶色くなります。
こんな豆
イタリアでもこんな黒いレンズ豆は珍しいようです。
黒レンズ豆のズッパはお汁粉のよう。




レンズ豆は食物繊維、ミネラル、ビタミン、タンパク質が豊富で、古代には貧者の肉と考えられていました。
レンズ豆は人類が栽培した最古の豆だという説もあり、聖書にも登場します。
そんなレンズ豆ですが、このレオンフォルテのレンズ豆は、10~20年ほど前には消滅の危機にありました。
それが一部の生産農家の努力によって再生したのだそうです。
各地の生産者の努力が実って、国中で愛される豆が生まれているのですね。

「総合解説」では、シチリアのレンズ豆料理としてレンズ豆のポルペッテを紹介しているので、ここでは動画をどうぞ。
ポルペッテは応用がきくリチェッタなので、バリエーションは無数にあります。
ちなみに、ベジタリアンメニューのレンズ豆のバーガーもできます。




ちなみに、黒レンズ豆は、別名ベルーガ・レンズ豆と呼ばれます。
キャビアみたいなのでベルーガなんだそうです。
アメリカではちっょとしたブームのようです。
シチリアの黒レンズ豆に日の目が当たる日も近い。
ベルーガレンズ豆のブレイズ。


-------------------------------------------------------

“レンズ豆”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

カラブリアの黒豚

$
0
0

豚がドングリを食べて育つ、という話を初めて聞いたのは、多分、イベリコ豚が出回りだした頃。
それ以来、一般的な豚がどんなものを食べているかも知らずに、ドングリを食べて育った豚の肉は美味しい、という情報だけが刷り込まれてしまいました。

イベリコ豚
 ↓



要は、ブナの木の下で放牧した豚ということでしょか。
でも、それならスペインだけでなく、どこでもできそうですね。
それをインパクトの強いセールスポイントに仕立てた頭脳の勝利なのか。

「総合解説」の“黒豚の生ハムに合うワイン”の記事を訳していて、ちょっとした短い文章が印象に残りました。

それは、
「カラブリアの黒豚は、半野生状態で、どんぐり、栗、根、球根、野生の果実など自然のものを食べて育つ」
というもの。
ほお~、これはむしろ、どんぐりだけ食べている豚より、健全じゃないですか。

しかも
「小麦粉の餌を与えられた豚と違って、肉には多価不飽和脂肪酸が多く、グルテンは含まない。
36か月熟成のものは世界中の生ハムの中でオレイン酸含有量が最も多い」

だそうですよ。
こんな素晴らしい食材が、イタリアにもあるんじゃないですか。

イタリアの農産物がことごとくスペイン産に負けてしまうのは、スマートな宣伝方法を取らず、ひたすらプライド高く、昔ながらの職人技を強調しているだけだからなのかなあと、常日頃感じていたのですが、実は、この点をオリーブオイルで考察した興味深い記事が次回の「総合解説」にはあります。
その話は来月詳しく取り上げます。

カラブリアの黒豚
 ↓



トスカーナの山間部での豚の放牧
 ↓


さすがに豚の放牧は見たことないなあ。
森の濃度が違うというか、ヨーロッパの森は、豚が群れで通れるくらい、足元が広々してますね。

これだけの数の豚を放牧できるということは、どんぐりだけでなく、球根や果実などさまざな餌が豊富にあるということで、他の野生動物にとっても棲みやすい環境があるということ。
野生動物が里に下りてきちゃう環境では、無理だろうなあ。

なかなか貴重な豚のようですが、宣伝下手のカラブリアで、カラブリアの黒豚が、チンタ・セネージやネブローディのように、メジャーになる日は来るのでしょうか。

カラブリアの黒豚のサルーミ
 ↓




-------------------------------------------------------

“黒豚の生ハムに合うワイン”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

ゆでる

$
0
0
今日は、今月の「総合解説」料理の基礎シリーズの記事から、“ボッリート”と“レッソ”について。

イタリア語だとbollitoとlesso。

イタリア料理用語の基礎中の基礎ですから、もちろん皆さま両者の違いは、よくご存じでしょう。
ところが、これを日本語にしようとすると、適切な言葉が見つからない。
どちらも“ゆでる”という意味ですが、そのゆでる目的と出来上がったものは、明確に違います。
つまり、イタリア語には、ゆでるという意味の言葉が少なくとも2つあるのです。
でも、イタリア人でも両者の違いがよく分かっていない人もいるようなので、ちょっとだけ専門的な話になります。

その答えは「総合解説」に書いてありますのでご覧ください。
で終わりでもいいのですが、一応、解説の解説です。

ボッリートという名前の料理はありますが、レッソという名前の料理は、あまり見たことないのでは?
これは大きなヒントです。

様々な部位の牛肉をゆでるピエモンテ風ボッリート
 ↓



一方、レッソは鶏肉や野菜によく使う調理方法です。


答えを簡単に言ってしまえば、ボッリートはゆでる食材の味を活かすゆで方で、レッソはゆで汁を美味しくするためのゆで方。
つまり、味を肉に閉じ込めて肉を食べるのと、味をゆで汁に溶け出させてブロードにする方法。

ここで問題です。
和食を代表する料理、しゃぶしゃぶは、ボッリートでしょうか、レッソでしょうか。

うーん、悩むなあ。

実は、以前にも書いたことがある気がするのですが、カルロ・クラッコシェフは、その著書、『ディーレ・ファーレ・ブラザーレ』の“LESSARE”の章で、レッソの調理方法について実に7ページに渡って詳細に分析しつつ、レッソの一つ、日本のしゃぶしゃぶについても深い洞察力で語っています。
彼の初しゃぶしゃぶは日本を訪れたマルケージ氏が驚いた調理方法として作ってくれたものを食べたのだそうです。
彼もかなり衝撃を受けたようで、信じられないテクニックだと書いています。
ボッリートとレッソのゆで方がしみこんでいる国の人からすれば、薄く切った牛肉(クラッコシェフはカルパッチョのようと説明しています)を、だし汁でさっとゆでるだけで、肉も美味しくいただけるし、だし汁も美味しくなるというのは、画期的な調理方法だったのでしょう。

ちなみに、彼の本では、ゆでる調理方法をもう一つ挙げています。
それはスビアンキーレsbianchireです。

クラッコ氏は、イタリアの家庭料理で野菜をゆでると言えば、熱湯に野菜を入れて完全に柔らかくなるまでゆでることだと説明します。
そうそう、これこそが、初めてイタリアでゆで野菜を食べたときに感じた別物感。
日本のゆでると、イタリアのゆでるは違う。
そこで料理人に必要なのが、スビアンキーレのテクニックだと、シェフは語ります。

つまり、沸騰した熱湯に野菜を入れてゆでたらすぐに取り出して氷水で冷やす。
この方法だと色と歯ごたえが活かせます。

考えてみれば、日本では、この方法はよく使いますよね。
野菜だけでなく、麺にまで。

こんな調子で、カルロ・クラッコ氏の本はとても興味深い内容がいっぱいです。
ついでですので、次回はlessareの章をもう少し訳してみます。



-------------------------------------------------------

“ボッリート/料理のシリーズ、牛肉編”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年1月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

牛肉をゆでる

$
0
0
前回、あまり深く考えずに提案してみた問題、bollitoとlessoを日本語に訳す、という件ですが、考えれば考えるほど奥が深い問題だったことが分かってきました。
さらに、クラッコシェフのsbianchireの提案は、この疑問をもっと深く掘り下げる結果に。
クラッコ氏によると、スビアンキーレとは、ゆですぎを防いで過熱を止めるために、ゆで上がった食材を氷水にさらす、というテク二ック。
どうやら、イタリア語のゆでる、lessareには、歯ごたえを残すようにゆでる、という概念がないようです。
しかし、日本料理は、歯ごたえをかなり重視する料理で、ゆでると言ったら、歯ごたえを残す程度に、というのは暗黙の了解になっているはず。

ところが、bollitoとlessoの違いを探すと、イタリア料理のlessareにはあって、日本料理のゆでるにはない概念があることが分かってきました。

具体的には、「総合解説」P.30の3つのリチェッタを見てください。

ボッリートは、「この方法だと肉は味を保つがブロードの風味は弱い」という一文が。
さらにレッソは、「この方法だと肉が香味野菜の香りを吸い込む」
ブロードは、「この方法だと美味しいブロードが取れるが、肉はタンパク質を失う」とあります。

この3種類のゆで方には、このような違いがあるのです。

そこで問題になるのが、日本語のゆでるというテクニックの意味。

和食では、食材の臭みや脂を取って柔らかくするためにゆでます。
そこには味の概念はありません。
むしろ、この後で味を入れるための準備のような意味合いがあります。
味を加えるとなると、煮る、というテクニックになります。

でも、ボッリートもレッソも、加熱しながら味を加える、あるいは、味をなくさないゆで方です。
でも、煮るとは微妙に違います。
ちなみにイタリア語で煮るはcuocereです。
ゆでながら食材に味を加える、というのは、食材本来の味を活かすことを大命題とする和食の概念とは、ちょっと違います。
でも、肉を食べてきた食文化で、肉を柔らかくしながらさらに美味しくする、そのために考え出されたのがボッリートとレッソというテクニックではないでしょうか。

どうやて肉をもっと美味しくするのか、その点に注目しながら、前述の3つのリチェッタを読んでみると、なかなか面白い発見があるはずです。

最後に、クラッコシェフがその料理テクニックを簡潔、かつ詳細にまとめた本、『Dire, fare, brasare』では、lessareの章で、bollitoとlessoの違いを説明しています。
大雑把にまとめると、

lessareにはlessare "A FREDDO"とlessare "A CALDO"の2種類があります。
そして前者がlesssoで後者がbollito。
前者の“フレッドでゆでる"の概念を説明するなら、ブロードが完璧な例になります。
野菜のブロードなら、5リットルの水に玉ねぎ、にんじん、セロリ、ローリエ、イタリアンパセリ、セロリの葉、粒こしょうなど全部の材料を入れて沸騰させます。
そして2時間ゆでます。

“カルドでゆでる”の例としては、鶏のボッリートを挙げています。
この場合は、まず鍋にブロードとほぼ同じ香味野菜を入れて沸騰させます。
ここに鶏を入れて静かに沸騰させながら45分ゆでて取り出します。
そしてソースを添えて、または冷ましてサラダとしてサーブします。
ゆで汁は美味しくはないけれど、捨てずにリゾットやブラザートなどに使います。

フレッドの例としてブロードを挙げていますが、「総合解説」では、これをさらにレッソとブロードに分けています。
つまり、食材を美味しく食べるためのゆで方がボッリート、食材とゆで汁の両方を美味しくするのがレッソ、ゆで汁を美味しくするのがブロードのゆで方です。
中でも特徴的なのが、レッソのテクニック。
日本料理は素材の持ち味を活かす、というのなら、西洋料理はどうやって素材に味を加えるのだろう、という素朴な疑問を抱いていたのですが、つまりこいうことなのか、となんとなく納得しました。

そうそう大切なポイントがもうひとつ。
「総合解説」のレッソは、1㎏の牛の肩バラ肉を使っています。
ボッリートは1㎏の牛のブリスケ。
つまり、要は牛の塊肉を美味しく食べるためのテクニックですよね。

でも、牛肉の塊を調理する習慣のない日本では、代わりに薄~い切り身にしてしゃぶしゃぶする方法が考えだされたのでした。
イタリアでは、薄~い切り身なんて火を通すまでもなく、生で食べますわ。
肉食系なめんなよ、ですわ。

チプリアーニのカルパッチョ
 ↓
Carpaccio Cipriani





-------------------------------------------------------

“ボッリート/料理のシリーズ、牛肉編”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年1月号に載っています。

[creapasso.comへ戻る]

=====================================

パナーダス

$
0
0

今日から2月号の「総合解説」の解説です。
まず最初は、地方料理の記事から。
サルデーニャのパナーダスです。
HPの「総合解説」のページに写真と記事のサンプルをUPしてあります。

写真を見る限り、特に何の変哲もない、地味な田舎風のタルトですが、記事を読むと、このタルトにサルデーニャの食文化が詰まっていることが分かります。

まず、サルデーニャ料理を語るときに欠かせないのが、サルデーニャの食文化の柱の一つが、小麦だということ。
その小麦から、サルデーニャ独特のパスタ、パン、ドルチェが生まれてきました。
パナーダスはドルチェではありません。
小麦粉とラードをこねた生地で、発酵もさせませんが、イタリアでは、これをパンの一種とみなすようです。

また、サルデーニャは島とはいえ、漁業より放牧と農業を中心として発展してきました。
海辺は、海賊の侵略やマラリアの危険があったために、内陸で生活をしていたのです。
そのため、サルデーニャの伝統料理は魚より肉料理がベースにあります。
パナーダスも肉を使った料理ですが、なんとそもそもは、放牧中も肉を持ち運べるようにと、保存食として考え出された料理でした。
そういえば、寿司もそもそもは魚の保存食だったなあ。
もちろん、現在ではサルデーニャのビーチが観光客に大人気で、魚料理が島の名物になりつつります。
観光客に人気なのは、アルゲーロの伊勢エビ、カリアリのフレーグラ、ヌーオロの子羊、ガッルーラのヴェルメンティーノといった具合。

集落は内陸にできましたが、島だけあって、昔から様々な侵略を受けてきました。
イタリアの各州の料理をコンパクトにまとめた本、“ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『サルデーニャ』によると、フェニキア人に始まって、カルタゴ、ローマ、ヴァンダル、東ローマ、ピサ、ジェノヴァ、アラゴン、カタルーニャ、ピエモンテと、イタリア内外から、侵略され放題です。
そして、パナーダスは、その名前からもわかる通り、スペインの影響でできた食べ物です。
島のどの時期がスペイン支配の時代かというと、だいたい中世からイタリア統一まで。
長い!
パナーダスとはスペイン語で包むという意味のエンパナダスが語源なのですが、エンパナダスで検索するとそっくりの南米の料理ばかり見つかる結果に。
むしろこれは、パナーダスは南米の料理によく似ていると言うべきなのか。

包むという名前のパナーダスは、美しい閉じ方も料理のポイントです。
その閉じ方は“縫う”と呼ばれています。

そのようなことを踏まえて、パナーダス作りの動画をどうぞ。



民族衣装が似合う食べ物ですねー。




確かに、縫物してるようです。


各国のエンパナーダスの動画を見ましたが、やっぱり別物。
サルデーニャのパナーダスは、形がとても美しいです。

-------------------------------------------------------

“パナーダス”の記事とリチェッタの翻訳は「総合解説」13/14年2月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

カラブリア風ラザーニャ

$
0
0
今月の地方料理、2品目は、カラブリアの、サーニェ・キーネです。

カラブリア風ラザーニャとして紹介している動画。
特徴は小粒のミートボール入り。
 ↓



カラブリアでは主に復活祭の時やお祝いの時に食べるラザーニャだそうですが、どうりでゆで卵やアーティチョーク、グリーンピースといった、パスクアの食材がたっぷり入っています。
挽肉をミートボールにしてボリュームのある具にする家庭料理らしい工夫がみられる一方で、トマトソースと野菜のソースを長時間煮込む、パスタを打つ、豆粒大のポルペッティーネを大量に作るなど、主婦の労働量はかなりなもの。
時間もかかるので、この記事のように、朝6時に、ソースの匂いで目が覚めるという、素敵な体験も、あり得ますねー。
小さな子供が、思わずベッドから台所まで直行しちゃう匂いです。

でも、じゃあお婆ちゃんはいったい何時に起きて料理を始めたの?
だってこのソースは4時間も煮込むんだよ、と健気な女の子は思うわけですよ。
そんな思いからか、心優しい少女はお婆ちゃんを手伝って、ポルペッティーネを一緒に作ることにします。
ところが、お婆ちゃんみたいに上手にできない。
どうして?
と悩んで、結局、これは秘密があるのではなく、何度も繰り返さなくては上手くならないんだ、ということにまで気が付きます。
母から娘へ、こうして楽しい思い出と共に家庭料理が受け継がれていくんですね~。

記事の中にある、南部のおばあちゃんの典型的なエプロンというのが気になって画像を調べてみましたが、残念ながら見つからず。
その代わり、カラブリアのカラフルな民族衣装の写真がたくさんヒットしました。
どうやらこれは、15~17世紀にアルバニアからの移民が造った村のお祭りの写真でした。
ポッリーノにあるこの村では、いまだにアルバニア語が話されているそうです。
カラブリアは、まだまだ謎が多いなあ。

サン・パオロ・アルバネーゼのアルバニア風民族衣装。
南部のおばあちゃんのエプロンてこんなイメージ?
 ↓




-------------------------------------------------------

“サーニェ・キーネ”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年2月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

『ラ・クチーナ・ディ・ローマ・エ・デル・ラツィオ』

$
0
0

今日は今月のお勧め本、“イルストラーティ”シリーズ、『ラ・クチーナ・ディ・ローマ・エ・デル・ラツィオ』の紹介です。


本の表紙はローマ野菜の温製サラダですが、裏表紙はがらっと趣を変えて、子羊を見守るように集まっている羊の群れ。
羊の白い毛のフワフワ感と松並木の迫力が伝わって来る中世の絵のような写真です。
このローマやラツィオの地元感が、この料理書の特徴です。



















本は、「パン屋通り」という番地表示の写真から始まって、最初の料理はいちじくと生ハムのピッツァ・ビアンカ、そしてブルスケッタとそのバリエーション、スップリ、ズッキーニの花のフリット、ポルケッタ、ロッショーリのピッツァ・ロッサと続きます(他にも料理はあります)。
Merendeと名付けられたこの章は、ローマが世界に誇るスナックやストリートフードの章です。
早くもがっちり引き込まれますねえ。

続いてMinestraの章。
パスタ・エ・チェーチから始まって、アックアコッタ、エイひれのミネストラなど、家庭的なスープがずらっと続きます。
そしてpaste asciutte。
パスタは、やっぱりカーチョ・エ・ペペから。
カーチョ・エ・ペペの解説文は
「カーチョ・エ・ペペには1001通りのバージョンがあり、美味しく作る秘訣は1002個あると言われています」で始まります。
研究のしがいがあるパスタのようですね。
次はカルボナーラ。
普通、パスタの写真は、テーブルの上に置かれた皿に盛られたパスタがアップになっているものですが、この本は、なぜか、カメラマンの知り合いたちがそのパスタを食べている姿なんです。
カルボナーラは白いタンクトップを着たロングヘアの美女が、スパゲティをセクシーにフォークに巻きつけている姿。
その微笑に気を取られながらページをめくると、次は黒ぶち眼鏡をかけた中年男性が皿にかぶさるような前がみになってカメラ目線で大口を開けてトマトソースの赤いパスタを口の中に押し込んでいる写真がどーんと目に飛び込んできます。
アマトリチャーナです。
トマトソースが白いシャツに跳ねたらすぐに拭くぞ、とでもいうように、手にはナプキンを握りしめています。
はは、面白ーい、と思いながら次のページをめくると、今度は茶色のシャツを着た若者が茶色いナプキンを握りしめてグリーチャを食べています。
はっと気がついて最初の美女の写真まで戻ると、やっぱり。
白いナプキンを握りしめていました。
これは演出なのか、それとも、これがローマ人がパスタを食べる時の習慣なのか。
うーん気になる。
その後も、顔を真っ赤にしてオールドファッショングラスでワインを飲みながらブッタネスカを食べるのは胸毛もじゃもじゃのランニングシャツを着たおじさま、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノは4コマ漫画風、アッラッビアータを奪い合いながら食べるのは思春期前の著者の二人の子供たち。
かと思えばパヤータのリガトーニや手打ちのフェットゥッチーネなどはプロの美しい手元をじっくり撮影。

もう大分引き込まれてますが、次の肉の章ですっかり夢中。
トリッパやアッバッキオなどの新鮮な食材は、美しいですねー。
でも、やっぱり大トリは野菜の章。
表紙の写真でもわかるように、料理がアートのよう。
というか、アーティチョーク、プンタレッレといったローマの野菜が絵になるのか。
ドルチェの章では、憧れのマリトッツィを発見して、ローマで食べたい、という思いを強くするのでした。


-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================
Viewing all 2537 articles
Browse latest View live