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Channel: イタリア料理ほんやく三昧
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フリウリ料理

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それでは、今回はフリウリ料理の話。

第二次大戦後にイタリアになったトリエストを中心とするヴェネチア・ジューリアと、古代からの長~い歴史があるフリウリ地方を一つにまとめてしまうのはちょっと無理があるので、フリウリという時は、主にカルニア地方の話です。

イメージでは、農業のフリウリに、商業のトリエステ。

まずは生ハムで有名なサン・ダニエーレの料理を紹介する動画でも。



やっぱり一番有名なのはフリーコだと言ってますねえ。
この動画でも、『ヴィエ・デル・グスト』の記事でも紹介しているのは、ムゼットmusetとブロヴァーデprovade。

ムゼットはフリウリ版のコテキーノです。
ブロヴァーデは、かぶを赤ワインのぶどうの搾り滓でじっくり漬けた一品です。
肉の付け合せにします。



ムゼットとブロヴァーデ。
 ↓
Brovada e musèt



サン・ダニエーレは、海と山の中間にあるという地理のおかげで、アルプスからの冷たい空気と、アドリア海からの穏やかな空気が出会う場所という、生ハムの熟成には最適の環境なんだそうです。

フリウリには、サン・ダニエーレの他にもう一つ有名な生ハムがあります。
サウリスの生ハムです。
サン・ダニエーレの生ハムは、足がついているのが特徴ですが、サウリスの生ハムの特徴は、軽くスモークしてあること。
肉をスモークするというのはドイツやオーストリアの影響ですね。

サウリスの言い伝えによると、この町を作ったのは、13~14世紀頃、戦争に明け暮れる日々に疲れてドイツから逃げてきた二人の兵隊なんだそうです。
実際、オーストリアから多くの人が移民してきたようです。
ケルト人の次はドイツ人。
よほど魅力的な場所なんですね。


サウリスはこんな町

サウリスの生ハムの大手メーカー、ヴォルフ。
経営者一族も、ご先祖はドイツからの移民だそうです。

Prosciutto di Sauris



以前、このブログでサウリスの生ハムのことを取り上げたことがありました。
こちらです。
もうすっかり忘れてましたー。


最後はチャルソンズcjarsons。
キャルソンズと発音する人もいます。
ジャガイモの生地のラビオリ。





地中海料理とはまったく別物だけど、どっぷり農民料理ですね。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年7月号、“フリウリ=ヴェネチア・ジューリアの料理”の解説は、「総合解説」2011年7月号に載っています。

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トリエステのグーラッシュ

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今日は、ヴェネチア・ジューリアの話。

この地方の中心地はトリエステ。

トリエステ料理には、ウイーン、ブタペスト、プラハ料理の影響が見られるんだって。
なんだかエキゾチック~。
とは言え、外国の影響を受けていないイタリアの町のほうが珍しいかも。

トリエステのタイムラプス動画。
ドラマチックな街でんなあ。


トリエステはカフェも有名でした。



他に、ゴリツィアや、世界遺産のチヴィダーレなどの町があります。

トリエステ料理で一番有名なのは、グーラッシュgulashかなあ。
ラ・グランデ・クチーナ・イタリアーナ”シリーズの『フリウリ=ヴェネチア・ジューリア』によると、他に有名なのはcevapcici やliptauer だって。

? ? ? 想像もつかない・・・。

cevapcici(チェバプチチ)はバルカン半島がルーツのミートボール。
liptauerはリコッタがベースのハンガリー料理。


グランデ・エンチクロペディア・イッルストラータ・デッラ・ガストロノミア』 によると、グーラッシュのルーツはハンガリーの羊飼い料理。
ブダペストのグルメフードフェスティバルのグーラッシュ
 ↓
Gulyás/Goulash


トリエステ風グーラッシュ
 ↓

玉ねぎのソッフリットに牛肉を加えて焼き、パプリカ、トマトピューレ、香草を加えて煮込みます。
野菜は玉ねぎだけと、こちらのハンガリーのおばあちゃんのグーラッシュと比べるとかなりシンプルで、超簡単そう。
なるほど、トリエステ風は料理にじゃがいもを入れないで、付け合わせにするんですね。
あるいはゆでたライスやポレンタを添えます。


そもそも、トリエストの港は、オーストリア・ハンガリー帝国の重要な商港でした。
アドリア海沿いの町ですが、その料理は、中央ヨーロッパの影響が強いために、肉料理がたくさんあります。
フリウリ=ヴェネチア・ジューリアは伝統的に豚肉をよく食べる地方ですが、トリエステ風グーラッシュは牛肉料理。
もう少し地元ルーツの料理を探すと、イワシや豆、ポレンタなど、とたんに質素な農民料理風になります。

次回は、外国がルーツじゃないトリエステ料理でも探してみますか。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年7月号、“フリウリ=ヴェネチア・ジューリアの料理”の解説は、「総合解説」2011年7月号に載っています。

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トリエステ料理のリチェッタ

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今日は、トリエステ風グーラッシュのリチェッタをどうぞ。

いやーこの料理は、ズボラな人には画期的な一品ですよ。
少なくとも、オリジナルのハンガリー風グーラッシュと比べると、すごく簡単そう。




レシピは、“ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『フリウリ=ヴェネチア・ジューリア』から。



トリエステ風グーラッシュGulasch triestino
材料:
 牛肉・・800g
 玉ねぎ・・600g
 ローリエ
 ローズマリー
 マジョラム
 パプリカパウダー
 トマトのパッサータ・・250g
 ブロード
 ラード
 塩
・肉を角切りにする。
・玉ねぎは薄切りにし、ラード大さじ1でとろ火でしんなり炒める。
・玉ねぎがほぼ煮崩れたら肉を入れてゆっくり焼く。
・ローリエ、ローズマリー、マジョラムを縛って肉に加え、パプリカ大さじ1、トマトのパッサータ、塩を加える。
・蓋をして弱火で2時間煮る。必要ならブロード少々をかける。
・じゃがいものニョッキを添えてピアット・ウニコにする。
 

ハンガリーのグーラッシュには、にんじん、セロリなどの野菜やスパイスが入りますが、ローズマリーやマジョラムなど香草は入りません。
トマトのパッサータではなく、トマトソースやトマトペーストを加えるリチェッタもあります。
トリエステ風もハンガリー風も、玉ねぎを炒めるのはラードなんですね。

こちらはウイーンのグーラッシュ。
クヌーデル、ソーセージ、目玉焼き入り。

Gulash with Knödel, wurst and a fried egg :)


そしてこちらはチェコのプラハのグーラッシュ。


Gulash in Prague

ちなみに本場ハンガリーでは、グーラッシュはシチューというよりスープなんだって。
そしてこれがハンガリーのブタペストのグーラッシュ。

Cucina ungherese


そしてこちらがポレンタを添えたトリエステ風グーラッシュ。
シチューに添えるポレンタって美味しそうですね~。

ハンガリー風じゃない、トリエステ料理を探してみまたが、イワシのイン・サオールや、帆立貝のトリエステ風、蟹のトリエテス風など、今度はどれもヴェネチア料理とそっくりなものばかり。
ラザーニャがあったので、これはいくらなんでもオリジナルだろう思ったら、なんと、ハンガリーがルーツの料理だって。

ヨタという豆とキャベツのスープがあるのですが(こんな料理)、これはキャベツがザワークラウトなんで、怪しいでよねえ。
他の材料も、じゃがいもに豚肉と、ドイツ風の香りがぷんぷんしてます。



ちなみに、帆立貝のトリエステ風(こんな料理)はこんなリチェッタです。
今ではイタリア中に広まってる人気の前菜だそうです。

帆立貝のトリエステ風Capesante triestina)
材料:
 帆立貝・・4個
 玉ねぎ・・1/2個
 イタリアンパセリ・・1本
 バター
 パン粉
 塩、こしょう
・帆立貝を洗い、塩を加えた熱湯でさっとゆでて開ける。
・砂袋と平らな殻を取り除き、貝柱を刻む。コライユはそのまま残す。
・玉ねぎとイタリアンパセリをみじん切りにして室温のバターに加え、よく練る。
・このクリームに帆立貝を加えて殻に詰める。
・オーブン皿に並べてパン粉を散らし、200度のオーブンで5分グラティナーレする。


復活祭のお菓子、ピンザは、たぶん、トリエステがオリジナルの一品。
詳しく調べれば中央ヨーロッパがルーツという説が出てくるかもしれませんが。

ピンザpinza
 ↓




シンプルな発酵生地だけど、卵黄がたっぷり入った黄色いお菓子。
ベンツのエンブレムと同じ形に入れるクープから除いた黄色がとっても美味しそう。


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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年7月号、“フリウリ=ヴェネチア・ジューリアの料理”の解説は、「総合解説」2011年7月号に載っています。

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豚の貯金箱

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今日は豚の貯金箱の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。

豚の貯金箱、昔、持ってたでしょう。


Piggy Banks


子供のころ、誰もが1個は持っていた豚の貯金箱は、イタリアにも、もちろんあります。
イタリアでも、子供にとっての初めての貯金箱は、豚なんだって。

何で豚なのか。

記事には、この疑問の答えが記されています。

それは、「すぐ太るから」

なーるほど。
世間には、なぜ豚の貯金箱なのか、その理由に様々な説が挙げられていますが、すぐ太るから、という当たり前でストレートな発想を持った人は、そう多くはないんじゃないでょうか。
豚が身近にいないと、こういう考えにはなりませんよねえ。

しかも記事には、豚はすぐ太る説の根拠として、アリストテレスの名前まで引っ張り出しています。

哲学者なら、アリストテレスと豚の意味なぞを深く考えるんでしょうが、イタリア料理人は、ちょっと違います。
古代ギリシャの偉人が、豚をネタに哲学が語れるぐらい当時の豚は身近で偉大な存在だったと考えるんですねえ。

古代ローマ時代から第二次大戦直後までの長い間、肉体労働と戦いが続いたイタリア人にとっては、豚の脂身は貴重なカロリー源で、赤身は貴重な動物性タンパク源でした。
豚は雑食性で、家庭の生ごみや、森の草を食べていたので、餌もいらない。
しかもすぐ太る。

イタリア人は豚のすべてを利用するために、保存加工技術を高め、生ハムをはじめとして、イタリアの名物食材として世界中に知られるような製品を作り出しました。

脂身も大切なものだったので、ラルド、パンチェッタ、グアンチャーレなど、各地の気候条件に最適な様々なものに加工しました。
スペックやサウリの生ハムのようなスモークする保存方法は、太陽の光が不十分な北の地方で、太陽に代わる乾燥方法として用いられたんですねえ。

ところが・・・

第二次大戦後は、イタリアの食生活も大きく変わりました。
ラルドは、20世紀初めの農民に取っては貴重な食料でした。
でも、残念ながら、21世紀のイタリア人にとっては、厳密に同じ価値があるとは言えませーん。

様々な食材から過剰なまでにカロリーや動物性タンパク質が摂取できる現在、イタリア料理も変わりつつあります。

記事にも強調されているように、今どきのイタリアの若い子は、豚の脂身なんて食べたがらない。
今どき世代はハムの脂身を切り落としますが、熟年世代は、サラミに脂肪分が多いのは、昔の生活の名残だと冷静に認めても、味の点からすると、脂身を切り落とすなんて犯罪だ、と思ってしまう。
味を犠牲にしてまで脂身は捨てられない。

そこで彼らが取った手は、豚の脂身は健康に悪いという偏見を取り除くために、徹底的に栄養価を調べる、という方法。

豚の脂身は怖くない!
でも、栄養価の話は、かなり理系。
そうなんですよ。
豚の脂身より、理系の話のほうが頭痛い。
でも、私も豚の脂身を安心して食べたいので、次回はその話ですよー。


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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“イタリア産サルーミ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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豚肉の栄養価

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今日のお題は、豚の脂身が怖くてイタリア料理が食えるか~!です。

イタリアでも、今時の若者は豚の脂身を食べたがらないんだそうですが、確かに、初めてラルドのスライスを食べた時は、怖かったなあ。

lardo

だって、皮下脂肪ですよー。
これを削るためにどんだけ苦労してると思ってるんですか?

でも、不思議なもんで、いいかげん歳を取ると、ぜーんぜん怖くなくなる!
美味しいなら食べれる。
老化現象って、こういう形でも現れるんですね。

でも、老化も進行しすぎると、今度はある時突然、血管がー!!
ってなる。
ていうか、なりました、はい。
動脈硬化は怖いです。
でも、そうなって思ったのは、今まで脂身もバターも生クリームも塩も我慢して、筋肉鍛えてきたのはなんだったのー。
全然無駄だったじゃん。
その後、猛烈に食生活を反省して、気がついたのは、肉が不足していた!

何を食べるべきかは人それぞれなので、豚の脂身を勧めるつもりはさらさらありません。
でも、何かを敢えて食べない、というのは、体のバランスを崩す原因になりかねない。

『ヴィエ・デル・グスト』誌の、
「ハムの脂身を切り落とすのは、味の点からすれば犯罪だ!」
という一文は、パンチェッタの脂身に抵抗を感じる人には、神の啓示のように、迷いを捨てさせるありがたーいお言葉です。

pancetta


私は栄養学の分野はド素人なので、専門的なことは全く分りません。
でも、豚肉の主な栄養が、タンパク質と脂質、ということは、なんとなく分ります。
タンパク質は体を作るもの、脂質はエネルギー源というのも、知ってます。

『ウィエ・デル・グスト』誌によると、

「豚のタンパク質は必須アミノ酸で、生ハムのような一部のサルーミでは熟成の段階でタンパク質分解酵素の働きが活発になり、部分的に加水分解している。
そのためにとても消化が良い」

だそうです。
こうなると、残念ながらよく分らなーい。

まず、必須アミノ酸ですね。
そもそも、タンパク質はアミノ酸で構成されています。
必須アミノ酸は体内で合成できず、食物として摂取しなければ取り入れられないアミノ酸で、9種類あります。
必須アミノ酸は、筋肉の増強、疲労回復、肝機能改善、精神安定、免疫力アップ、肌荒れ改善など、計り知れない効果を与えてくれる、ほんとに必須な栄養。
どれか一つ欠けても、栄養障害を起こし、筋肉、骨、血液などの合成ができなくなります。

食物にこの必須アミノ酸がどれだけ含まれているかを示す単位は、アミノ酸スコアといいます。
9種類すべてが含まれていると、100点です。
そして豚肉は、100点です。
豚だけでなく、鶏や牛、卵、牛乳、ヨーグルトなども100点です。

これは素晴らしい。
さらに生ハムは、熟成させることによって、生の豚肉とは違う性質も加わるようですね。

生ハムの熟成によって活発になるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)、というのは、生ハムを理解するポイントになりそうです。
この酵素は、アミノ酸が鎖状に結合したタンパク質を加水分解するんだそうです。
この働きによって、生ハム独特の柔らかさや色、味が生まれます。
生の豚肉の料理より生ハムのほうが消化がいいってこと。

だんだん頭が満杯状態になってきました。
とにかく、今日は生ハム食べようかな。




次は豚の脂身の美点の話です。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“イタリア産サルーミ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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脂肪酸の話

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今日は、豚肉の脂身について。
日本食肉協議会の『食肉の知識』という本、
eonet.jpの「栄養素辞典
amaniyu.umasou.comの「亜麻仁油を取って健康になろう
grico.co.jpの「栄養成分百科
を大いに参考にしました。

まず、脂肪の9割は脂肪酸です。
肉を食べると脂肪は酵素によって脂肪酸に分解され、血中を巡り、各組織に取り込まれて酸化され、高いエネルギーを発します
結果的には、体の基礎となる細胞膜を作って活動源のエネルギーとなるわけです。
取リ過ぎると肥満や生活習慣病の元になり、不足すると、疲労、肌荒れ、体のさまざまな機能のトラブルを起こします。

脂肪酸の中には体内で合成できないので食物として摂取することで必要を満たす必須脂肪酸があります。
不足すると、疲労感、体力不足、皮膚の病気、頭の働きが悪くなる、炎症や出血が起こりやすくなる、不妊、流産、臓器の病気など、やっかいです。
タンパク質にも、必須アミノ酸がありましたよね。
でも、自分で作れないものをどうやって摂取すればいいのか。
この問題は、この栄養素を自分で合成している生物を食べることによって解決します。
これこそが、私たちが肉を食べるように生まれついている宿命ですね。

荒川弘著『百姓貴族2』というめちゃ面白いコミックエッセイに、北海道開拓民のご先祖は、豚と同じものを食べていたという壮絶な話がありましたが、同じものを食べても、人間が合成できなくて豚には合成できる栄養素があるんですねえ。
豚に感謝です。
なんまいだぶ。

草食系の人、大丈夫ですか?

豚の餌といえば、『ヴィエ・デル・グスト』誌によると、
「イタリアで生ハムなどに加工される豚は、オメガ6系多価不飽和脂肪酸が豊富な餌を食べているので、かつてに比べて生ハム類に含まれるコレステロールは大幅に減少している」んだそうです。

オメガ6系多価不飽和脂肪酸て、なんでしょう。
まずは、不飽和脂肪酸から見ていきましょうか。

脂肪酸は炭素原子の二重結合と呼ばれる繋がり方の数によって、二重結合がない飽和脂肪酸と、結合がある不飽和脂脂肪酸に分かれます。
不飽和脂肪酸は結合が1つの一価不飽和脂肪酸と、2つ以上の多価不飽和脂肪酸に分かれます。

つまり、脂肪酸は飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つに分かれます。
このうち、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は主にエネルギー源。
多価不飽和脂肪酸は生理活性作用で、必須脂肪酸は多価不飽和脂肪酸です。

飽和脂肪酸は肉や乳製品の脂肪に多く、常温で個体、バターなどに多く含まれます。
不飽和脂肪酸は魚の脂や植物油に多く含まれ、常温で液体。

バターはコレステロール値を上昇させて、植物油は血清コレステロール値を下げるというのが、一昔前の通説でしたよね。

飽和脂肪酸は分子構造が安定していて劣化しにくい。
脂肪酸は高温で調理するなどして劣化するとトランス脂肪酸になる。
取りすぎると心臓疾患のリスクを高める。

どうやら、多価不飽和脂肪酸というのが重要なようですが、いったいこれって何?


硬い話が続いたので、ここらでリフレッシュ!
牛愛あふれるリアル農民エッセイ『百姓貴族1話』。
都会っ子の料理人の卵さんは読んどくといーよ。





作者の荒川弘さんは『鋼の錬金術師』という大ヒット作がありますが、北海道の農業高校が舞台の
銀の匙』も面白い。
大事件はないけど、肉を食べたり料理する時にふっと思い出す。






次は脂肪酸の話の続きでーす。


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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“イタリア産サルーミ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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サルーミの脂身

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脂肪の栄養素って、なんて小難しいんでょうねえ。
ともかく今日は、前回の続きで、ちょっと残った多価不飽和脂肪酸。

この脂肪酸には、オメガ3系とか、オメガ6系とかがあるらしい。
オメガ3系は、中性脂肪を減らし、動脈硬化予防の働きがある。
代表的なのは、魚の油のDHA(ドコサヘキサエン酸)、α-リノレン酸などの必須脂肪酸。
この栄養素の必要性は、広まってますねえ。

オメガ6系は、植物油に多く含まれる必須脂肪酸のリノール酸が代表的。
イタリアでは、脳や心臓の組織を作り、動脈硬化を防ぐものとして注目されている栄養素です。

他には、体脂肪として蓄積しにくい中鎖脂肪酸とか色々あるけど、結局、脂も肉も摂りすぎると害があるけど、不足しても害がある。
毎日山のように食べるのでないなら、ちょっとぐらい豚の脂身を食べても怖くない、むしろ食べないよりは食べたほうがいいってことですね。

こちらのwebページによると、豚の脂身100gは640kcal、タンパク質6%、脂肪67%、ビタミンA、ビタミンB、Eグループ、ナイアシン、セレンだそうです。

ここまで知識を獲得した上で、あらため『ヴィエ・デル・グスト』の記事を読んでみると、

生ハムやサラミの脂身は、45%が不飽和脂肪酸で、主にオレイン酸。
オレイン酸はオリーブオイルに豊富に含まれることで知られる脂肪酸。
残りの脂身の15%は主にリノレン酸。
残りは中~長鎖脂肪酸。

と言うわけで、もうラルドは怖くない。

それに、不思議なことに油だけなめても美味しくないけれど、ラルドのように熟成させた塩漬け脂身は、生でもおいしいし、焼くと素晴らしい香りが生まれます。

『ヴィエ・デル・グスト』誌では、
「味と栄養の両方から一番安全で確かなイタリアの豚肉の加工品は、DOP製品だ」
と結論付けています。

代表的なのはパルマの生ハムですが、他にも、ジベッロのクラテッロ、カルペーニャの生ハム、アルナのラルド、カラブリアのパンチェッタなど、様々な製品があります。
これらは、豚の産地、飼育、加工が決められている地域内で決められた方法で行われている製品です。
DOP以外にはIGPというのもありますが、これは、豚の産地は条件に含まれていません。
今の時代、豚の産地まで決められているというのは、かなり大変ですよ、きっと。

それに、人間でも、食べたものが栄養として使われずに余ったら皮下脂肪になると考えると、豚の皮下脂肪も、食べたものが直接脂身の味や組織に影響するはず。
となると、どんな餌を食べているかが重要ですよね。
豚がオメガ6系多価不飽和脂肪酸が豊富な餌を食べているというのは、解る人には解る情報なんでしょうねえ。

つまり、DOPの生ハムやサラミは、職人と農家の技と知恵と伝統を昇華させて、さらにイタリアが国を挙げて保護している製品だから、かなり安心というわけですよ。

アルナのラルド
 ↓


パンチェッタ
 ↓




面白いリチェッタを見つけました。
焼いた豚のヒレ肉をラルドで巻いてフィロ生地で包み、オーブンで焼いた一品。
豚肉のいいとこどりで、しかもパイ包みという、ご馳走仕立て。

豚ヒレ肉のラルド包み
 ↓




ちなみに、“ラルド”は、豚の脂身を熟成させたもののこと。
生の豚の背脂はグラッソと呼びます。


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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“イタリア産サルーミ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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イタリア産キャビア

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今日はチョウザメの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

イタリアのチョウザメの養殖の話は、以前にも取り上げたことがありますが、着々と進歩しているようですね。
もう料理書にも、イタリア産キャビアやチョウザメの料理が登場するようになりましたよー。
元々、国内の川にチョウザメが生息していたイタリアには、キャビアだけでなく、チョウザメも美味しくいただく食文化の土台があります。
チョウザメとキャビアの親子丼パスタも実現しています。

イタリアのキャビア養殖の大手の一つ(世界最大のメーカーなんだとか)、アグロイッティカ・ロンバルダ社が養殖しているチョウザメのキャビアは、“カルヴィシウス”の商品名で流通しています。
 ↓



カルヴィシウスのチョウザメの中には、ポー河に生息していたイタリア土着のチョウザメを復活させるという目的で養殖されている品種もあります。
シベリアチョウザメとアドリアチョウザメの交配種なんだそうです。
このチョウザメのキャビアには、“キャビア・ド・ベニス”という名前がついています。

カルヴィシウスの通販価格は100gで198ユーロぐらい。
今は円安なので、約26,000円です。
キャビア・ド・ベニスは23,000円ぐらい。
庶民が気楽に料理に使える値段じゃないですね。

キャビアとサルサ・トンナータのヴォロヴァン。
 ↓ 
Voulevant


バッカラ・マンテカートとキャビア
 ↓
Il baccala mantecato (con flash)



上の2枚の写真を見比べると、下のキャビアのほうがあきらかに高級そう。
グラスに入れて添えるという演出も上品。
バッカラ・マンテカートも美しい。
どこの高級レストランでしょうねー。

ヴェネチア・メストレのリストランテ・ダッラメーリアだって。

店のwebページはこちら

お店のドルチェ。
 ↓
I dolci dell'Amelia


動画もありました。





お店の雰囲気もすごくいいですねー。
これは行ってみたくなる店ですよ。



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関連誌『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年8月号、“キャビアとボッタルガ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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ローマのユダヤ料理

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今日はローマのユダヤ料理の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

ローマのゲットー
 ↓



ローマのゲットーには独特の雰囲気があるけれども、歴史の古い地区なので、街に溶け込んでいて、人によっては気が付かないで通り過ぎてしまうかも。

でも、歩いている人たちが明らかにユダヤ人と思われる服装やひげなので、ローマにいながら異国情緒も感じます。

ローマのユダヤ人コミュニティーは、ヨーロッパ最古。
紀元前からあります。
ユダヤ料理は、ローマ料理の柱の一つととして、今や欠かせないものになっています。

ユダヤ教は、食べてはいけないものがあれこれあります。
豚、タコ、イカ、貝などの軟体動物、馬。
血を食してはいけない。
生きている動物の肉はだめ。
親のミルクで子を煮てはいけないので、肉とミルクを混ぜるのはだめ。
他に何がありましたっけ。
家畜をさばく方法も決められています。

ローマ法王によって、大型の魚を食べてはいけないという命令まで出されたそうです。
皮肉なことに、この時、売れ残った小魚を使って作ったズッパ・ディ・ペッシェや、アンチョビとエンダイブが、今ではローマの名物料理の一つなんだそうです。


豚肉を保存加工する技術が発達したイタリアで、豚肉を食べてはいけないなんて、もったいないなあ。
とは言え、レストランで肉を食べられないかと言うとそうでもなく、カルネ・セッカなんて名物料理もあったりします。


解説にリチェッタを載せた料理がいくつかありますが、記事に写真がなかったので、動画を探しました。

まずはトルツェッティ。
エンダイブのことをこう呼ぶんですね。

トルツェッティ(エンダイブ)のオーブン焼き
  ↓



ゆでた後にオーブンで焼きます。
これならエンダイブ1個丸ごと食べられそうですね。

次はズッキーニのコンチャ。
 ↓



ローマ種のズッキーニを使います。
一種のオイル漬けですね。
アーテイチョークのローマ風といい、野菜に徹底的に火を通すんですね。

シャバット風リゾットは画像が見つかりませんでした。

このシャバットというのは、安息日のことで、なにもしてはならない日。
なんと、労働も調理も、火を使うのもダメなんだって。
金曜の日没から土曜の日没まで。
大変ですねえ。

おまけ。
解説でも紹介しているユダヤ料理のレストラン、タヴェルナ・デル・ゲットーの動画でもどうぞ。
 ↓


メニューにカルボナーラがありますねえ。
豚肉の代わりに何を使っているんでしょう。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年8月号、“ローマのユダヤ料理”の解説は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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ヴェネチアの魚市場

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今日はヴェネチアの魚市場の話。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。

ヴェネチアの魚市場は、観光名所の一つ。
リアルトの市場の名前で知られていますよねー。

リアルトの市場。
 ↓



この記事に、面白い一説がありました。

「市場の売り場の周りでは、観光客が、名画でも鑑賞するかのように、好奇心一杯で魚を眺めていく」

なるほどねえ。
外国の市場を見物するのは面白いものですが、確かに、観光客の視線は、ルーブルでモナリザを見ている人と同じかも。
あたかもすごい専門家であるかのような視線でジロジロ見ながら屋台に沿ってだらだら歩き、ちょっとしたうんちくを自慢げに語ったら、急に軽い疲れを感じてため息交じりに次の屋台へと足を向ける。

市場の中にいる人は、動物園のパンダと同じ気分なのかもしれない。

それにしても、こんなに色とりどりな魚が景気よく並んでいれば、ヴェネチアって、海の中までエキゾチックでドラマチックだなあ、なんて勘違いは、しても当然。

でも実は、世界中から集まってるんだそうです。
地元の魚だけじゃ少なすぎてやっていけないのが実情。

記事では、市場の近くで市場の魚を出しているオステリーアも紹介していますが、その中の一軒の動画がありまた。
ヴェーチョ・フリトリンです。
 ↓



モエケのフリットを作ってましたね。
市場の小魚のフリットなど、庶民的な料理を出す店です。
ゴンドリエーリや漁師が通っていた店だって。
ここも行ってみたい店だなあ。


ヴェネチアの名物料理の一つに、帆立貝のヴェネチア風がありますが、こちらはリアルトの市場で帆立貝を殻から出す作業をしているところ。
 ↓



そして帆立貝のヴェネチア風。
なぜか前半は車のCMです。
 ↓




柱とコライユ(イタリア語ではコラッロ)だけにした帆立貝を、油、にんにくとイタリアンパセリのみじん切りで焼いて塩、こしょうし、殻に盛り付けてレモン汁をかけるだけ。
あまりにも普通なので、帆立貝のヴェネチア風という名前だとは知らずに作っている人が多数なのでは。

ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『ヴェネト』によると、レモン汁の代わりに白ワインをかけるのは、この料理のバリエーションの一つ。

ヴェネチア風という名前がついている料理はこの他にはレバーぐらいで、実は案外珍しい。

この料理でも食べて、気分だけでもリアルトの市場に行った気に。




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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2011年8月号、“リアルトの魚市場”の記事の解説は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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パドヴァの鶏

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今日は鶏の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。

イタリアのブランド鶏の一つに、ガッリーナ・パドヴァーナがあります。
とにかく、その姿が個性的。

このもこもこの生き物はなんだ。





この世界には、もふもふしたくなる鶏もいるんですねー。

この鶏の代表的な調理方法の一つが、“イン・カネヴェラ”というもの。
パドヴァ県のポルヴェラーラという町の名物料理です。

丸鶏に香味野菜や柑橘果実を詰めて籐を差し込み、豚の膀胱に入れてゆでるという料理です。
ゆでると言っても、直接湯には触れないで加熱するので、蒸し煮ですかね。
袋に閉じ込められた蒸気は湯より高温になります。
しかも、肉から旨みや栄養分が湯に溶け出ない。
袋にたまった汁はソースにします。

動画は見つからなかったのですが、写真はありました。

こちらのページです。

豚の膀胱が手に入らなければ、耐熱の食品用袋で代用できます。
籐(ラタン)は竹で代用。

ちなみに、この町の名前がついた、ポルヴェラーラという品種の鶏もいます。
パドヴァは鶏が名物なんですね。

黒いポルヴェラーラ。
白いのもいます。
 ↓


イタリア土着の歴史の古い品種で、15世紀から知られているそうです。

ポルヴェラーラのイン・カネヴェラを紹介しているこちらのページによると、この料理のルーツはパドヴァより内陸のヴィチェンツァなんだそうです。

豚の膀胱を使うので、サラミ用の豚をさばく秋に作る料理でした。
鶏はクリスマス用に太らせた去勢鶏を使いました。
つまり、すごいご馳走だったんですね。
ペッレグリーノ・アルトゥージの本にも登場する料理です。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“ヴェネト料理”の記事は「総合解説」2011年8月号に載っています。

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この場を借りて業務連絡です。
monza近郊にお住いのS.I様。
メールの返事がなくて心配しております。
至急連絡ください。
by 木村



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ムール貝のティエッラ

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今日はティエッラの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

ティッエッラは、オレッキエッテに次ぐぐらい有名なプーリアはバリの名物料理。

ムール貝のティエッラ
 ↓
Tiella di cozze


『ラ・クチーナ・イタリアーナ』で紹介しているこの料理は、目から鱗ってくらいめちゃ簡単。
オーブン皿に玉ねぎ、じゃがいも、ムール貝、トマトを重ねてペコリーノと油をかけ、生のお米を散らしてじゃがいもで覆い、水をかけてオーブンで焼くだけ。
2行で説明できました。

こんな簡単な料理だっけと思って動画を探したら、みんなもっと大変そう。
つまり、究極に簡単なリチェッタですよ、これ。

で、作ってみようと思ったんだけど、残念、美味しそうなムール貝がない。
都会のスーパーで売ってるムール貝は、美味しいエキスをぜーんぶ絞り出した後の残骸かなにかのように悲惨。

こりゃあ、新鮮なムール貝が手に入る地方にお住いの皆様には、ぜひお試しいただきたい一品ですなあ。
しかも、記事の解説によると、昔はムール貝の数が多いか少ないかで、金持ちか貧乏かが分っちゃったというんだから、貧乏人は悔しーわー。
一番貧乏なバージョンはムール貝なしだとまで言ってくれちゃって、悲し~い。
イタリアのジョークきついわ~。

これもかなり簡単なバージョン。
 ↓



ムール貝にアサリを加えるバージョンや、ムール貝の代わりにアサリとイカを加えたシーフードのティエッラなどのバージョンもあります。
ズッキーニやなすを加えれば野菜のティエッラ。
スローフード出版の“リチェッテ・ディ・オステリーア・ディイタリア”の『クチーナ・レジョナーレ』には、
米の代わりに硬質小麦の粒を加えるリチェッタが載っています。
さすがはイタリアの穀倉地帯。

ちなみに、これはアンドリアのトラットリア・アンティキ・サポーリtrattoria antichi saporiのリチェッタです。

この料理センスやネット上の評価から推測すると、かなりいい店に違いない。
広大な畑を所有しています。
グラノ・アルソのフォカッチャなんてのも出してますよ。
ますます行きたくなったー。

グラノ・アルソはプーリア名物の黒ずんだ小麦で、いわゆる落穂です。
収穫が終わって畑を焼いた後の、鳥すら食べない小麦のことです。
それを拾い集めると言う、ミレーの名画『落穂拾い』で知られるこの行為は、極貧の農民の象徴。
私は、今でも誰かが落穂拾いしてるんだ、う、可哀そうに・・・、と思ってましたが、さすがに21世紀にそんなことはしないようで、なんと、普通の小麦をわざわざトーストして、人工的に作っているんだそうです。
つまり、単なるトースト小麦。
私の涙を返せー!

グラノ・アルソのオレッキエッテ
 ↓




硬質小麦のティエッラは激しく食べてみたいですが、だしが出る魚介とお米の組み合わせって、鉄板ですよねえ。
え、それ知ってる?
パエリア?
た、確かに。

でも、パエリアはフライパン(パエリア)で作るのに対して、ティエッラは丸くて小さな取っ手が4つついたテラコッタのオーブン皿(ティエッラ、最初の動画を見て~)で作ります。
使った道具の名前が料理の名前という理論で言えば、パエリアだってオーブン皿で作ればティエッラでっせー。

それでは、アンティキ・サポーリの硬質小麦のティエッラのリチェッタをどうぞ。

硬質小麦、じゃがいも、ムール貝のティエッラTiella di grano patate e cozze
材料:4人分
 硬質小麦・・100g
 ムール貝・・500g
 じゃがいも・・300g
   トマト・・2個
 ズッキーニ・・1本
 玉ねぎ・・1個
 EVオリーブオイル
パン粉;
   パンのクラム・・50g
   おろしたペコリーノ・カネストラート・・30g
 
 にんにく・・1かけ
 イタリアンパセリ・・1房
 塩、こしょう
・小麦を1時間水に浸す。
・パン、ペコリーノ、にんにくとイタリアンパセリのみじん切り、塩、こしょうを混ぜる。
・じゃがいもは皮をむいて輪切り、トマト、ズッキーニ、玉ねぎも輪切りにする。ムール貝は開けて片側の殻を取り除く。
・深さ10㎝のテラコッタのオーブン皿にパン粉の一部を散らして油をかける。その上にじゃがいも、ズッキーニ、トマトの順で重ねる。・
ムール貝をのせて水気を切った小麦を散らし、再びじゃがいも、トマト、ズッキーニ、玉ねぎを重ねる。
・パン粉を散らして油をかけ、水を材料が全部かぶるまで加える。
・180度のオーブンで水気がほぼなくなるまで(45分)焼く。
 



この店、こちらのニュースによると、東京進出を企てていたみたいですけど、どうなったんでしょう。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年9月号、“ティエッラ”のリチェッタは「総合解説」2011年9月号に載っています。

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夏の山小屋巡り

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今日は山小屋の話。
『サーレ・エ・ぺぺ』の“山小屋の料理”の記事の解説です。

この記事、イタリア語では、Sapori di malga(サポーリ・ディ・マルガ)というタイトルでした。
「マルガの味」です。
マルガとは、夏山の放牧地のこと、あるいは、その期間家畜の世話をする人たちが寝泊まりして乳製品を作る山小屋のことですね。
大自然の中で、新鮮な夏草を食べた牛や羊のミルクから、熟練した職人の手で作られる山のチーズやバターは、日本人ならハイジの世界として幼いころから刷り込まれてますよね。

トレンティーノの小さなマルガのアグリトゥーリズモ。
イタリアにもこんなのどかな暮らしが・・・。
 ↓




イタリアには、マルガロードなるものがあったりして、山小屋の美味しいもの巡りを兼ねた山歩きは、夏山の観光目的の一つ。

山小屋の歩き方を教える動画
 ↓



あの硬さのパンをかじる子供、ただ物じゃない。



山小屋のチーズ、モンテ・ヴェロネーゼ・ディ・マルガ。
 ↓ 



こんなのどかな大自然の中で、美味しいチーズやバターを使って作るマルガの料理は、どんなメニューでしょう。

記事で紹介しているのは、まず、タンポポとブルーベリーのサラダ、そして放牧チーズのフォカッチャ、野菜とリコッタのちぎりパスタ、と続きます。
このちぎりパスタというのは、斬新ですよ。
文字通り、伸ばしたパスタをちぎるんです。

でも、もっと衝撃的なのが、デザートです。
なんと、じゃがいも入りチョコレートケーキ。
いったいどんな味なのか、想像もつかない。
チョコレートケーキなのか?じゃがいもケーキなのか?

で、調べてみたら、どうやらじゃがいものケーキはドイツのケーキらしい。
しかも、イタリア人はじゃがいものケーキが好きなようで、ネット上には様々なリチェッタが・・・。
ということは、チョコレート入りじゃがいもケーキだったか。

と言うわけで、次回は山小屋の料理の話。


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関連誌;『サーレ・エ・ぺぺ』2011年9月号、“山小屋の料理”のリチェッタは「総合解説」2011年9月号に載っています。

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じゃがいものケーキ

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今日はじゃがいものケーキ(トルタ・ディ・パターテ)の話。

ことお洒落に関しては、完璧なセンスで上品に着飾るイタリアの方々。
ところが料理に関しては、上品とか洗練されていることは、なぜかあまり好きじゃないんですよね。
都会的とか、人工的、機械的なことは大嫌い。
例えば、白いパスタにはわざと茶色い粉を入れ、全部同じ形に切らずに、わざと不揃いにします。
日本料理は盛り付けがきれいでしょうと自慢しても、きれいに盛り付けることにさほど価値を感じていなければ、自慢にもならないような気が・・・。

『サーレ・エ・ぺぺ』の記事、“山小屋の料理”に登場する、夏山の放牧地の料理は、そんな素朴さと自然を愛してやまないイタリアの人々の料理の嗜好がよくわかるメニューでした。

タンポポとラズベリーのサラダの材料は、レタス、タンポポ、ライ麦パン、放牧地のチーズ、ブルーベリー、タイム、蜂蜜、ラズベリービネガー、そしてオリーブオイル。

続いて放牧チーズのフォカッチャは、白玉ねぎと山小屋のミックスチーズのトッピングに、小麦粉、卵、牛乳、生クリームをかけて焼きます。

プリーモは、板状に伸ばしてたパスタを手で不揃いの形にちぎったパスタとカリフラワー、ビエトラを一緒にゆでて、ポロねぎのバター煮と山小屋のリコッタであえた一品。

メイン料理はとうもろし粉のダンプリング、かぶ、スペックのミルク煮。
材料は、かぶ、玉ねぎ、スペック、小麦粉、とうもろこし粉、パン粉、牛乳、卵、ナツメグ、バター、etc.。

トウモロコシ粉、小麦、パン粉、牛乳、卵などを混ぜたお団子と、かぶ、スペック、玉ねぎのソッフリットを牛乳と小麦粉で煮てバターで調味という、ハイジのおじいさんが作ってくれそうな優しい料理。
スペックのスモーク香も、とうもろこしの香ばしさも、かぶの甘みも、搾りたての牛乳にとろ~っと溶けて、体が暖ったまりそ~。

どうやら、自然をそのまま受け入れる、ある意味野性的な地中海式食生活は、海辺だけでなく、標高1000m以上の山の上でも、健在のよう。

そんな山の上で、素朴を愛する人たちは、どんなデザートを食べるのか。

なるほど、こうきたかあ。

そう、ここで登場したのが、じゃがいものケーキです。
しかも、チョコレート入り。
人工的な甘さに慣れた都会人の心を、ちょこっとくすぐる魅惑的な響き、チョコレート。

山の上で、チョコレート入りじゃがいものケーキを食べる人は、なんか幸せそうだな~。


おばあちゃんのじゃがいものケーキ。
詳細は一切不明。
お手伝いしましょうか?
 ↓




村をあげてじゃがいものケーキ作り。
立派なかまどですが、このかまどのお祭りのよう。
村の共同のかまどかな。
 ↓



じゃがいものケーキは薪のかまどで焼けば完璧ですね。

じゃがいものケーキは、じゃがいもをマッシュポテトにしてパンケーキの生地に加えるもの、スライスしたじゃがいもを重ねる甘くないパイタイプ、などありますが、記事で紹介しているのは、生のじゃがいもをすりおろして生地に加えてパウンド型で焼くタイプ。
チョコレートだけでなく、ヘーゼルナッツ、山のバター、スパイスも加えます。
あっ、解説書に「砂糖・・80g」が抜けいてました。
大変失礼しました!


調べてみると、イタリア人はじゃがいものケーキが好きなようで、いろんなリチェッタがありますねえ。
ドルチェではないですが、ナポリには、ハムやプローヴォラ入りの“ガットー・ディ・パターテ”があります。
 ↓




毎度お馴染み、スローフード出版の“リチェッテ・ディ・オステリーア・ディイタリア”の『ドルチ』から、クーネオのじゃがいものケーキのリチェッタをどうぞ。

じゃがいものケーキTorta di patate
材料:6人分
 粉質でないじゃがいも・・300g
 片栗粉・・大さじ2
 バニラ風味のベーキングパウダー・・1袋
   卵・・4個
 ブラウンシュガー・・200g
 あんずジャム
 バター・・100g
  シナモンスティック・・1本
   クローブ・・8個
   ポピーシード・・小さじ1
 ノーワックスオレンジの皮・・1個分
・じゃがいもは皮をむき、シナモン、クローブ、オレンジの皮と一緒にゆでる。スパイスを取り除いてポテトマッシャーで潰す。
・じゃがいものピューレに柔らかくしたバター、砂糖、片栗粉、卵黄(1個ずつ)を加える。最後に卵白とバニラ風味のベーキングパウダーを硬く泡立てて加える。
・直径24cmの型にバターを塗って小麦粉をまぶし、生地を流し入れる。180度のオーブンで1時間焼く。
・オーブンがら出して表面にジャムを塗り、ポピーシードで飾る。 


イタリアって山の料理も面白いなあ・・・。


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関連誌;『サーレ・エ・ぺぺ』2011年9月号、“山小屋の料理”のリチェッタは「総合解説」2011年9月号に載っています。

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イタリア映画と料理

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今日は映画の話。
『ラ・クチーナ・タリアーナ』の記事、“イタリア映画と料理”の解説です。

以前ブログで取り上げたアメリカイタリア合作映画、『トスカーナの休日』は、アメリカ人がイタリアに抱く憧れを理想的に映像化したような映画でした。
だから、トスカーナの田舎家でのホームパーティーの場面は、かなり力が入っていました。
美味しそうな料理を食べて楽しそうにワインを飲んでいた、という印象はありますが、ゴージャスでおしゃれという以外、その場面の料理から、何かが伝わってくることはありませんでした。





ところが、この『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事は、イタリアが舞台の映画でイタリア料理が登場するシーンは、イタリア人にとっては、すごーく深い意味があるのだということを教えてくれました。

でも残念ながら、取り上げた6本の映画が、第二次大戦後まもなくの古いもので、日本で公開されていないものばかり。

観たことがあるものは1本もありませんでした。

主にイタリア式コメディーと呼ばれるジャンルの映画なんですが、こんなジャンルがあるってことも、知られてないですよねえ。
まあ私もよく知らないので、詳細はwikiでも見てください。
下ネタ系の他愛もない笑いだって。

こういうのが典型的なイタリア式のコメディーなんだそうです。





アハハ、笑える。

畑で寝てるおじさんに「今何時ですか?」
と聞くと、おじさんはロバのたまたまに触って時間を教えてくれます。
帰り道で再び訪ねると、やはり同じようにして、ぴったり正確な時間を教えてくれます。
「どーしてわかるんだい?!」と聞くと、なんと、たまたまの向こうに教会の時計塔があった、というオチ。


イタリア式コメディーの名場面詰め合わせ
 ↓



記事で取り上げている映画は、『パンと恋と嫉妬』、『I Tartassati』、『A Cavallo della Tigre』、『自転車泥棒』、『La Visita』、『Piccola Posta』。
知ってる映画、ありましたか?
唯一、『自転車泥棒』は、イタリア式コメディーの一つ前の時代、ネオリアリズモの代表的な映画なので、見たことがある人も多いのでは。
邦題がついているものは日本でも公開されて、wikiのページもあります。

記事で紹介している『自転車泥棒』のモツッァレッラ・イン・カロッツァのシーン(後半)
 ↓



全体的に救いのない映画ですが、二人の子供の階級差を、こんなに無慈悲に料理で象徴させていたなんて。
有名なシーンらしいけど、もうこの先、モツッァレッラ・イン・カロッツァを能天気に食べることはできないかも・・・。


なんと、この超鬱~な映画の監督ヴィットリオ・デ・シーカが、『パンと恋と嫉妬』では、スケベな警察署長を演じているんです。
お口直しにどうぞ。
 ↓



残念ながら動画はないですが、舞台はアブルッツォなので、出てくるパタスは当然のようにマッケローニ・アッラ・キタッラ。


映画と食文化を国の重要な産業と考えているイタリアならではのイベント。
イタリア映画に触発された料理をレストランで出す地域振興イベントのPV。
 ↓



GWにイタリア映画を観た人、いるかなー。


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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年9月号、“イタリア映画と料理”の記事とリチェッタは「総合解説」2011年9月号に載っています。

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『パンと恋と嫉妬』

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映画の話の続きです。
『自転車泥棒』のモッツァレッラ・イン・カロッツァの場面は、金持ちの子供がナイフとフォークで食べるのに、貧乏人の子供は、ナイフとフォークがうまく使えず、手で食べる、というシーン。
普段、ナイフとフォークで食べ慣れてない私だって、手で食べるのが屈辱!!ということはわかります。


ナポリ料理の、モッッァレッラ・イン・カロッツァ。
 ↓



手で食べてましたねー。
卵液をつけて油で揚げるので、やはり、ナイフとてフォークが自然。

遥か昔、初めてイタリアの下宿先で食事をした時、「ナイフとフォークの使い方が下手なんですよ、へへへ」なんて話したら、「手で食べていいですよ」と言われてぎょっとしたことがあります。
軽いジョークのつもりだったんですが、手を怪我でもしてるのかと心配させちゃったみたいです。
どうやら、イタリアでナイフとフォークの使い方を話題にすると、社会階級の話になっちゃうということを知りました。


そうそう、GWにイタリア映画を観た人がいました。
しかも、すごく身近に。
creapassoの新スタッフのgattiさん。
なんとイタリア映画通だったんです。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の“イタリア映画と料理”のリチェッタを翻訳して、こんなコメントをくれました(Grazie!!)。


多分イタリア映画で最初に見たのが”パンと恋と嫉妬“だったような気がします。
話の筋は大雑把にしか覚えていませんが、筋と関係なく、外国では、訪問客にまで靴の下に布を敷かせて歩きながら家の中の掃除をさせるのぉ~、へ~。
という強烈な印象でした。
その後、実際イタリアに行って、いろいろなご家庭によばれるとすべてがそうしているわけでもないという事、
あの布と同じような形をしたパンをパン屋さんで売っていた事、
名前もそのものずばりチャバッタとは。。。。
ある意味感動したことを思い出しました。


そうそう、そんなシーンがありました。
床拭きシートみたいな生地でできた大きなチャバッタを靴の上からはいて、床の上をすりすり歩くんですよね。

イタリアやイタリア料理が好きだと、こういうエピソードはたくさんありますよねー。

ここで質問です。

チャバッタとは何のことでしょうか。

パン、と答えたあなた、イタリア料理人ですね。




スリッパと答えたあなた、イタリア暮らしが長いですね。



GW中にgattiさんが観たイタリア映画は、『塀の中のジュリアス・シーザー』。
2012年ベルリン国際映画祭で金熊賞(グランプリ)を獲った映画だそうです。
公式サイトはこちら
まだ公開中のようですよー。


そういえば、ついでですが、以前、ブログで『ガンベロ・ロッソ』のホームベーカリーの記事を訳した時、タイトルが、「パンと愛とテクノロジー」となっていました。
その時は、なんで「愛」なの?と不思議でしたが、この映画のタイトル(原題はpane amore e gelosia)にかけていたんですね。
だからイタリア人は、「パンと愛と・・・」。という表現をよく使うんだー。
謎がスッキリ解けました。


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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年9月号、“イタリア映画と料理”の記事とリチェッタは「総合解説」2011年9月号に載っています。

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『クールにしたいならエシャロットを使う』

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今日は、新入荷の本、カルロ・クラッコ著『クールにしたいならエシャロットを使う』の解説です。

 

著者のカルロ・クラッコは、1965年ヴィチェンツァ生まれ。
今やイタリアを代表するシェフです。
ホテル学校卒業後、グアルティエロ・マルケージやアラン・デュカスの元で才能を開花させ、エノテーカ・ピンキオッリ、マルケージのアルベレータなどでシェフを務め、2001年にミラノでリトランテ・クラッコ・ペックの総料理長となり、ミシュランでは2つ星を獲得。エスプレッソでは18.5/20、ガンベロ・ロッソでは2フォルケッテ、イギリスの『レストラン』誌では、世界のベスト・レストラン50軒に選ばれ、2011年から、ミシュランイタリアの選考メンバーとなっています。

まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いの、イタリアのナンバー1カリスマシェフ。
この本は、出版後1か月で売上が3万部を突破し、現在もベストセラーリストの常連という話題の本。

この本、料理本の割には、タイトルが変わってます。
そのあたりからも、この人の個性が感じられますねえ。

このタイトルは、本の中で、サフランのリゾットの造り方を説明する箇所に出てくる一文です。

「まず、玉ねぎを細かいみじん切りにするところからはじめます(もしクールにしたければ、エシャロットを使ってください)。」

と言う文章なんですが、原文は、普通に辞書には載っていないfare i fighiという言葉を使っています。
こういうなんでもない一言にまで神経を細かく行きわたらせて、スタイリッシュに生きてる人のようですね。

内容は、料理のレッスンという形で、レベル1からレベル3までの難度の料理を合計60点、詳細に解説しています。

序文によると、彼はホテル学校では最初は劣等生で、調理の成績は4だったたそうです。
とろが、持ち前の努力で最後は8にまで上げています。
シェフの仕事に限界を決めない、というのが彼のモットーだったそうです。
その努力の裏で培ったテクニックや考えを、この60のリチェッタで披露しているというわけですね。

彼は、食べ物は単なるエネルギー源以上のもの、と考えています。
それを特別なものにしているのは、土地の歴史、伝統、そして人。
料理を作るとは、それらの貴重な過程の単なる最後の段階に過ぎない。
そのため、料理をするときは常に、使うこの食材はどこから来たのか、誰が作ったのか、それが生まれた土地にはどんな歴史があるのか、を考える。
そうすれば、メッセージはより強く、明確になって、料理を食べた人に感動を与えることができる。

だから、彼の本も、単なる材料と作り方を説明する本ではないのだそうです。


カルロ・クラッコのムール貝のマリナーラ。
 ↓



なんて手が込んるんでしょー。
お見事!
リチェッタは本にあります。

カルロ・クラッコ著『クールにしたいならエシャロットを使う



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カルロ・クラッコのトマトソースのスパゲッティ

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カルロ・クラッコの『クールにしたいならエシャロットを使う』より、
今回は、リチェッタの紹介。

まず、前回説明したとおり、彼にとって料理は、豊かな背景を持つ食材がたどりつく最終段階。
手に取る以前のことを知っていればいるほど、料理に込められるメッセージも強くなる、と信じています。
そこで、本に取り上げている料理は、彼のその料理に対する様々な思いを吐露するところから始まります。

最初の料理は“トマトソースのスパゲッティ”。
いったい、この超基本的な料理に、どんな思い入れを抱けるというのでしょうか。

実はこの料理は、彼にとっては、母親の料理そのものなんだそうです。

「学校から帰った私に、母親が毎日作ってくれたのが、トマトソースのスパゲッティでした。
当時、トマトの旬の時期は短く、6月から、長くても8月まででした。
旬の時期、母親はフレッシュトマトを、ただ小さく切って、生のまま使いました。
時にはトマトペーストを加えることもありました。
それ以外の時期は、夏の間に冬用に瓶詰にしたものを使います。

夏の間は、家族でよくガルダ湖に遊びに行きました。
その時、必ず、キャンプ用の調理道具を持参して、この、フレッシュトマトのスパゲッティを作ったものです。
これは、私にとって、一番美しい思い出です。
今思えば、ちっょとキッチュな思いで出てもあるんですけれどね。
母親はいつも出発前の朝早くソースを作っていたので、私には、どうやって作るのかを観る機会はありませんでした。
湖では、スパゲッティをゆでてソースをただからめるだけで、フライパンでソースとパスタを炒めることはしませんでた。
それからいつもプラスティックの皿に盛り付けて食べたんです。
皿はオレンジ色でした。
多分、トマトソースのスパゲッティの色に合わせたのでしょうねえ。
このリチェッタは、まさにトマトソースのスパゲッティの“湖”バージョンです・・・」

こんな回想から、レッスン1は始まります。

そういえば、私も若かりし頃、イタリアの下宿先で、毎日ランチに出たのがトマトソースのスパゲッティーニでした。
多分、多くのイタリア初心者さんにとって、トマトソースのスパゲッティは入門の一皿。
この料理に出会わずにイタリア料理と出会うことはないくらいですから、みんなそれぞれに印象的な思い出やエピソードを持っているはずです。

今やイタリアを代表するシェフの原点ともいえる料理は、やっぱりお母さんのトマトソースのスパゲッティなんだあ、と思うと、ありきたりのこの料理も、いったいどんな作り方をしているのか、とても興味がわいてきます。
実際、リチェッタには、トマトの品種、切り方、加えるタイミング、加熱時間、バリエーションに至るまで、事細かに説明されていて、ぜひ美味しい一品を作ってほしいという思いが伝わってきます。

レッスン1では、こういった基本的な料理を取り上げています。
よく知っている料理でも、その背景にあるカルロ・クラッコ氏の個人的な思いと組み合わせると、新鮮な一面が見えてきます。

シェフの料理本というと、難しい複雑なリチェッタと豪華な写真と装丁というのが定番ですが、この本は全く違います。
料理初心者にも伝わるようなわかりやすさと、プロの探究心も満足させる深い洞察。
そして手頃な値段。
派手さはないですが、手に取りやすい、とっつきやすい一冊です。
ベストセラーになるのも納得ですね。


別の著作『クラッコ・サポーリ・イン・モヴィメント』のPV
 ↓




次回は、動画界のカリスマの料理本を取り上げます。


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ソニア・ペロナーチのジャッロ・ザッフェラーノ

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カリスマシェフの次は家庭料理界のカリスマ、ソニア・ペロナーチさんの
の本、『ジャッロ・ザッフェラーノ』の紹介です。



ジャッロ・ザッフェラーノは、YouTubeでチャンネル登録者数8万人、総再生回数39万回という、イタリアで一番再生回数の多い大人気料理動画チャンネルです。
英語版とスペイン語版もあります。
そのwebページ(こちら)は、2012年のイタリアベストサイト賞というのも取っています。



カルボナーラ
 ↓



ソニアさんは実に理論的で解りやすく、テキパキと話しますねえ。
料理を作る手さばきも同様です。

upされた料理の数は500点に上ります。

本によると、ソニアさんは娘3人と犬2匹のママで、税金関係の仕事をしていたそうです。
でも、仕事をするよりも、薪のかまどでカントゥッチを焼いている時や、おばあちゃんのストゥルーデルの生地をアレンジして伸ばしているときのほうがずっと幸せに感じるくらい、料理が好きでした。
そこで、40代で意を決して荷物をまとめて、犬もつれて電車に飛び乗り、見事夢をかなえたんだそうです。
2006年に自宅のキッチンで始めたジャッロ・ザッフェラーノは、2009年に動画のupを始め、それがYouTubeの目に留まってあっという間に様々な業態に事業を拡大し、今では15人のスタッフを抱える一大料理スタジオになりました。
まさに時代の寵児。


この本は、2011年9月に出版されて、すでに6版を重ねているベストセラー。
ネットで検索数が多い130のリチェッタが載っています。

本のPV
 ↓






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